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Wall Riran  作者: 中草 豊
2/12

〜始まりの足音〜

Wall Riran

難攻不落と言われた要塞へ挑もうとする、新たな挑戦者が現れた─。


果たして、その挑戦者とは!?

─effeuiller

最強と謳われ、最強と呼ぶに相応しい、とある国の傭兵を中心とする多国籍陸上特殊部隊の部隊名である。


訓練は世界で最も厳しく、また正式隊員になれる確率は、15%にも満たないと言われる。


入隊4年目でも新人扱いをされると言う。

8年目を迎え、ようやく一人前と呼ばれる。


そんな部隊に憧れ、挑み、正式隊員になり、将校まで登り詰めた1人の日本人が居た─。


─ケイジ・キグロガミ(鬼黒神 敬司)中佐。

鬼神に(うやま)われ、鬼神を(つかさど)り、時に鬼神そのもの!

と、周囲から恐れられる戦いの権化とも言えるその男は、部隊に所属してから、わずか7年で将校にまでのし上がったエリート中のエリート。


入隊直後こそ、極東の猿や地獄に来たお坊っちゃん等と(ののし)られたものだが、格闘術や護身術を幼い頃から叩き込まれ、山でのサバイバル生活をしていた鬼黒神にとっては、訓練は過ごして来た日常と同じであった。


『ケイジ!今度は何人あの世に送るんだ?』


冗談めいた笑顔でシガーを吹かす、エルドがニヤニヤしながら尋ねる。


─エルドレッド・ブラハム中佐。

鬼黒神と同じ様に最強に憧れ、最強を目指し、ココに辿り着いたフリーの傭兵であり、戦闘狂でもあった。いつもシガーを咥え、シガーを吹かした数だけ人を殺めたと語る彼の戦闘力は凄まじく、その言葉が嘘ではないと戦場ではいつも知らしめている。


『さぁな。今度の作戦によるのではないか?』


フッと口元を緩ませながら、鬼黒神は答えた。


エルドと共に作戦立案室へと向かってはいたが、部隊を率いる中佐が、2人も呼ばれる作戦と言うのは近年記憶にない。


むしろ、鬼黒神が入隊してからは初めての事であった。


─effeuiller


その名が示す様に、まるで華を散らすが如く戦場を隅から隅まで駆け回り、部隊が通った後には草の根1つ生えていない。と、まで言われる程に徹底的に(むさぼ)り尽くす彼らにとって、1個中隊もあれば世界の主要都市はおろか、どの様な軍隊や特殊部隊が来たとて、簡単に制圧出来るであろう。


そんな彼らにとっても初めてである。

2個中隊が、呼ばれたのだ。


相手はどの様な軍事力を持って居るのかさえわからない程に強大で、まだ出会った事もない強敵達に出会えるかと思うと、鬼黒神は内心ワクワクもしていた。


『どの様な敵なのだろうな?』


エルドと話しながら作戦立案室の前に立った。

今回の作戦立案は、部隊の影の最高権力ドニー中将が行うとされていた。


ドニー中将からの連絡を受け作戦立案室へ向かった鬼黒神ではあるが、連絡を受けた際には耳を疑った程だ。エルドも耳を疑ったと言うのだから、今回の作戦がどれだけイカれていて、どれだけ馬鹿げた事であるかは明白だった。


─ドニー・ブライトマン中将。

かつての、ベルリンの壁崩壊においても陰ながら尽力したと言われる男である。ひとたび戦場に出れば、最強の戦車乗りとしてその名を馳せたドニー中将は、味方からは射弾観測(しゃだんかんそく)のプロとして、また、敵からは砲撃の悪魔や砲撃の死神とまで言わしめた男である。


ノックの音を聞き、静かに入る様に促したドニー中将は自分のデスクに腰掛けていた。


2人を見るなり満足そうに頷いた彼は、イスに座る様に指示を出すと今回の作戦について静かに語り始めた。


『今回は非常にイレギュラーなミッションであり、政治的にも、また、世界的にも我が部隊でしか、なしえない究極の任務であると言える。そこで、我が部隊においても作戦遂行能力・戦闘力を加味した結果において、ケイジとエルド、貴様らが選ばれた訳だ。2個中隊を派遣するにも、相応しい相手と言える。存分に力を発揮して来たまえ。』


静かに、それでいて自らのオーラを隠す訳でもなく2人を(さと)す様に語るドニー中将。


だが─


2個中隊もの戦力を()く理由が聞きたかったケイジとエルドは、話を遮るかの様にドニー中将に直球の質問をぶつけてみた。


『中将殿!2個中隊を割く理由をお聞かせ願えませんか?』


エルドはシガーを咥えながらも、早口で尋ねた。

ケイジもその質問には納得の表情であった。


無理もない─。


最強と謳われる我が部隊の2個中隊を割くに値する理由が欲しかった。

どんな特殊部隊が相手でも、我々には勝てないであろう。


そんな最強戦力を誇る、傭兵部隊の2個中隊が出なければならない程の敵や規模であるのならば、紛争はもとより、第三次世界大戦でも勃発(ぼっぱつ)してしまうだろう事は、簡単に予想が出来た。


だが、そんな質問にもドニー中将は、まぁ待て。

と、2人の中佐を(たしな)めながら話を続ける。


『今回の敵は、何年も世界の秘密裏に暗躍していたと言われる特殊部隊が相手だ。だが、誰もその姿を見た者はおらず、風の噂や、幻。あまつさえ、幻覚とまで言われていたのだ。事実、人探しにおいては世界のトップであるCIAやKGBなんかもその拠点を探し、痕跡を探し続けていたのだ。だが、今回ようやく長い年月をかけ、その拠点と思われる場所を発見したのだ。そして、貴様ら2人に行って貰うのはその部隊の拠点と思われる場所への強襲であり、最も重要なのはその部隊の部隊長の暗殺である。出来るか?』


『イエス・サー!』


2人の中佐は敬礼で応える─


だが、内心納得はいかなかった。


2個中隊もの戦力を割き、たった1人の将校を暗殺すれば良いと言う。

相手がどれ程強大であろうとも、2個中隊で倒せぬ者は居ない。


いつも通り拠点を駆け回り、いつも通り死体の山を築けば良いのだ…

と、無理矢理納得させるしかなかった。


中将からの作戦を一通り聞き、現地到着後は右と左2手に分かれ、拠点前で落ち合おうとエルドと約束を交わし、自らの中隊へと足を向けた。


─Wall Riran

今回の強襲作戦を仕掛ける敵の拠点の通称名だと言われた。どの様な壁であろうとも俺達が破壊してやる!


そう、心に決めた。


誰が相手であろうとも、自らの正義の為に作戦を遂行するだけなのだ。


我々は、結局歯車でしかないのだから…。

effeuiller

多国籍軍とも言える、最強の傭兵の集まり。

世界最強の名を欲しいままにする彼らにとって、戦闘は日常でゲームをする事と、変わらなかった。


そんな彼らの、新たな作戦がスタートしようとしていた─。

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