第14話:イライラは心の汚れ? 蒼龍くんと「洗心」の川
こんにちは、佐藤堅明です。
誰かのために良かれと思ってやっているのに、上手くいかない。 そんな時、つい相手や環境のせいにして、心の中にドロドロとした不満が溜まってしまうことはありませんか?
今日の蒼龍くんは、懐かしい再会と、ぬかるんだ泥の中で、大切な「心の洗濯」を学びます。
旅を始めて数日。蒼龍くんは、キラキラした新緑の森を抜けて、勢いよく流れる大きな川へとたどり着きました。
そこで目にしたのは、川べりの深いぬかるみに荷車の車輪を取られ、途方に暮れているお金持ちの商人の姿でした。 「おや、あなたは山で会った……!」 「おお、お山の龍の坊ちゃん! 助けてくれ、このままじゃ大事な売り物が台無しだ!」
蒼龍くんは「初心」のノートに書いた『困っている人を助ける』という目標を思い出し、鼻息荒く駆け寄りました。 「任せてください! 僕の力なら、こんな泥なんてすぐです!」
ところが、いざ泥の中に足を踏み入れると、想像以上の手強さでした。 自慢の青い鱗はまたたく間に泥まみれになり、どれほど踏ん張っても荷車は動きません。 (おかしいな、修行した僕なら簡単にできるはずなのに。ああ、もう! この泥、全然落ちないし、ぬるぬるして気持ち悪い!)
焦れば焦るほど足元は滑り、焦燥感で心の中までドロドロとしたイライラに染まっていきます。 ついには(そもそも、こんなところに荷車を突っ込むからいけないんだ)と、商人に対して八つ当たりをするような汚い言葉さえ心に浮かんできました。
その時、ハッとして自分の手を見つめました。 泥を掴み、怒りに震えているその手は、かつて玄龍さまの前で合わせた清らかな手とは程遠いものでした。 蒼龍くんは一度荷車から手を離し、冷たい川の流れの中に飛び込みました。
「『洗心』……」
冷たさが肌に刺さり、鱗についた泥をさらさらと押し流していきます。それと同時に、心の中に溜まった毒や焦りも、川のせせらぎが一緒に連れ去っていくのを感じました。
「ふう……。汚れていたのは、体だけじゃなかったんだ」
心が澄み渡ると、不思議と力が体の奥から湧いてきました。 蒼龍くんは穏やかな笑顔で再びぬかるみに立つと、今度は力任せではなく、泥の性質をよく見極めて、ゆっくりと、しかし確実に荷車を押し上げました。
「助かったよ、坊ちゃん! さっきまでとは別人のような力強さだったな!」 商人の感謝の声を聞きながら、蒼龍くんは川面を見つめました。
どんなに外の世界が険しくても、心さえ洗えば、いつでも自分を取り戻せる。 蒼龍くんは、清らかな心で次の一歩を踏み出しました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
「洗心」。 文字通り、心を洗うことです。
私たちは日々、目に見えない「心の泥」を溜め込んでしまいます。焦り、怒り、嫉妬、不満……。 それは決して特別なことではなく、一生懸命に生きているからこそ付いてしまう汚れです。
大切なのは、汚さないことではなく「汚れたことに気づき、洗い流すこと」。 顔を洗ったり、お風呂に入ったりするように、一日の終わりに静かに座って、心についた泥をサラリと流す時間を持てたら素敵ですね。
さて、商人の荷車を助けた蒼龍くん。この出会いがまた新しい縁を呼ぶのでしょうか?
次回の蒼龍くんは、いよいよ冒険活劇の入り口に立ちます。ここから物語は急展開となるのです。
合掌
佐藤堅明
※本作は現在、「曹洞宗 蒼龍寺」のFacebookでも同時連載中ですが、こちらの『なろう』版ではより読みやすく整えてお届けしています。まずはFacebookの最新話に追いつくまで、毎日更新を続けてまいりますので、楽しみにお待ちください。
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