第10話:誰かのための人生じゃない。蒼龍くんと「主人公」の誇り
こんにちは、佐藤堅明です。
「どうするのが正解なんだろう?」 迷ったとき、私たちはつい外側に答えを求めてしまいます。
けれど、他人の言葉を借りているうちは、本当の意味で誰かの心に響くことはありません。 今日の蒼龍くんは、玄龍さまから「自分の人生の舞台」に立つための、最も大切な覚悟を学びます。
「行雲流水」を学んだ蒼龍くんは、変化に逆らわず、柔軟に進むことで心の平穏を保てるようになりました。しかし、彼は、時々不安を感じていました。
(流れに身を任せるのは心地よいけれど、このままで本当にいいのかな? 僕は、誰かの決めた舞台の上を、ただ流されているだけじゃないだろうか…)
蒼龍くんは、修行のルートや、人助けをする場面など、何か判断を求められるたびに、いつも遠くにいる玄龍さまの「正しい答え」を求めていました。
「この風向きで飛ぶのは正解でしょうか?」
「この困っている人に、どんな言葉をかけるのが、師の教えに一番合っているでしょうか?」
自分の心で決断せず、いつも「もし玄龍さまならどうするか」ばかりを考えている蒼龍くんを、玄龍さまは静かに見つめていました。
ある日、蒼龍くんは、ピィとキューが遊んでいるのを見かけました。二羽は、どちらが先にドングリを見つけるかという遊びで大喧嘩をしています。
蒼龍くんは慌てて仲裁に入り、玄龍さまの教えを引用しながら、二羽が納得する「最も正しい解決策」を提示しようと、懸命に言葉を選びました。
「喧嘩をしてはいけない。ここは『和顔愛語』の精神で、『一期一会』の友情を大切にするのが…」
しかし、二羽は蒼龍くんの言葉を聞き入れず、ますます激しく言い争いを続けます。
蒼龍くんは途方に暮れ、玄龍さまのもとへ駆けつけました。
「玄龍さまの教えは正しいはずなのに、なぜ、僕の言葉は届かないのですか? 僕は、正しい舞台で、正しい役を演じているはずなのに…」
玄龍さまは、静かに言いました。
「蒼龍よ、おまえは常に、誰かの決めた舞台を探し、誰かの決めた『正しい役』を演じようとしておる。しかし、それが、おまえの言葉に力がない理由じゃ。」
「よく聞くのじゃ。『主人公』とは、おまえが今立っておるその場所を指す言葉じゃ。特別な場所ではない。おまえが今いるその世界で、おまえ自身の責任と自由をもって、すべてを決め、行動する者。それこそが『主人公』じゃ。」
「おまえは、わしの教えを盾にして、自分の判断から逃れようとしておるのではないか? 誰かの役を演じるのは、楽かもしれない。しかし、おまえの人生の脚本は、おまえ自身が書くのじゃ。」
蒼龍くんは、雷に打たれたような衝撃を受けました。
(そうだ。僕は、誰かの答えを探し続けていた。自分の行動の全てに責任を持つことを恐れていたんだ。)
彼は、二羽の喧嘩の場に戻りました。今度は、玄龍さまの教えを引用するのではなく、自分の心で感じたことを、自分の言葉で伝えました。
「ピィ、キュー。このドングリの価値は、どちらが先に見つけたかじゃない。仲良しの二羽が、笑いあって一緒に食べることで、初めて『知足』の最高の味になるんだよ!」
蒼龍くん自身の心から出たその言葉は、驚くほど力強く、ピィとキューはすぐに喧嘩をやめ、仲良くドングリを分け合いました。
蒼龍くんは、特別な場所や、特別な力がなくても、今立っているここが、すでに自分の人生の舞台であり、自分自身が行動の責任と自由を持つ『主人公』なのだと悟ったのでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
「主人公」。 今では物語の主役を指す言葉ですが、禅の世界では「自らの本分を見失わず、主体的に生きる者」を指します。
誰かの顔色をうかがったり、一般論や正解に逃げたりするのではなく、「今、ここにいる自分」がどう感じ、どう動くのか。 その決断と責任を引き受けたとき、私たちは初めて自分の人生の「主人公」になれます。
あなたが今日、自分の心で選んだ小さな一歩は、どんなことでしたか?
次回の蒼龍くんは、無理に何かになろうとしなくていい。そんな簡単なことに気づくお話です。
合掌
佐藤堅明
※本作は現在、「曹洞宗 蒼龍寺」のFacebookでも同時連載中ですが、こちらの『なろう』版ではより読みやすく整えてお届けしています。まずはFacebookの最新話に追いつくまで、毎日更新を続けてまいりますので、楽しみにお待ちください。
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