序章 第三次世界大戦終了にあたって、神様大いに語る
あーあー、マイクテス、マイクテス。
あめんぼあかいなあいうえお。
うん、人類、聞こえてる?
雲の上から響く、スーパービューリフォーでおそれ多い私の声が。
さて、私はお前達が言うところの神様でーす。
キリストでもヤハウェでもブッダでも、好きに呼べばいい。
どれでもあってどれでもないから。
それにさ、はっきり言って、そんなことはどうでもいいじゃない。
お前達、私に言うことあるでしょ?
ん?
助けてくれ?
水と食料が足りない?
子供が死にそう?
あははは。
あはははははははははははははははははは。
あーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは。
何それ、チョー笑えるんだけどー?
神に何を求めてるの?
神は人類を愛さなきゃいけない?
神は人類を救わなきゃいけない?
勝手に決めないで欲しいわね。
そもそも私がお前達にどうこう言われる筋合いなんてないんだしぃー。
信仰してたとか、祈っていたとか、規律正しい生活をしてたとか、何とかの教典の通り、何とかの聖書の通りに生きてきたとかさ。
だから? で?
お前達が勝手に、神はこうして欲しいと思ってるに違いないって決め付けて、勝手にそうしてただけでしょ?
正直、チョー馬鹿じゃない?
マジで馬鹿。
そんなどうでもいいことより、何これ。
何この焼け野原。瓦礫の山。死臭と血煙の漂う大地。
お前達がやったんだよ、これ。
お前達ってさぁ、類人猿の頃は除くとしてもね、言葉使ったり、文明築いたりしだしてから一応半万年くらい経ってるんだよね。
半万年近くも経ってさあ、何やってるわけ?
以前から何も学ばない馬鹿だとは思ってたけど、うん、今度という今度は改めて認識が変わったわ。
ウルトラスーパーゴージャスデラックススペシャルアンビリーバブル馬鹿。
馬鹿なんて簡単な一言で手に負えないよね。
うぜぇし。
最後の最後に神様助けて、か。
いい気なモンだね。
あのさお前達、もし私の立場なら助ける?
僕は助けるとかさ、私は助けるとか言う奴もいるだろうね。
でも本当に助ける奴、どれだけいると思う?
例えば私がお前達を助けたら、何か良いことがあるの?
毎日の食事でおかずが一品増える?
睡眠時間が二時間増える?
答えなよ、お前達。
祈るとか、信じるとか、どうでもいいし。
お前達がまともに生きてないから、たまに私がそれとなくしてやった警告とか無視して、勝手に殺しあって、勝手に滅びそうになってるんでしょ?
なに、私の言葉遣いが神にしてはおかしいって?
どうでもいいこと気にする奴が居るんだね。
お前達、神は高貴だとか上品だとか、勝手な物差しで決め付けないでくれる?
それに今さ、そんなこと言ってるわけじゃないんだから。
私の言葉は今、生き残ってる人類全てに同時通訳してるから、変に聞こえる人が居ても気にして欲しくないのよねー。
あ、それから私って女だから。
勝手におっさんとかにしないでよね、マジ勘弁して欲しいし。
で、話が逸れたんだけどさ、私、お前達に最後のチャンスあげようと思うんだよね。
ここからはこの放送は、生き残ってる日本人向けの内容に吹き替えしてお送りしまーす。
他の国では他の国で流してるから、そもそも今死に掛けてるお前達が、ロシアやアフリカがどうなってようとどうでもいいでしょ。
期待しても同じ、瓦礫の山と焦土しかないし。
と言うわけで、本題いくわよー。
えっとさ、ノアの箱舟って知ってる?
知らない奴は知ってる奴に聞け、と言いたいところだけど、大サービスでかいつまんで説明だけしてあげる。
要は、ノアっていうおっさんが居たんだけど、ある時ちょっと世界が滅びるようなヤバイ洪水が起きる事になっちゃってさ、その人にこっそり私が教えてあげたんだね。
結果、ノアのおっさんは私の言いつけ通り箱舟を作ったわけ。
馬鹿にされたりしたけど一生懸命作った結果、おっさんと動物達は洪水で死ななくて、無事に新天地を発見して、幸せに暮らしてめでたしめでたしってわけ。
で、今回はちょっとノアみたいなのを出すのも厳しそうだから、私が特別に箱舟、ではなく、保護施設を提供してあげようっていう、もう私ってスゲェ、神様最高!
いよっ、超太っ腹!
フフフ、実はダイエットしてるからお腹は割とスリムなのよ?
あ、聞いてない?
こほん、まあいいじゃない。要はそういうわけよ。
でもね、全員が助かろうなんて、そういう甘っちょろい考えは捨てて。
そこに入るには条件があるから。
あと、今回惜しくも施設に入れなかった人達には罰ゲームがあるからね?