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4年2組幽撃係!!

作者: A-10

大倭州(やまと)国。

そこは様々な人種が住む国。

そして妖もいる国。


この妖たちには兵器が通用しない。

有効的なのは霊力だ。

霊力を込めれば武器も効く。


この大倭州国は、100年に一度大きな鬼門が開き、妖が大量に増える。

そうすると、人間を食料(肉などを食うわけではなく、内部の生命力を吸いとられる。人の魂が食料)とする妖のせいで人口が激減する。


妖を討伐するにも霊力ある者は限られている為、幽撃士は少ない。


霊力のない者でも身を守る為に道具は必要だが、高価で持っている者は少ない。

しかし、優先的に支給される者がいる。


それは、学校のクラブ活動者、幽撃係である。


人口の減少を食い止める為に子供は守るべき対象だ。

しかし、大人では手の届かないところもある。


そこで幽撃係がつくられた。


子供同士で助け合う。


その幽撃係だが、危険を大きくはらんだ係の為、全く人気がない。



そんな中、4年生に進級した沖田直之は今時珍しい子供で、やる気満々の少年だ。

すぐに手を挙げ、係が決まった。


幽撃係は、4年生から危険な任務が始まる。

親からの同意書と、役所への届け出も必要。


直之の他に2名が係に採用された。


図師ずし 麻尋まひろ。彼女は幽撃の大家、図師家の嫡子で、係に入ることが義務づけられている。才能ある者は否応無しに入れられる。


伊沢トシヤ。彼は遅刻してきて、残っていたこの係にされた。いつも通りに家を出たが、なぜかトラブル続きで結局、遅刻。実は、トシヤはハメられていた。幽撃係になるよう仕組まれたのだ。これを仕組んだのは老人二人。トシヤに強くなってもらうためだった。伊沢も図師と同じ大家だったが、今は断絶状態だ。

伊沢の血筋は、1人の少年だけだ。


この世界には護り神というものがあり、大家の出の者は、そのほとんどがその身に宿している。


あやかしと妖怪は別物。

妖怪は迷惑しているので、交渉がうまくいけば仲間になってくれる。

その時、媒体が必要になる。

封魔の効果があればなんでもよい。

主流は、カードやふだ、数珠などである。(ふざけた者は、変な物に入れている。仲間の妖怪ともめたりする。「貴様!私をこのようなモノに入れるでない!(ふだ)にしろ!」「なんだよ。これだって札みたいなもんだろ」※グラビアアイドルのきわどい水着のポラロイド写真に入れられていた。これだったら間違って捨てないらしい。)


基本的に護り神は継承するものであるが、ごく希に造り出す者もいる。

クラブ活動開始。


先生からアイテムを支給される。


マヒロは霊力アップペンダント。

ナオユキは多機能腕時計。

トシヤは万能ゴーグル。


そして3人共、幽撃係バッチが支給される。

妖がいると報せてくれるのだが、マヒロとトシヤは感覚が鋭い為、無くても大体わかる。

ナオユキ1人だけが、「カッケェー!」と興奮するも、マヒロは「ダサい」と文句を言う。


そんな時、バッチがはやくも光りだした。

どうやら妖が現れたようだ。

「?」

マヒロとトシヤは警戒する。

(妖の気配が感じられない……)


校舎内に出現する訓練用の妖には霊力がない為、たとえ幽撃の才能があろうとも、まだ子供には感知することが困難だ。

「先生、これ壊れてない?」


そんな彼らを後目に、ナオユキは部屋を飛び出してしまった。

その先には数体の妖がおり、ナオユキ目がけて飛びかかってきた来た!反射的にマヒロが護り神を出して助けた。

マヒロの護り神は『風』(ふう)という名で、猫と狐の間のような外見で可愛いのにクールな目元が印象的な風属性だ。

ナオユキに襲いかかった妖は訓練用の妖なのだが、攻撃してきたのは予想外だった。

後ろで見ていた先生は、感心したようにマヒロをあやしく見つめた。

その後も学校中の妖が、ナオユキばかりを狙ってくる。



そしてとうとう学校の校庭に大型のの妖が現れ、大暴れし始めた!


