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第18話 翠嵐の刃姫 ザフィロナ(後編)

「はぁ!」


悠斗が手甲剣を突き出す。ザフィロナはそれをかわし、距離を取る


「やあぁぁ!!」


その隙に里音は一気に間合いを詰める。ザフィロナは風の刃を放つが、龍香の盾に防がれる


「甘い!」


悠斗は手甲剣を振り回し、ザフィロナを攻撃する。しかし、ザフィロナも素早く反応し、風を操りながら応戦する。両者の戦いが激しくなりつつある中


「……っ!?」


龍香はザフィロナの風の刃で切り裂かれ、ダメージを負っていた。それを見て悠斗は叫ぶ


「里音!僕ごとやれ!」


「……っ!」


里音は躊躇する。しかし、すぐに決意を固める


「わかりました」


里音はレイピアに雷を纏い、構えた。そして……


「……行きます!!」


一気に駆け出す。そのスピードは凄まじく、瞬く間に間合いを詰めていく


「(早い!)」


ザフィロナは反応しきれずに、里音の一撃を受けた。その衝撃で吹き飛ばされるが、何とか踏みとどまり、反撃しようと試みる。しかし


「やあぁ!」


龍香の盾により阻まれてしまう。今度は悠斗が手甲剣を構えて接近してくる


「はあぁぁ!!」


ザフィロナは慌てて距離を取ろうとするが間に合わない。手甲剣の刃が彼女の身体を捕らえた


「……っ!」


「喰らえッ!」


だが、その瞬間──ザフィロナはしなやかに体を捻り、悠斗の攻撃を回避


「悪くない動きだけど……少し単純すぎるわね」


しかし、それこそが罠だった。悠斗の攻撃をかわした瞬間、ザフィロナの背後に里音が姿を現した。彼女はすでに計算済みだったのだ


「動きは読めています……!」


彼女は冷静に距離を詰め、ザフィロナの背後を狙う!


シャッ!


レイピアがザフィロナの腕をかすめる。わずかな傷だが、確実に手応えを感じた


「……ふぅん。なかなかやるじゃない。」


しかし、ザフィロナは笑みを浮かべたまま、軽く指を鳴らす。次の瞬間、周囲の風が激しく渦巻き、空気が震えた。ザフィロナの特殊能力の一つ【翠風刃舞】。両腕の腕輪を用いて高速で風の刃を生成し、連続的に射出する技。一点集中攻撃から広範囲攻撃まで自在に使い分けられるのだ。まるで嵐の中心に立たされたかのような圧力。ザフィロナの手が舞い、無数の風の刃が彼らに襲いかかる!


「今度はこちらの番よ!」


風の刃が狂ったように乱舞し、悠斗と里音を狙って飛んでくる。悠斗は手甲剣を振るい、一部の刃を弾くが、完全に防ぐことはできない


「クソッ……!」


一方、里音は迅速に身を翻し、風の刃を最小限の動きで回避していく。しかし、一筋の刃が彼女の頬をかすめた


「っ……!」


血が一滴、地面に落ちる。しかし、彼女は動揺を見せず、再び構え、攻撃を当てる


「クッ……!」


ザフィロナの浅い傷を負わせ、さらに風の刃の威力も落ちていった


「(私が、ここまで追い詰められるなんて……!)」


ザフィロナの動きには、明らかに焦りが見え始めていた。それもそのはず、風を操る力は瞬発力に優れるが、長時間の戦闘では魔力消費が激しく、持久戦になると徐々に力を失うのだ。


「こうなったら、この技で消えてもらうわ!!」


軽く腕輪を叩いて魔力を集中させる。腕輪から凄まじい風の刃が生成されるザフィロナの腕輪が鮮やかな緑色に輝き、風の刃が弧を描きながら飛び散る。空間が割れたように無数の風の刃が生み出される。それはただの風ではなかった。鋼をも容易く切り裂く暴風の剣──


「喰らいなさい!《テンペストエッジ》!!」


竜巻のような風圧が周囲に吹き荒れ、無数の風の刃が彼らを襲う。周囲の建物が次々と切り裂かれ、地面すらえぐられていく


「死になさい!!」


ザフィロナの風の刃が彼らに迫る──!


「(……)」


里音は迫りくる風の刃を冷静に視認する


「(これなら!!)」


その瞬間、里音もまた素早く動いていた。里音はザフィロナの攻撃の間隙を見抜き、最小限の動きで回避していく。修行によって鍛えた動体視力と自慢の頭脳による洞察力が、この瞬間に最大限発揮された


「……能力を借りるぞ!ドゥルガニス!」


悠斗は素早くデバイスを取り出す



『スキル・ドゥルガニス』


音声と共にディバイスが再び強い光を放つ。次の瞬間、無数の風の刃に襲われるが、ドゥルガニスの能力の一つである硬化強化が発動したため、ほとんどダメージを受けなかった


「……私も負けない!!」


ズバァァァンッ!!!


龍香の盾が真正面から風の刃を受け止める


「そ、そんな……」


ザフィロナは息を切らしながら、攻撃が防がれたことに驚愕していた


「私の技が防がれた……!?」


彼女はまさかの事態に動揺を隠せなかった。そのわずかな隙を、里音が見逃すはずはなかった──!


「……決めます!」

ザフィロナが驚愕の表情を浮かべた瞬間、すでに里音の姿は彼女の視界から消えていた。いや、正確には──高速移動により、目で追えなくなっていた


「な……っ!?」


ザフィロナの周囲に雷が散り始める。里音のレイピアが雷を帯び、微かな稲妻が刃先を走った


「……」


静寂の後、一瞬で全てが動き出す。


雷閃迅影らいせんじんえい!!」


雷を纏った里音の細身のレイピアが、一瞬で空を裂いた


バチィンッ!!


雷の衝撃音とともに、里音の姿が閃光となって駆け抜ける


シュババババババッ!!


凄まじい速度で繰り出される十数回の連撃──風を切る鋭い音が響き渡る


ザフィロナは防御を試みるが、強力な技を発動しに、ザフィロナ自身の魔力を大きく消費し、動きが鈍った上に、彼女の動きは完全に里音の速度に追いついていなかった。雷の軌跡が交錯し、彼女の身体に無数の切り傷が刻まれていく



「がっ……!? ぐぅっ……!」


最後の一撃、里音が静かに間合いを詰めた瞬間──


──ズバァッ!!!


突き抜ける刃とともに、体内で雷が炸裂した


「ば……馬鹿な……」


凄まじい電撃がザフィロナの身体を貫く。彼女は痙攣しながら後ずさりし


「……この私が……こんな……!」


彼女は膝をつき、虚空に向かって手を伸ばす


「賢者様……申し訳ありません……私は……お役に立てませんでした……!」


その言葉と共に、ザフィロナの身体は光へと変わり、風に溶けるように消え去っていった。まるで、最初からそこにいなかったかのように──


「……ザフィロナ」


ザフィロナが消えた空間をじっと見つめる悠斗


「……勝ったのね」


風が止み、静寂が戻る。龍香は息を整えながら、盾をゆっくりと下ろした


「ええ……」


里音は静かにレイピアを収めた


「……勝ちました!私たちの勝利です!!」


彼女の表情は普段と変わらないように見えたが、その表情は安堵に満ちていた

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