第26話:表面に惑わされるな。蒼龍くんと「看」の智慧
私たちはついつい、目の前の「形」や「結果」だけで物事を判断してしまいがちです。 嫌なことがあったら「悪いこと」、誰かが怒っていたら「怖い人」。
けれど、玄龍さまは幼い蒼龍くんに、それとは違う「心の眼」の使い方を教えました。 今日の物語は、黒龍という深い闇の裏側にある「真実」を看つけるための、大切な修行のお話です。
昨夜、懐かしい夢を見たせいか、蒼龍くんは歩きながら幼い頃のことを思い出していました。 それは、まだ鱗も柔らかかった彼が、玄龍さまから「物事の捉え方」を教わっていた頃の記憶です。
ある日の修行中、玄龍さまは蒼龍くんに一つの大きな虫眼鏡を渡しました。 「蒼龍よ。ただ眺めるのではない。心の眼を凝らして『看みる』のじゃ」
蒼龍くんは、手渡されたレンズ越しに足元の枯れ葉を覗き込みました。 「お師匠さま、これはただの死んだ葉っぱだよ?」 「ほう、そうかな? もっと深く、その裏側まで看てごらん」
じっと集中し、レンズの奥にある真実を看ようとしたその時、蒼龍くんは驚きました。 枯れ葉の裏では小さな虫たちが命を繋ぎ、葉はやがて土へと帰り、次の春に咲く花の栄養になろうとしていたのです。
「表面の美しさや醜さに惑わされてはならぬ。物事の本質、そして命の繋がりを看ること。それが本当の智慧となる」
蒼龍くんは真剣な眼差しでレンズを覗き込み、世界の裏側に隠された優しさや真実を見極める力を養いました。 この「看る」修行があったからこそ、彼は旅先で人々の悩みや、悲しみの断片に気づくことができたのです。
(黒龍を、ただの『悪い奴だ』と決めつけるんじゃなくて、お師匠さまに教わったこの眼で、しっかり看てみよう。彼が何に傷つき、何を隠しているのかを……)
蒼龍くんは歩みを止めず、北の空を見上げます。 かつての師の教えが、今の彼の道標となっていました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
「看」。 看護師さんの「看」という字でもありますが、これは手をかざして、じっと見守り、本質を見極めることを意味します。
枯れ葉を「死んだもの」と見るか、「次への命の土台」と看るか。 私たちの人生も同じかもしれません。一見すると絶望に見える出来事も、じっと看ていれば、そこには必ず新しい成長の種が隠されています。
黒龍という存在の裏側に、蒼龍くんは何を看つけるのでしょうか。
次回は黒龍が闇に落ちた「悲しき真実」をお贈りします。
合掌