この妖は、元は学校の守り神だったが、学校周辺の霊力が異常に減少し、無理に霊力を吸収しようとした結果、負の霊力ばかりを取り込んでしまい、暴走に至ってしまったのだった。


鬼門が開いている今、自然霊力は不安定なのだ。


*  *  *


近所の中学校の幽撃部所属のフジマキとトキタは、地域巡回中に大きな霊力消失を感じ、小学校へ駆けつけた。


そして小学校の屋上から、小学生達の戦いぶりを観ていた。


校庭に一番に駆けつけたのはナオユキ。

校庭のベンチで自分の不甲斐なさを反省しつつヘコんでいたので、すぐに行くことが出来た。


駆けつけたのはいいが、戦うすべがない。

校庭にいた生徒を庇うナオユキだが、やられそうになる。


次にマヒロと先生が駆けつけた。

マヒロは風を使役し、ナオユキを助けるも、先生共々邪気にあてられ倒れる。


これは、本当は邪気にあてられた訳ではなく、ナオユキに自発霊力を吸い取られたせいだった。


学校周辺の霊力低下現象もナオユキが原因だった。

妖は何がなんだか分からず、ナオユキを襲う。


トシヤは重い腰をあげ、心を奮い立たせる。

そして校庭へと走り出す。


護り神を出す為の精神集中を走りながら行う。


精神で護り神と会話する。

“小僧。いいのか?ワシを出幻しゅつげんさせれば、おヌシの出自が問われるやもしれぬぞ?”


「……いいんだ。力を貸してくれ…ー」


「“雷獅子”(らいじし)!!」


ドーーーンっ!!

雷光轟かせ、トシヤの護り神・雷獅子がその姿を現した。


雷に包まれた護り神を出幻させたトシヤ。

マヒロの護り神・風よりも大きく、圧倒的な力を見せる雷獅子。


意識のある者たちはその堂々たる出で立ちに、目を奪われる。


雷でトシヤ達を守りつつ、攻撃を繰り出す雷獅子。


しかし、トシヤは膝を付き呼吸が荒くなる。

“どうした小僧!力が減っている!これでは力が出せん!”


トシヤもナオユキに霊力を吸収されてしまった。


「まずいな……助けるぞ」

「……たりぃな」

屋上から飛び降り、校庭へと向かう二人。

「トキタ、まかせたぞ」

「……へいへい」


先生、マヒロ、トシヤを救出するフジマキ。

トキタは妖を牽制しつつ、ナオユキを助けようとする。この時、トキタがナオユキに霊力を奪われなかったのは、ナオユキの霊力量が臨界点に達していたからである。


ナオユキの中で何かが起ころうとしていた。



校長室では、校長がイライラしながら誰かを待っていた。

空間が歪み、眼帯をした1人の男が現れる。

「遅いぞ!何をしておった!」

吠える校長。


「……申し訳御座いません」

「ショウセイ、あの妖を排除するんじゃ!」

「……よいのですか?元は守り神ですが……」

「あれを元に戻すのは無理じゃろ。やってくれ!」


校長は、プロの幽撃士に救助要請を出していた。


「……心得ました。直ぐに……」

(その方がやりやすいか……)


