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控えめ濃いめはあなた次第

作者: 孤独

「むす~~~っ」

「どうしたんだい、のんちゃん」


いつもの喫茶店にて、店主のアシズムは阿部のんちゃんのご機嫌斜めで、いつものお悩みというか


「お世話って難しいです」

「年上だもんね」

「あの人!ミムラさんは、動物ですよ!!」


これでもかな~り優しい言い方である。のんちゃんの居候させてもらっている、沖ミムラの家。正確には彼女の厄介過ぎる力と、厄介過ぎる人間力。

子供である、というか、小学生ほどの年齢であるのんちゃんが手を妬くほどの人物。


プンスカプンスカした表情で、この暑さを和らげてくれるアイスを食べながらのこと


「冷たい……甘い……美味しいです。これですよね、お菓子というのは」

「どーも。で、どんなことがあったの?」


ミムラは成人したばかりの大学生。とんでもねぇ”天運”の持ち主なのだが、それを台無しにするかのような人間性。いや、クズってわけじゃないんだけど(フォロー)。


「友達なら許せますが、同居人としては厄介です!!ミムラさん、なんとかしてください!!追い出していいですか!?広嶋さんの家に行っていいですか、のんちゃん!?」

「広嶋くんは結構、家を開けちゃうし、ミムラちゃんのお世話を彼から頼まれているじゃないか。困るのは広嶋くんだよ。”天運”の無意識な暴走を止められるのは、のんちゃんだって同類の無意識な暴走がね」

「絶対にミムラさんの方が悪いです!!」


阿部のんちゃんも、沖ミムラも。とんでもない能力の持ち主であり、その暴走状態はあまりに危険なもの。お互いが近づくことで抑止力の働きとなっている。そんな彼女達と親しい=それに近い実力を持っている、広嶋健吾と、この店主のアシズムである。


「聞いてくださいよ!!」


しかし、そんな彼等ですらも人間的な生活を送れば、普通のことに感情豊かになる。



◇        ◇


のんちゃんは小学生であるが、家事万能。だからこそ、家事力皆無な沖ミムラの世話役にピッタリなのである。


「そーです。炒めた野菜の色が変わったタイミングで、醤油を入れましょう!」

「はい!のんちゃん!!」


ミムラもこの家事力をなんとかするべく、のんちゃんにご教授されているわけだが。


ドババババババ


「減塩タイプの醤油だから、沢山入れるねー」

「なにやってんだ、あんたーーー!!」


味覚は一般的な癖に、調理の考え方がゴミ過ぎる。炒めるという行為。初めから高火力で焼き尽くすかのような野菜炒めから始まったので、今更過ぎる事であるが


「なんで醤油に合わせて、量を変えているんですかーー!?こんな大量に醤油入れたら、辛すぎて食べられませんよ!」

「えぇ?でも、この醤油。減塩タイプで味が薄いみたいだし、タップリと量を入れないと、味が着かない気がして」

「ミムラさんはカロリーハーフだからって、3個食うタイプの人間か!?ダメですよ!!その考え方!!太りますし、健康に悪いです!!」

「ガーーーーンッ」


薄味タイプの調味料を握らせれば、大量に入れて味を出そうとしたり。


チョピッ


「これくらいでいいかな?」

「少なすぎるでしょうが!!1滴垂らしただけで、味がつくと思ってんのかーーー!?」


濃い味タイプの調味料を握らせると、途端に量を減らしやがる。


「普通の奴、普通の奴!!」


のんちゃんがキレながら調味料を買い替えて、ミムラに渡してあげれば


「普通ってどれくらいなの?のんちゃん」

「普通だよ、普通!!」


今度は量のイメージがつかないらしく、手が止まってしまう。料理ができないタイプの中では、加減というのがまったく分かっていないタイプ。


「いいですか、レシピの通りですよ!今は調味料の薄い濃いなんて、気にしなくていいです!!甘さ控え目のりんごに、はちみつ1本分をドバドバかけて、召しやがれって、のんちゃんの前でもう一度やったら、24時間料理の特訓です!!」

「それは止めてー!!ひぃー、ごめーん!」


ってな感じに料理の特訓をしていた。

それはその。ここに広嶋が明日やってくるっていうから、料理の1つでも振る舞ってあげるという優しさというか、隠している気持ちというか。


「のん、それはマジで大丈夫なのか?俺、死なないよな?」


とはいえ、広嶋もミムラの家事力のなさを知っている。あいつの料理とか一度食べた時に、色んな意味で死ぬと思った。


「大丈夫です!!のんちゃんに任せてください!!」


そんな彼女の家事力をちょっとでも改善するって、のんちゃんは広嶋の生死を心配して、ミムラに料理を教えてあげていた。

しかし、かな~り後悔していた。ミムラの覚えの悪さはハンパじゃない。”天運””任せのツケか、家事力が皆無過ぎる。



チリンチリン


そして、広嶋がやってきたわけだが。


「どわーーー!!広嶋くん、もうちょっと待ってーー!」

「……………少し手伝う」

「いやいやいや!のんちゃんとミムラさんに任せてください!広嶋さんは休んでてください!!」


やっぱり、自信がないのか。いや、しかし。ミムラに為にはならないと、広嶋も思ってのこと。予定よりちょっと早く来たのは、彼女が調理している姿を見ておきたかった。ヤバい調理してたら逃げる。

しかし、ミムラとのんちゃんはそこで頑張った。

いや、普通通りだが、それが非常に難しかった。


白いご飯にお味噌汁に、卵焼きに、焼き魚に、お手製のたくあん。(のんちゃん作)

そして、ミムラの野菜炒めである。


「「どうぞ、召しあがれー」」

「じゃ、いただく」


パクッ


◇        ◇


「へー、それで広嶋くんは死んじゃったの?」


違う違う。生きてる生きてる。お前も知ってるだろうが!

アシズムの冗談に対して


「美味しいって言ってましたよ。残念ながら」

「それは良かった。ミムラちゃんも腕をあげたんだね」

「教える先生が良かったんですよ!なのにあのミムラさんと来たら」



『好きな人の事を想って作ったから、うまく行ったんだよ!!また来てよ、広嶋くん!!』



サラッと広嶋に告白しながら、誘いまでしちゃうし


『……気が向いたらな』

『じゃあ、私も気が向いたら、広嶋くんと旅に行くからね!連れてってよ!!』

『ええっ!?』

『ここはのんちゃんに任せて大丈夫だし!火の元はのんちゃんの方がしっかり見てる!!』

『アシズムからの依頼次第で考えておく。……のん、悪いが』


この家。しばらく、お前が好きにやった方が良いと思うからな。

要らないモノとかお前が整理してくれ。

ミムラは俺がちょっとの間、連れていくからな。


『やったーーー!!デート、デート!』

『ちょっとーー!!広嶋さん!!のんちゃんだって、広嶋さんといたいです!』

『じゃあ、次な!次!のん!それは約束するから』



という感じで…………



「のんちゃんこれから、……ミムラさんの部屋の整理整頓と家の大掃除です。一人暮らしやらせたら、ホントに物を溜め込むタイプだから……”天運”で豪華賞品当てまくって、不必要なモノが押し入れの中に……」

「そ、それは確かに。ミムラちゃんが家に居ない方が絶対に捗るね」

「生活習慣や物欲までも、しっかりのんちゃんが見ておかないと、ダメ人間になります!あの人!」





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