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Wall Riran  作者: 中草 豊
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〜信じる物〜

鬼黒神敬司─

effeuillerの将校にまで登りつめた日本人。


そんな、戦いの権化とも言われた男の信じる物とは、一体なんだろうか─!?

【回想録】


『へい!貴様らはこの部隊に、何を求めて来た!』


新入隊試験前に、必ず教官から声を掛けられる言葉である。

その質問に、答えを求められるのだ。


夢を追い、最強の噂を聞き、自らの限界を超えたいから、自信があるから─。


挑戦する理由は様々だが、試験に臨む隊員候補生達は必ず、先輩や教官から罵倒され、否定され、(さげす)まれ、見下される。


入隊試験には肉体の強さはもちろんだが、それだけでなく、精神的な強さもまた、必要とされていた。


鬼黒神も、例外ではなかった─


極東の猿が迷い込んだ!と、笑われ、体が小さい!と、バカにされ、受かるわけないだろう!とまで、言われた。


それでも、何を言われても合格してやる!

と、言う負けず嫌いに火がついた。


だが、いざ入隊試験を受けてみると、思っていた程キツくはなかった。


鬼黒神の試験内容を見る度に、嘲笑(あざわら)っていた先輩達の顔から、少しずつ笑みが消えて行った。


これなら、行ける─!

俺なら、大丈夫だ!


自信にも繋がった─


合格発表が待ち遠しくさえ思えたものだった。


鬼黒神敬司は携帯電話はおろか、"電話"を知らなかった。

初めて携帯電話を見た時には、何かこの世のものではない様な、不思議な感覚に陥った程だ。


敬司が5歳になる頃に、父から告げられる。

山奥での修行がこの先、生きる事に必要になる!と、言われ2人で山篭りを開始した。


元々軍人を目指し、軍人を崇拝し、サバイバル生活を続けた父にとっての生きる事とは?

を、幼い頃から、徹底的に叩き込まれた。


肉を喰らいたければ(ほふ)らねばならず、魚を喰らいたければ、捕まえるしかなかった。

蛇、鳥、猪、熊、とも自らが生きる為に、また、喰らう為に屠って来た。


だが、そんな鬼黒神少年にとっての人生の師でもあり、最愛の父親は12歳を迎える頃、病気でこの世を去った。


ならば、病気にも負けない体を作る事!

を目標に鍛え、サバイバル生活を続け、世界を知る為の旅に出た。


その旅の過程において、"effeuiller"を知る事になる。


自身の求める【最強】とはなにか?

を体現している部隊であり、いわば自らの追い求める【答え】がそこにはあった。


だから、どれだけ罵倒されようと、どれだけ笑われようと、どれだけ蔑まれてもどうでも良かった。


他人の評価など、気にしてなかったから─

父の為、また、自分の為に!


その為に胸を張って、教官の問いに答えた。


『最強になる為です!』


1ミリも自身の答えに、迷いなどなかった。




┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈




【現代へと戻る】


自身のデスクの上で、パソコンで開きかけの作戦資料画面が光っていた。

遠い昔にも思える、入隊試験の頃を思い出していた鬼黒神中佐。


『……佐……中佐!』


レイノルド中尉から声を掛けられ、ハッと我に返った。


(なぜ、今この様な事を思い出しているのだろうか?)


ふとした疑問が頭をよぎったが、考えない様に部下に向き直す。


『どうした!何かあったか?』


部下の前では珍しく、ボーッとしていた鬼黒神を(いぶか)しむ様子で見ながら、何かを言いたげな顔をしながらデスクの前に立っていたレイノルドは、いつもとは少し違いボソボソと、話し始めた。


『クインシー少尉と、ユーラ少尉が出掛けており、まだ帰隊(きたい)していない模様でして。その他小隊は準備が間もなく整うかと思うのですが…。』


レイノルドのこんな様子も珍しい。


フッと軽く笑い飛ばすと、部下にいつも通りの指示を出す。


『ボーッとしていたのは、俺のミスだ。だがな?中尉!心配は、いらんぞ!それに、もっとハッキリ話さんと、俺には聞こえんだろうが?…で、連絡は取れたのか?』


ニヤニヤしながら軽く意地悪をしつつ、聞こえて来た内容から返事を返す。


コレでも、地獄耳と言われているのだ─

耳の良さでも群を抜いている自信はあった。


その返答で、いつも通りの隊長と受け取ったレイノルド中尉から、まだであります!

と言われたものの、この時間に帰隊していないのも珍しい話だと思った。


射撃訓練と称して森の動物達を狩る、銃器ヲタクのクインシーならともかく、パソコンヲタクであり、基地の外へと滅多に出掛けない事でも有名な、インドアの権化とも言えるユーラが居ないとはな。。


少しばかりの胸のざわつきが襲ったが、気にも止めて居られない。


なぜなら─

出発までの時間も限られていたからだ。


クインシー小隊、ユーラ小隊にも出発準備をさせる様に指示を出しつつ、鬼黒神は作戦資料画面に目を落とした。


どこから、攻略するべきか─?


その【敵の穴】とも言うべき場所を探すのにも、ユーラの力が欲しかった。


案外一筋縄では行かないのかもな─


ふと、そんな想いが脳裏をかすめる。


だが─

確かな確証はあった。


鬼黒神の場合は特に、人間と言うよりも、まさに野生の獣の感に等しい物が備わってると言っても、過言ではない。


しかし─

今更エルドと共闘作戦など出来まい。


今は、自身と部下を信じるのみだ─!


そう、心に強い思いを秘めた鬼黒神は、窓の外に沈み行く夕陽を睨みつけていた。

準備を進める鬼黒神中隊。


ふと、過去を思い出していた敬司の頭をかすめる、微かな不安─。


ユーラは!?

クインシーは、一体どこへ!?


強襲作戦には、間に合うのか!?

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