*  *  *


「チッ!ガキをかばいながらだとヤりづれぇな!」

トキタは苦戦していた。

フジマキは3人を屋上へと連れて行っている。


そんな中、突然…結界が張られ、妖は封じられる。

「…………」

動きが止まるトキタ。

視線の先には、ショウセイがいた。


*  


学校校舎内では、学校七不思議で有名な花子さん達が心配そうに話している。


都市伝説の怪人達も妖には、お手上げだった。


今では人間に恐れられることが減り、人間に化けながら…ひっそりと暮らしていた。


これらの所謂、妖怪などに分類される物の怪どもは交渉術で仲間になり、カードなどに入る。

使用者の力で強さも変わる。

妖怪にもランクがある。噂などで探し当て、交渉する。

妖怪によって交渉術が違ってくる。

無理やり仲間にして成功するパターンもある。


怪人系で仲間になってくれる例は…

・切り裂きジャック

・エルム街の悪夢

・13日の金曜日

・赤マント

など…


*  


ショウセイを見て、驚くトキタ。


しかし直ぐに、

「おい、ガキ!行くぞ」

トキタはナオユキの襟首を掴み、引きずって連れて行こうとする。


それをショウセイが止めた。

屋上にいる人々からは校庭の様子が砂埃で見えない。

霊力が充分にあれば感知できるが、それもままならない。


「……なんだよ」


「その子供はおいていけ」



屋上へ戻ってきたトキタ。

トキタは、トシヤに目を留めると、


「!!?」


「おっ…おいトキ…タぁ!?」

嫌な気配を感じたフジマキは、慌てて動くが……遅かった。


小学4年生のお腹に強い一撃を放った。


腹に強い痛みが走ったかと思った刹那に、トシヤの意識は暗闇へと落ちた。


気を失ったトシヤを見てフジマキは絶句する。

意味が分からない!

