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十月二十三日(水) -7-

「貴方は本当に憎らしい性格をしていますね。わたくしなんかより何倍も捻くれた人間ですよ」

「それは褒め言葉ね。ありがと。心からお礼を言わせてもらうわ」

 

 ほっそりとした腕を組んで、悪役顔負けの性悪な笑みを作った。

 

「そうです。あの日、八房さんを襲い、怪我を負わせたのはわたくしです」

「アンタと桝村美佳子でしょ」

「桝村さんは、一緒にいただけです。全てわたくしがやったのです」


 立ち上がって、ハチの方に顔を向けた。

 

「聞いた通りです。貴方には申し訳ないことをしてしまいました」

 

 深々と頭を下げる。

 

「あの、いえ、そんな、私はもう気にしてませんし」

「あんなに痛めつけられたのに、こんなんで許しちゃうの? ほら、服を脱いで土下座しろとか言ってもいいのよ。なんならこの石で、顔が変わるくらい殴ってもいいのよ」

「リアル、それはやり過ぎだよ」

「そういう発想を口にされると、失礼ながら人間性を疑ってしまいます」

「リアルちゃん、そこまで言うと私も引いちゃうよ」

「まあ、なんにせよ。これで一件落着だな」

 

 真樹の一言に安堵の空気が生まれる。

 

「今夜の事件もお前の仕業だな。桝村から自分の関与が明らかになるのを恐れ、口封じをと考えたのだろう」

「ち、違います!」

「米川、大人しく認めろ」

「本当です! わたくしではありません!」

 

 胸元に手をおいて懸命に訴えるが、真樹を初めとする全員の反応は冷たい。

 

「信じてください! わたくしは!」

「見苦しいぞ! 今さらお前の戯言を信じる人間などいない!」

 

 真樹の一喝に純理が力なくしゃがみ込んだ。

 

「わたくしじゃ、ないんです。本当に……」

「やれやれ、往生際の悪い奴だな。困ったもんだ」

「わたくしじゃ、ないんです」

 

 それだけを繰り返す純理の目から、ぽたぽたと涙が落ちる。

 

「詩方、なんか言ってやったらどうだ?」

「しょうがないわね」

 

 そう言って、肩を竦めた。

 

「いいわ、信じてあげる」

 

 真樹が、彩音が、沙耶が、ハチが、純理でさえ、その一言に大きな衝撃を受けた。

 

 全員の驚きを、にぃっと笑顔で受け止めると、

「アタシは信じてあげる。今夜の事件はアンタがやったんじゃないってね」

 改めて言い切った。

 

  

                    ※ ※ ※

 

 

「どういうことだ! こいつが犯人じゃないのか! 根拠は!」

「はいはい、騒がないの。ちゃんと説明してあげるから」

 

 噛み付かんばかりの勢いを見せる真樹に、リアルがそう告げた。

 

「今日の事件は米川純理が犯人じゃない。根拠は、そうね、米川純理にとって桝村美佳子は特別な存在だから。ってところね」

「どういう意味だ?」

「定番な表現なら親友、そうよね?」

 

 リアルの問いに、純理が頷いた。

 

「桝村さん、いえ、美佳子とわたくしはアカデミーに入る前からの幼馴染です」

「詳しく話してもらえる?」

「アカデミーに入る前のわたくしは身体が弱く、引っ込み思案で、部屋で漫画ばかり描いている子でした。逆に美佳子は明るく社交的な子でした」

「あまり接点のないタイプね。どこで知り合ったの?」

「家が隣で、親同士が懇意にしていたのです。小さい頃からわたくしの部屋で、一緒に遊んでいました。美佳子は幼い頃のわたくしにとって、たった一人の友人でした。美佳子はいつもわたくしの漫画を、面白いと言ってくれていました。あの頃のわたくしは、美佳子に読んでもらう為だけに漫画を描いていたのです」

 

 ふと間を取った。

 

 


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