表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/114

十月二十三日(水) -6-

 明らかに狼狽した様子のリアルに、更なる追い討ちを掛ける。

 

「それにわたくしはトーン作業を部室ですることにしています。自室で原稿を書いていたわたくしに、トーンが付着しているはずがありません。なんなら部屋を確認して頂いてもらっても構いませんよ。トーンの破片があるかどうか」

「事件後に掃除したとも考えられるわ」

「それは一理ありますね。では、これではどうでしょう。そのトーンはわたくしが使ったことのない種類です」

「え?」

「リアルさんは御存知ないと思いますが、トーンには様々な種類があるのです。過去の作品を全て調べてもらっても構いませんが、その種類の物は使ったことがありません。何故、使ったことのないトーンが窓を割ったこの石に付着していたのでしょう」

「まさか、詩方」

 

 真樹の声は震えていた。

 

 有り得ない可能性が、明確な形となっていく。

 それに大きな衝撃を受けたのは真樹だけでなく、この場にいる全員だった。

 

「米川純理、アンタの言う通り。それはアタシが付けたのよ」

 

 がっくりと肩を落としたリアルが告げる。

 

「なんと恐ろしいことでしょう。有りもしない証拠をでっち上げ、無実の者を犯罪者に仕立て上げようとするなんて。それに風紀委員や生徒会長が加担するなんて。こんなことが許されると思っているのですか?」

 

 雄弁になった純理が、その矛先を周囲に向けた。

 

 真樹だけではなく、彩音や沙耶ですら返す言葉が見つからず、口篭ってしまう。

 

 この重く苦しく立ち込める沈黙を破ったのは、

「アンタ、バカじゃないの。随分と調子に乗っちゃってさ」

 リアルだった。

 

 発言を理解する一瞬の間を置いて、純理が眉を吊り上げる。

 

「なんです! 貴方、自分のやったことが解ってるのですか!」

「ったくうるさいわね。キャンキャン吠える犬は嫌われるわよ」

「な、なんですって! 証拠を捏造し、わたくしを陥れようとしたくせに!」

 

 限度を越えた怒りに、頬を真っ赤にして怒鳴った。

 

「証拠? 捏造? なんの話か解んないんだけど?」

「とぼけるつもりですの! トーンですわ! 自分で貼り付けたトーンを証拠だと言って!」

「はぁ? こんな石にトーンが張り付いてからって、なんの証拠になるっての?」

「ど、どういう意味ですか?」

「証拠なんて最初からないのよ」

 

 にぃっと犬歯を覗かせる。意地悪さを多分に含んだ表情。

 

 それを見た純理の顔から、さあっと血の気が引いた。

 

「だから、アンタに手伝ってもらったの」

 

 リアルが会議テーブルの前まで進み、静かに石を手にした。

 

「じゃあ、米川純理、簡単な質問をさせてもらうわね」

 

 純理が力なく首を左右に振る。

 既に先ほどの勢いはすっかり消え失せていた。

 

「アンタはこの石で窓を割ったって決め付けてたわね。不思議じゃない? なんでアンタは、犯人が窓を石で割ったことを知ってるんだろ?」

 

 純理が力なくうな垂れた。それはあまりに明確な反応だった。

 

「アンタはとても頭の回転が早いわね。常に次の展開を予測して行動している。でも、それが仇となっちゃったのよ」

「そのトーンを選んだのは」

「当然、アンタが使ったことのない物を探したの。アンタのことだから、きっと鬼の首を取ったように騒ぐんだろうって思ってさ。いやいや、苦労したわよ。違いが解り難いんだもん」

「あの状況で確認しろと言われたら、誰でもこの石のことだと思うものです」

 

 純理が弱々しい声を出した。

 

「そう、それが正解の反論ね」

「もし、わたくしがそう答えていたら」

「そこからアンタを追い詰めるカードはあったわよ。折角だし、やってみる?」

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