怒るフジマキにナオユキを投げて寄越すと、トキタは姿を消した。


…トシヤを殴ったのは、見通す能力が強い万能ゴーグルを恐れてのことだった。



校庭には気を失って倒れているナオユキがいる。

トキタがショウセイに殴りかかる時に、勢い良く放り投げたので気を失ったのだ。


ショウセイの顔には殴られたあとがあり、口内を切った為、口から血が出ていた。


トキタに自分を殴らせることで、いうことをきかせたのである。

屋上にいるナオユキは偽物だ。


ショウセイはナオユキを起こす。

突然目の前に、口から血を流した無表情の男が現れたので驚くナオユキ。


そしてセイショウに無理やり結界内に放り込まれてしまった。

結界内には暴走していた上級の妖がいる。

こんなところに入れられたら確実に死んでしまう。


ショウセイは……ナオユキを殺そうとしていた。


しかし、その前にナオユキに護り神を造神させようとする。


造神とは…

護り神を持たない人間で、霊力が高い者が様々な条件を満たすと、低確率で護り神を造り出す。当人は無意識で行う。気が付いた時にはいつのまにか自身の中に宿っている。

命の危機に、幽撃の資質がある者は造神率が飛躍的に上がる。


この世界での幽撃とは……妖を撃つことをさす。


ショウセイは、ナオユキ達を助けに来た訳ではなかった。

別の任務で来たのだ。

そのことを校長は知らない。


ショウセイの任務は、ナオユキに造神をさせた後、殺すというものだった。


彼の所属する派閥は、強硬派で、混乱に乗じては各地で造神狩りをしていた。


造神の現象を報せるものは、霊力の異常消失である。

消失し始めると、バランスが崩れるので必ずトラブルが発生する。

それに乗じているのである。


護り神を手に入れると同時に、自分達の権威を脅かす危険因子にも成りえる者を排除する。


そして……

ナオユキは、造神した。


妖ごとナオユキを殺そうとするショウセイだが、ナオユキの護り神をみて手が止まる。

「この……護り神は……」

動揺を隠せない。


ショウセイの動きが止まったせいで、妖がナオユキ達に攻撃してくる。

しかし造神されたばかりの護り神が、ショウセイの結界ごと妖を消滅させる。


凄い力だ。

ナオユキを殺すことと、護り神を捕まえるタイミングを逃したショウセイ……。


*  


屋上では……


「!」

「自然霊力が戻ってきた」

急いで治療術を施すフジマキ。

しかし、

「駄目だ。体内霊力が減り過ぎている。……治療術をもっと勉強していればよかった……」


マヒロ達は自発霊力を生成するのに必要な霊力すら無く、フジマキがいくら治療術をかけても、ザルのように流れてしまう上に、回復量が全く足りなかった。

そんな中、突然…通信術の回線が繋がる。


「あー、テステス。マイクテス。あーあー、フジマキ聴こえるか?」

「部長!」

フジマキはこめかみに指をあて、通信術の霊波を安定させ、応える。

「はい、聴こえます」

「トキタから聞いた。今イモコ向かわせたから」


「はい。助かります」

部長の声が途切れた代わりに少女の声がすぐ後ろから聞こえて来た。


部長の転移術で、イモコと呼ばれた少女が到着した。

「フジマキくん……ひどーーい……」

「うわっ!」

幽霊のように現れたイモコに驚きの声をあげる。

「なんでイモコで私って分かんのさ……」

明るい大きな瞳を細めながら、恨めしく言う。

「ご、ごめん」

イモコは負傷者に目線をやると、

「……この人達、治療すんの?3人か」

と、いつもの明るい調子で腰に手をやる。

「いや、4人だけど……」

「?」

「いやいや、3人だよ?ひとつ身代わり札が混ざってるけど」


イモコは霊力感知に長けている為、すぐに気づいた。

屋上にいたらトキタに殴られていたかもしれない。

奴は、女子供に容赦がなかった。


「えっ!?全然分かんないぞ!?」

(今日はヘコむことばかりだ……)


「しょうがないよ。この子らとは初めて会うんだし。それにしても……いや~、すごいクオリティ高いなぁ。これはかなりの術者だね?フジマキくんじゃないの?」

偽物のナオユキをみながら、ニヤニヤと嫌味を言うイモコ。

「……お前、根にもつタイプだな……。それよりもはやくこの人達を!」

「おっと、そうだった。あらー、これはヤバいですなぁ。霊力がほぼ無いじゃん!フジマキくん!この人達、死ぬところだよ!ウケるっ!」

アハハと笑い出すイモコ。

「笑ってないではやくしろっ!!」

(部長!なんでよりにもよってイモコを寄越すんですかっ)


笑いながらも回復術を施すイモコ。

イモコという名はあだ名である。

霊力感知は、個人特有の色や属性などがあり、判別するには初見ではよく分からない。

家族や仲間であれば、感知能力を使わなくても気配などで分かるが初対面だと分かりにくい。


イモコは術をかけながら、校庭の方を気にしていた。

そして小声でボソッと、

「ショウセイさん大丈夫かなぁ…」

と呟いた。

「……おい、イモ。どうだ?」


頭の中から部長の声が届く。

霊力周波数をイモコにだけ繋いでいる為、フジマキには聴こえていない。

イモコはこめかみに指をあて、声にださずに応える。

「ぁあ!?うっせーんだよ、クソがっ!イモイモ言いやがって!てめーぜってぇーいつかぶっ殺す!」

「……いつでもどうぞ。ショウセイさんどうだ?」

「霊力に異常なし。でも今回は簡単にはいかなそうだな…周辺自然霊力の消費が尋常じゃない」

「まぁ、ショウセイさんなら大丈夫だろ。……フジマキに気取られるなよ」

「ふっ。フジマキくんはけっこー鈍いから大丈夫だって!」

「いや、あの計画を穏健派にバレるとまずい。心しろ」


「……私も穏健派に生まれたかったな……」

「ま、気ぃー抜くなよ~。じゃな~」

ぶつっと回線が切られた。


イラッとしたイモコは、思わず叫ぶ。

「ぬう゛を゛お~っ!!あんっの、クソ女っ!!」

フジマキは、部長とイモコの性格が合わないことを知っているので驚かないが、

(部長と何を話していたんだ…?)と、そちらの方を気にしていた。しかし、

(いつものようにイジられたんだろうな)と結論づけた。


*  


「リュートっていうの?」

「うん。君は?」

「ボクはナオユキ」

「じゃあ……、ナオ君だ!」


(これが……リュート……宿主が変わると……こうも違うのか……)

目を見開いているショウセイ。

「ていうか、リュート、超カックイイね!」

「えっ!そうかな~?へへへ」


リュートと名乗った護り神は、風や雷獅子と違い、人型に近い。

生まれたての護り神はその殆どが不安定の中、リュートは安定している。

これは高位の護り神の証拠である。

二人ナオユキとリュートが話していると、イモコ、フジマキ、校長、先生、トシヤ、マヒロがやって来た。

その時、ショウセイの姿は既になかった。


イモコは密かに、ショウセイの身代わり札をポケットにしまう。


マヒロはリュートの存在に違和感を覚えるが、先生は気にしすぎだと言う。


先生にリュートのしまい方を聞くナオユキ。

時計を使うと聞き、袖をまくり時計を出すと、驚くリュート。


そしてこっそりと姿を消してしまった。


「あ、あれ?リュート!?」

ナオユキはキョロキョロする。

そして、青くなるトシヤ。

護り神が宿主から離れるなんて!


