第7話:もう二度と会えないとしても。蒼龍くんと「一期一会」の夕焼け
こんにちは、佐藤堅明です。
「いつかまた会える」 私たちはつい、そう思ってしまいがちです。
けれど、人生において、ある人とある場所で、同じ夕焼けを見る機会は、実はたった一度きりなのかもしれません。 今日の蒼龍くんは、遠い国から来た旅人との出会いを通じて、時間の尊さを学びます。
和顔愛語を学んだ蒼龍くんは、誰にでも笑顔で接するようになり、毎日を穏やかに過ごしていました。
(心からの笑顔はこんなに温かいんだ。みんなといるのが、本当に楽しい!)
ある日、蒼龍くんは草原の端にある古い桜の木の下で、一羽の老いた白いカモメと出会いました。
遠い海から来たというカモメは、優しく微笑みながらも、どこか寂しそうな目をしていました。
蒼龍くんはにこやかに話しかけました。
「こんにちは!僕は蒼龍です。遠いところから来たのですね」
カモメは静かに答えました。
「こんにちは、蒼龍くん。わしはもう年老いてな。故郷へ帰る旅の途中で、少し休ませてもらっているのじゃよ」
蒼龍くんは「もっと役に立たなくては!」と焦ることなく、ただ穏やかな心でカモメの話に耳を傾けました。
カモメが語る、遠い海での荒波の話、命の恵みの話、そして二度と故郷へは戻れないかもしれないという覚悟。
話を聞きながら、蒼龍くんはふと、この穏やかな時間が永遠ではないことに気づきました。
(このカモメさんは、明日にはもういないかもしれない。僕がこの人と、この桜の下で夕焼けを見るのは、たった一度きりなんだ……)
そのとき、師匠である玄龍さまの教えが心に響きました。
「一期一会とはのう、すべての出会いは二度と繰り返されない、一度きりのものだと心得ることじゃ。だからこそ、目の前の相手に心を尽くしなさい。一瞬の出会いであっても、最高の『おもてなし』の心で、その時を大切に生きるのじゃよ」
蒼龍くんはその教えを胸に刻みました。
カモメの言葉一つひとつに真剣に耳を澄ませ、心からの笑顔を向けました。
太陽が沈み、空一面が桜の花びらのように美しいオレンジ色に染まっていきます。
「蒼龍くん、ありがとう。こんなに心を通わせたのは久々じゃ。わしの故郷の夕焼けよりも、温かい時間だったよ」
カモメは深く感謝を伝えました。
翌朝、カモメは静かに飛び立っていきました。
二度と会えない寂しさはありましたが、蒼龍くんに後悔はありませんでした。
昨日の夕焼けの下で、自分の最善を尽くし、真っ直ぐに向き合ったからです。
その一度きりの出会いは、蒼龍くんの心に、消えることのない温かな宝物として残りました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
「一期一会」。 茶道の心得としても有名なこの言葉は、「一生に一度きりの出会い」という意味です。
毎日顔を合わせる家族や友人でさえ、明日、全く同じように会える保証はありません。 そう考えると、目の前の相手に向ける言葉や笑顔が、いかに大切で、かけがえのないものかに気づかされます。
誰かと過ごす「今」を、最高のおもてなしの心で大切にする。 それが、別れのあとに「寂しさ」だけでなく「温かな思い出」を残す秘訣なのかもしれません。
次回の蒼龍くんは、偉大な龍とは!!そんな物語の核心にせまるお話です。
合掌
佐藤堅明
※本作は現在、「曹洞宗 蒼龍寺」のFacebookでも同時連載中ですが、こちらの『なろう』版ではより読みやすく整えてお届けしています。まずはFacebookの最新話に追いつくまで、毎日更新を続けてまいりますので、楽しみにお待ちください。
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