表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
子供之國  作者: 晋斗
1/1

第一話:話始め

「おじいちゃんの昔話」

三年四組 逆蕗 カイト


ぼくは夏休みにおじいちゃんの家へ行きました。

おじいちゃんの家に行くと、ぼくは必ずすることがあります。

それは、おじいちゃんの昔話を聞くことです。

おばあちゃんとママは

「外であそんで来なさい」

っていうけれど、ぼくはそれよりおじいちゃんの話が聞きたかったのです。


おじいちゃんは言いました。

「カイト、今日はどんな話が聞きたいんだ?」

「おじいちゃんがぼく位だった時の話がいいな」

ぼくはそう答えました。

おじいちゃんはにっこりと笑って、こう話し始めました。

「おじいちゃんの名前がカツヤだって言ったね?」

「うん、かっちゃんって言われてたんでしょ?」

「そう。おじいちゃんは地元じゃ有名なガキ大将だったんだ。村の子供たちをまとめるリーダーみたいなものだな。ある日、その小さな村に引っ越してくる家族が一つあった――」

名字は「高岸」、子供は二人、小学二年生の双子で名前は「あい」と「けい」。

女と男と一人ずつなのに、顔がそっくりで、初めて会ったときは「ガキ大将」のおじいちゃんもびっくりしたらしいです。

でも二人ともすぐに村になじんで、おじいちゃんがまとめる子供会にも参加するようになってから、ちょっとたったころ……。

その事件は起こってしまいました。

「おい!! やっぱり見つからないか?」いつものように遊んでいた帰り、おじいちゃんは大人たちがばかにあわただしくしているのを見て、声をかけずにはいられなかった。

「おい、どうしたっていうんだよ」

「かっちゃんも見てないか? 今日ずっと愛と慶が帰って来ないって高岸夫婦が騒いでいてな……」

「いや今日は見てないけど……ってまさか!!」

「どうした!?」

おじいちゃんは前の日、高岸双子に村の伝承を話すようせがまれて村のおきてでもある「子供之國」の話をしたのでした。


「ねぇおじいちゃん」

ぼくがそこまで話したおじいちゃんに声をかけました。

「なんだいカイト?」

「「子供之國」の話してよ」

これから先の話がわかるためには、「子供之國」を知っておく必要があると思ったからです。

でもおじいちゃんは首をふって、

「続きを聞けばわかる」

と言うとそのまま話をつづけました。


大人たちはおじいちゃんの話を聞いて、顔を青くしました。

「子供之國」というのは村のおきてで、絶対に入ることが禁じられている区域だからのことだからです。

村の子供たちは、物心がついてくると親から自然と「子供之國」の話を聞かされ、これは村のおきてだから、と口をすっぱくして言われるそうです。

だから、おじいちゃんも高岸双子に話しておいた方がいいと思った、と大人たちにせつめいしました。

たしかに正しいことです。

わるいことをしているのは、おじいちゃんの話を聞いたのに、「子供之國」へ行ってしまった高岸双子だと思います。

ぼくはおじいちゃんにそう言いました。

おじいちゃんはぼくに笑って頭をなで、

「カイトは正しいよ」

と言ってくれました。

でも、高岸双子は多分行ってしまって、今そう言ってもなんにもならないのです。

「子供之國」は一回入ったら帰って来れないと言われています。

大人たちは高岸夫婦といっしょにどうするか、村の集会所に集まって話し始めました。

同じとき、集会所のうらでは子供会のメンバーがおじいちゃんを中心に、話し合っていたそうです。

「どうする?」

おじいちゃんがみんなの顔をぐるっと見回して言いました。

するとあちこちからばらばらの意見。

「助けに行こう」という人たちと、「大人にまかせよう」という人たちとに大きく分かれました。

おじいちゃんはなやみました。

まとめることはできない、そうはんだんしたおじいちゃんは、けつろんを言いました。

「オレはだれに何と言われようと、助けに行く。助けたい奴はオレと一緒に来い」

すると、おじいちゃんの一番の友だちのアツシという人が、

「かっちゃん、よく考えてもみろよ。確かに愛と慶は俺たちとも連んでいたさ……でも所詮アイツ等はよそ者。俺たちが大切だと思ったら掟だって言ったはずの「子供之國」に行くかよ……。放っておこうぜ、自業自得だ」

と言いすてたのです。

下級生はまよいました。

たしかにアツシの言うこともわかる、とアツシ派についた人が多く、結局おじいちゃん派は三人しかいなかったのです。

でもおじいちゃんはむしろ、三人ものこったことにおどろいたそうです。

一人でも行こうと思っていたから、なかまがいることはおじいちゃんの支えになったと、ぼくは思います。

その三人は子供会の

おせっかいなサクラ、

まじめなナオキ、

大人しげなマユコ

だった。

おじいちゃんはまず三人に理由を聞いた。

サクラが

「単純に双子を助けたいからよ」、

ナオキは

「ぼくも転校生の身だ。彼らほど行動力はなかったけど、自分にも起こり得たことだしね」、

マユコは

「私、双子ちゃんには仲良くしてもらってたんです。あの子たちが困っているのに、だまって見過ごす訳にはいきません」

とそれぞれはっきり理由がわかった所で、おじいちゃんは三人に作戦を話した。

話し終わって解散しても、大人は話を続けていたらしい。

作戦当日――。

じゅんびに手間取ったおじいちゃんは走っていました。

道のとちゅうで何者かがおじいちゃんのじゃまをします。

「……行くのか、かっちゃん」

アツシでした。

おじいちゃんはいやな顔もせずにただ、

「あぁ」

とつぶやいただけ。

でも本当はそれ以上深い会話をしているんだな、とぼくは感じました。

「分かったよ、だからもう睨むなって。かっちゃんは昔から子供会のヒーローだからな」

頭をかきながら、アツシは言いました。

おじいちゃんは何も言えなくて、ただ立ちつくしています。

「お前に、かかっているんだ」

急にアツシはまじめな顔をして、おじいちゃんと向かい合いました。

「分かってる。だけどなアツシ……俺の我が儘を一つだけ聞いてくれないか?」

「なんだ?」

「子供会を……頼む」

それは強いかくごをした、男の顔でした。

今はしわくちゃだけど、小学生が言ったら絵になる。そんな表情でした。

アツシはそれに何か言いかけたようだけど、おじいちゃんはもう気にしないでそのままつき進みました。

場所につくと三人はもういて、おじいちゃんが来たことにホッとしているような、そんな感じでした。

「遅くなって悪かった……じゃあ行くぞ」

三人はうなずきました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