ナオユキはというと、落ち込んでいた。


イモコとフジマキは中学校へと戻り、校長はショウセイの悪口を言いながら、プリプリと怒っていた。校長は年齢不詳で見た目が若いが、どことなく只者ではない雰囲気をまとっている。しかも、男のような見た目だが、実は女ではないかとも言われているナゾの人物だ。身長は140㎝あるかないか位の小ささで濃い目の顔にセミロングのそとはねヘアーをしている。かなりギャグ的な見た目をしている為、破天荒に見られるが、性格はいたって真面目で少し短気な位で、とても良い校長である。


4年2組の幽撃係のスタートは、嫌な感じで始まった。

護り神のいないナオユキは、妖怪などのカードで戦うことになるが、当面は仲間にする作業で時間を費やすことになる。


5,6年生は別任務で校外に出ていたため、学校にはいなかった。


・・・・・・・・・・


ショウセイは自身の主へ、事の顛末を説明する。


ニヤリと笑う主人。

そして呟く。

「リュートが再び出幻するとはな……。必ずや手中に収め……。しかし、やはりナオユキの方……。」


主人の目は良く手入れさえた日本庭園の遠くを見ていたが、瞳のその奥はその先をずっと見据えていた。


・・・・・・・・・・


100年に一度の鬼門が開く1年。


この悪夢の1年を“起神祭”(きしんさい)と呼ぶ。


この起神祭を楽しみにする者もいる。

それは手柄をたてるチャンスでもあるからだ。

正規の幽撃士がいれば、無法の幽撃士もいる。


幽撃士に憧れる少年・ナオユキの戦いの日々が、これから始まる…。


*  *  *


妖・護り神は…元は人間である。


(人柱などにされた者が長い年月を経て護り神になる。即身仏のように。邪の気に囚われると妖になる。)


