第22話:絶望の重圧! 蒼龍くんと「一息」の暗転
こんにちは、佐藤堅明です。
予期せぬトラブルや強いプレッシャーに襲われたとき、私たちはパニックになり、頭が真っ白になってしまいます。
今日の蒼龍くんが直面するのは、呼吸さえも奪う圧倒的な「絶望」。 そんな極限状態で彼を救ったのは、玄龍さまから教わった、あまりにもシンプルで、けれど最も力強い智慧でした。
「寸心千古」の誓いを立てた翌朝、蒼龍くんは小鳥のさえずりで目を覚ましました。 差し込む朝日は昨日よりも輝いて見え、心は澄み渡っています。 「よし、今日も精一杯生きるぞ!」 蒼龍くんは初心のノートをカバンにしまい、感謝を伝える村人たちに見送られながら、次なる村へと続く「嘆きの峠」へ向かいました。
しかし、峠に差し掛かった途端、辺りは不気味な紫色の霧に包まれました。 「よく来たな、青い小龍よ。私は三鱗龍の闇竜だ」
霧の向こうから現れたのは、巨大な翼を広げ、周囲の空気を重く沈ませる邪悪な龍でした。 闇竜がひとたび咆哮すると、蒼龍くんの心に「絶望の重圧」がのしかかります。 「怖い……体が重い……。息が、うまく吸えない……!」
闇竜から放たれる負の雄叫びは、蒼龍くんの肺から酸素を奪い、心臓を締め付けます。 影龍の時とは違う、圧倒的な「恐怖の重圧」に、蒼龍くんは膝をつき、地面に這いつくばってしまいました。 (苦しい……。戦うどころか、立ち上がることさえできない。やっぱり僕は、まだ弱すぎるんだ……)
パニックに陥り、意識が遠のきそうになったその時です。 蒼龍くんは、以前玄龍さまから教わった「龍の呼吸」を思い出しました。 「蒼龍よ、嵐の中にいる時こそ、まずは腹の底から古い空気を出し切り、新しい命を吸い込みなさい」
蒼龍くんは目を閉じ、震える体で、精一杯の『一息』をゆっくりと吐き出しました。 それは温かいお茶を啜る時のような穏やかさで、ただ「今、この瞬間の呼吸」だけに意識を集中する。 「ふぅー……。……すぅー……」
深く、静かな呼吸。それだけで、闇竜が作り出した絶望の重圧が、嘘のように軽くなっていくのを感じました。
心が整えば、体は自ずと動き出します。 呼吸を整え、一息の安らぎの中に不動心を見出した蒼龍くん。 その瞳には、霧の奥に隠された闇竜の核がはっきりと見えていました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
「一息」。 私たちはパニックになると、呼吸が浅くなり、心も体もこわばってしまいます。禅の修行では「調身・調息・調心」という言葉があるように、心を整えたければ、まずは呼吸を整えることが近道だと教えています。
私も永平寺での修行時代に、老師からこのように教えられたことを今でも鮮明に覚えています。
「息は最初に吐く。深くゆっくり。そしてまた深くゆっくり吸う。その一息ごとにゆっくり数を数えるようにすると、坐ることに集中できる」
吐き出すことで、自分の中の強張りを手放し、吸い込むことで、新しい命を受け入れる。どんなに強い敵や困難が目の前にあっても、正しく「一息」をつくことができれば、そこには必ず静寂が生まれます。
闇竜の正体を捉えた蒼龍くん。この窮地から、どのような反撃を見せるのでしょうか。
それでは来週の金曜日、19時にお会いしましょう。
合掌
佐藤堅明
※本作は現在、「曹洞宗 蒼龍寺」のFacebookでも同時連載中ですが、こちらの『なろう』版ではより読みやすく整えてお届けしています。
イイネ!と思ったら下の☆☆☆☆☆をタップして応援お願いします。




