十月九日(水) -1-
【はじめに】
結局、六人については自殺として処理された。
あの儀式に参加したとされる七人の中で生存者はただ一人。
何故、彼女だけ生き残る事ができたのか。
答えはあまりにシンプル。彼女は『違ったから』だ。
あの夜、あの儀式を行ったのは六人だった。
七人目の彼女は、哀れな六人によって呼び出された、あちらからの来訪者だったのだ。
~アカデミーの七不思議 『七人目の来訪者』より~
十月九日(水)
アカデミーは本土より遥か南、四方を海に囲まれた洋上の島にある。
島の総面積はおおよそ三百平方キロメートル。
その西半分を森が占めている。残り半分がアカデミーと寮。更に生徒達の為に用意された施設がある。
生徒数は、約一万三千人。全寮制。
生徒達は十二歳で入学。初等・中等・高等部の各三年間を過ごす。
中等部。終業を告げるチャイムが鳴り響く。
数分の間を置いて、古風な佇まいを持つレンガ模様のがっしりとした校舎から、ぞろぞろと生徒達が溢れ出してきた。
澄んだ青を基調にしたブレザーと膝丈のプリーツスカート。襟付きの白いシャツに細いリボンタイ。靴は黒のローファー。
これが中等部の制服になる。
一日の授業を終え、生徒達は一様に晴れやかな表情を見せていた。
グラウンドと校舎を隔てる幅三メートルほどのコンクリート通路、大多数はそこを通って校門に向う。
もちろん、廊下を通るのと大差はない。
それでも校舎から外に出る開放感を好む者が多いのだ。
自然にできた人の流れが校門に続いていく。
他愛ない会話に花を咲かせながら。実にありふれた極々平凡な放課後の光景。
のはずだった。
せっかちな第一陣の下校が終わり、やや数の減った第ニ陣の移動となった頃。
「あれなんだろ?」
誰かが声を出した。
何気ない一言。誰かに尋ねたわけでもない。ただ思った事がこぼれただけ。そんな響きだった。
「ほら、あれ、人かな?」
細い指が上を指し示す。
人という単語に好奇心を刺激された数名の視線が、その先を追う。
アカデミーは広い校庭を囲むように、三つの校舎がコの字に配置されている。
南側の通用門を基点に、正面奥に三年の北校舎、左に二年の西校舎、そして一年の東校舎。
指は西校舎の屋上に向けられていた。
四階建ての校舎、しかも逆光となった今の時間では、はっきりと視認するのは難しかった。
が、校庭に面した位置に人が見える。
「なんであんなとこに」
「っていうか、どこのクラスの人?」
「怒られるんじゃない」
屋上への出入りは校則で禁止されているはず。怪訝なざわめきが起こった。
野次馬根性を発揮してグラウンド中央まで移動する者も出始める。
ランニングを開始していた運動部も、校舎を見上げた。
「ね、あれって危なくない?」
「あいつさ、フェンス越えてるじゃん」
目が慣れてくるにつれ、屋上の人影が、張り巡らされている落下防止柵を乗り越えた位置にいるのが解った。
各々の言葉に重みが乗ってくる。