妖怪は…差別された人間の悲しみと怒りである。


都市伝説は…人間が娯楽の為に作った噂話である。


そして…その全ては人間が利用するのである。


幽撃総長・伊沢直之


…ナオユキは、ある出来事をきっかけに伊沢を名乗ることになる。

妖怪カードを手に入れる為に花子さんのところに行くと、先客がいた。


鹿島かしま 虎男とらお


同じクラスの少年だ。

長めの前髪が特徴的で、なかなかイケメンでスタイリッシュな格好をしているが、金持ちではない。

クラスでは少々ういている。

彼の挨拶は、「チャオ」。

女の子が大好きで、飼うペットは全てメス。


トラオは花子さんをナンパしていた。


花子さんは思っていた姿とは違い、スッゴく可愛い。

ナンパされたことのない花子さんは、かなり照れている。


そして、いなくなるトラオ。


ナオユキ達は、すかさず花子さんに声をかける。

しかし、花子さんはトラオが気に入ったようで、交渉は失敗する。


後日、廊下でトラオに会った。

隣には見慣れない可愛い女の子を連れていた。

ゴーグルをつけてるトシヤが気付く。

「てけてけだ……」

「ぇえっ!?」


トシヤの“てけてけ”発言に、右眉をあげ不快な態度を露わにするトラオ。

「何を言ってるんだ。こちらの女性は“てけ子さん”と仰るんだよ」

と、てけ子を紹介するトラオ。

「てけ子!?てけ子って……完璧てけてけじゃんっ!名前に出てんじゃんっ!」

てけ子を指差してナオユキは騒ぐ。

マヒロはナオユキの指を手のひらで、思い切りおさえ、


ぐきっ


嫌な音がした。


「指さすな」

と、注意する。

「ぐうわぁーーっ!指っ指ぐぅわーー!」

今度はナオユキの口をおさえ、

「うるさい」

と、注意する。

「んーーっ!んもーーっ!」

ナオユキの目は血走り、なんだかヤバそうだ。

「ま、マヒロちゃん!ナオユキくん死んじゃうよ!」

トシヤが急いでマヒロの手を掴み、ナオユキの口と鼻を解放してやる。

「だっはぁっ!こっ殺す気かぁっ!」

「だからうるさい」

ナオユキに手を伸ばすマヒロの手をおさえて、

「マヒロちゃん!逆効果だからっ」

と、トシヤがいさめる。

「君たちのコントに興味はないので、チャオ!」

と去りながら、


「……えっ…、てけてけってホント…!?」

と、てけ子に訊ねるトラオ。


頷くてけ子。

彼らの後ろ姿に向かって、

「どぅわぁーっ!やっぱしっ!」

と両手で握り拳をつくりながら叫ぶナオユキ。

動こうとするマヒロを牽制するトシヤ。


どこからどう見ても、可憐な少女のてけてけ。

ナオユキは思った……。

そこらへんの女の子よりも妖怪の方が可愛いなんて!


驚くトラオだが、すぐに

「妖怪でも構わないさ!君は本当に美しいよ!」

頬を赤く染めて、照れるてけ子さん。


その後、事件が起こりトラオがピンチになる。

彼の為に花子さんとてけ子さんが手を貸す。

トラオには特殊な才能があるらしく、花子さん(火属性)とてけ子さん(氷属性)を自身の中に降ろす。

そして力を発揮する。

見事、妖を撃退することに成功する。

しかし、花子さんとてけ子さんの姿が見当たらない。

トシヤがナオユキのカードが光っていることに気付く。

花子さんとてけ子さんはカードの中に入っていた。


やったぁ!

と、喜ぶも……

トシヤにツッコまれる。

「喜ぶのは早いんじゃないかな…?」

「えっ、なんで!?」

トシヤはカードのある部分を指さす。

……カードには、『トラオ限定』と書いてあった。

「なんでだよっ!ボクのカードなのにっ」

しかしナオユキは嬉しそうな顔をしている。


3人の熱い視線がトラオに注がれ……

「え?」

トラオはキョトンと3人を見る。


「トラオくん。ボクらと一緒に幽撃係やってくれたら、いつでも花子さんやてけ子さんに会えるぞ」

と、誘うナオユキ。

「え?マジ?じゃー、やろっかな♪」

「かるっ!」

驚くトシヤ。

「よし!ほらよ、このカードね」

トラオにカードを渡す。

「OH!マイ・スウィート・ハニー達!」

受け取りながら喜ぶトラオ。

「……トラオくんが仲間になるとは……少し不安もあるなぁ……」

一人つぶやくマヒロ。

「トラオくん、保護者に確認取らなくていいの?」

と訊ねるマヒロ。

「その辺は大丈夫。早速、職員室に行ってくるよ。

チャオ!」

歩き去るトラオ。

「なんで職員室??」

首を傾げるナオユキ。

「係かえるんだから先生に言わないと」と、マヒロ。

「教室で先生に会った時に言えばいいじゃん」

「幽撃係だけは名札のデータチップに情報いれる義務があるから、データの上書きに行ったんだよ。それは職員室に行かないと出来ないから」

マヒロの説明にトシヤは続く。

「幽撃に携わっていると、ある程度の融通がきかないと行動し辛いもんね。名札のデータをスキャンしてもらえば、病院でも優先して診てもらえるし、重要だよ」

「そ、そうだったのか……。めっちゃいいじゃん、それ……。なんでみんな嫌がるのかな?」


暗い表情になるトシヤ。

「ナオユキくんは……死ぬの恐くないの?」

「えっ?何、突然。よく分かんないけど、全然こわくないよ!ボク死なないし!」

「嘘ばっかり。ショウセイに殺されかけてチビってたじゃん」

「えっチビったの!?」

嬉しそうな顔でナオユキを見るトシヤ。

「……なんで嬉しそうなの…?」

切ない顔でトシヤを見るナオユキ。

「あっ、ゴメン!アハハ」


「……そっかぁ…確かにアレはこわかった…けど、ボクはいっぱい頑張るしっ!」

高く腕を掲げるナオユキ。

「………ナオユキくんは凄い…な…」

聞こえない位の小声でつぶやくトシヤ。

「トシヤくんはそのままがいいよ。無理とかしたらダメ」

「マヒロちゃん……オレは変わりたいんだ……」

「トシヤくん……」

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