第24話:第二章・完結。飾らない心「直心」の境地
こんにちは、佐藤堅明です。
誰かに認められたい、褒められたい。 そう願うことは自然なことですが、その思いが強すぎると、いつの間にか「本当の自分」を見失ってしまいます。
闇を払い、英雄となった蒼龍くん。 彼が差し出された富や名声を断り、選んだのは、一点の曇りもない「ありのままの心」でした。
第二章、ここに完結です。
暗龍が光の中に消えた後、峠には心地よい風が吹き抜けました。
蒼龍くんは、傷ついた体を引きずるように歩き、空になったカバンを拾い上げました。中身はボロボロで、大切にしていた「初心のノート」も失われてしまいましたが、不思議と彼の心はかつてないほど軽く、澄み渡っていました。
一旦報告のために村へ戻った蒼龍くんを、人々は涙を流して出迎えました。
「村を救ってくれた英雄だ」「どうかこのまま、私たちの王になってください」
贅沢な食事や宝石を差し出す者さえいました。
しかし、蒼龍くんはそれらをすべて穏やかに断りました。
「僕はただ、この村のみんなの笑顔が見たかっただけなんです。特別な報いはいりません」
今の彼には、自分を大きく見せようとする虚栄心も、手柄を自慢したいという私欲もありません。ありのままの、飾らない『直心』で村人たちと接していました。
「直心、これ道場なり。……どんな場所でも、どんな相手に対しても、素直な心で向き合うこと。それが、僕がこの旅で見つけた一番の宝物です」
その夜、蒼龍くんは村の小さな広場で、子供たちと一緒に焚き火を囲みました。
ノートがなくても、彼は自分の言葉で、旅で出会った素晴らしい教えや、諦めない心の大切さを語り聞かせました。村人たちの瞳には、もはや闇に怯える影はありませんでした。かつて蒼龍くんに教わった「自灯明」の教えが、今、彼ら自身の自立した光として、その瞳の奥に静かに、しかし力強く宿っていたのです。
翌朝。蒼龍くんは誰にも告げず、静かに村を立ちました。
「さあ、行こう。魔王・黒龍が待つ城へ」
目的地は、世界の最北端にそびえる「絶望の牙」。
そこには、三鱗龍を束ね、世界を深い闇に沈めようとする魔王が君臨しています。
今の蒼龍くんには、折れない志と、呼吸を整える平穏、そして一点の曇りもない直心があります。
一歩、また一歩と歩む、青い小龍の背中は、朝日を浴びて一回りも二回りも大きく見えるのでした。
第2章 完。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
「直心、これ道場なり」。
維摩経にある言葉で、素直な心で現実に立ち向かうなら、今いるその場所がそのまま修行の場(道場)になるという意味です。
ノートという支えを失い、裸一貫の心で暗龍を乗り越えた蒼龍くん。かつて伝えた「自灯明」の光が村人たちの心に根付いたのを見届け、彼は再び孤独な旅へと戻ります。英雄としての座を捨て、ただ一人の修行者として歩み出すその背中に、確かな強さが宿り始めました。
次回より、物語はいよいよ最終章(第三章)へ。
世界の最北端、魔王・黒龍が住まう「絶望の牙」を目指します。
これまでの教えを胸に、蒼龍くんは世界の闇を照らすことができるのか。
※第三章からは、投稿頻度を週2回(火曜日と金曜日)に増やしてお届けしてまいります。
蒼龍くんの最後の試練を、ぜひ一緒に見守ってください。
合掌




