第20話:心の曇りを焼き払え! 蒼龍くんと「磨く」の戦い
こんにちは、佐藤堅明です。
誰かにひどい言葉を投げつけられたり、理不尽な状況に追い込まれたりすると、私たちの心は泥を塗られたように暗く沈んでしまいます。
けれど、外側からつく汚れは、自分自身の心まで変えることはできません。 影龍が仕掛ける「心の泥沼」に落ちた蒼龍くん。 彼が闇の中で見出した、自分を失わないための「磨く」という智慧とは――。
影龍が落ちていった深い闇の底から不気味な声が響きます。 「ほら、我を倒したくばこちらへ来るのだ……」
蒼龍くんが追いかけ進むと、影龍は不気味な霧を操り、蒼龍くんを底なしの泥沼へと誘い込もうと、不思議な呪いの術を張り巡らせていました。
「そんな小細工、今の僕には通用しない!」 蒼龍くんの懐にある「初心のノート」に書いた『悪党をなぎ倒す』という言葉は、単なる強がりではなく、守るべきものがある者の覚悟へと変わっていました。
影龍が放つどす黒い衝撃波を、蒼龍くんは真っ向から受け止めました。鱗が泥に汚れ、茨に傷つこうとも、その瞳は一点の曇りもなく影龍の本体を見据えています。
「な、何だと!? 泥を恐れず、傷をも厭わぬというのか!」 驚愕する影龍に対し、蒼龍くんは電光石火の速さで踏み込みました。
しかしその瞬間、周囲の景色がぐにゃりと歪みます。 気がつくと、蒼龍くんは底なしの暗い沼に首まで沈んでいました。 「ははは! お前の勇気など所詮はその程度のもの。泥にまみれ、汚れ、醜く朽ち果てるのがお似合いだ」 影龍の冷たい声が響くたび、蒼龍くんの体は重くなり、自慢の青い鱗がどす黒く変色していくように見えました。
(……いや、これは呪いの幻だ。僕の心が、影龍の言葉に惑わされているだけなんだ) 蒼龍くんは、襲いかかる不安を振り払うように、静かに目を閉じました。 そして、両手で自らの胸元……心の奥にある「初心」をそっと包み込みました。
「『磨く(みがく)』。……どんなに外側から泥を投げつけられようとも、僕の本当の輝きはここにある。曇らせてなるものか!」
蒼龍くんは心の中で、初心のノートに記したあの言葉を、一文字ずつ磨き上げました。迷いや恐怖という「心の汚れ」を取り除き、ただ「村の人を助けたい」という純粋な一念だけを研ぎ澄ましていきます。
すると、蒼龍くんの体から、泥を焼き払うほどの烈火の如き光が溢れ出しました。
「なっ、我の幻術を自らの力で破るだと……!?」 「影龍! 汚れを恐れる心こそが、最大の汚れだ!」
磨き抜かれた心の眼は、闇に潜む影龍の本体を鮮やかに捉えていました。 「玄龍流・驀直アタック!」 一直線の閃光となった蒼龍くんの必殺技が、再度、影龍の胸元を貫きました。
「ぐわあああ! この未熟な若造に、これほどの光が……!」 影龍は断末魔の叫びとともに、黒い霧となって消え去りました。
しばらくすると村を覆っていた闇が晴れ、黄金色の朝日が差し込みます。蒼龍くんは、傷ついた自分の体を誇らしげに眺めながら、静かに息を吐きました。
しかし、その勝利の裏で、遥か遠くの「黒龍城」では、大地を揺るがすような恐ろしい咆哮が響いていました。 「弟分の影龍が敗れたか……。だが所詮ヤツは三鱗龍の中で最弱。蒼龍か、面白い。その未熟な正義、我が絶望で叩き潰してくれよう」
それは、魔王・黒龍の手下、三鱗龍の兄者たちの冷徹な呟きでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
「磨く(みがく)」。
私たちは皆、もともと「仏性」という、ピカピカに輝く宝石のような心を持って生まれてくると禅では教えます。
けれど、生きていくうちに、外側からのストレスや悪口、自分自身の迷いといった「泥」が付いて、輝きが見えなくなってしまう。修行とは、新しい何かを付け足すことではなく、ただ、本来の輝きを覆っている汚れを「磨いて」落としていくことなのです。
影龍を倒し、村に平和を取り戻した蒼龍くん。しかし、魔王の城ではさらなる刺客が動き出そうとしています。
次回!次なる戦いは、さらなる試練の予感……。
合掌
佐藤堅明
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