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Wall Riran  作者: 中草 豊
12/12

〜夢の終わりに〜

〜エピローグ〜


自分達の楽園を作る為に、


新しい未来を切り拓く為に、


そして─


やるべき事を、成す為に─!


後悔をしている暇などない。


迫り来る現実へと、一歩足を踏み出すのだ─


─レナイ・ククラ

ふ〜。と、大きな溜息をつくと、男は机にペンを置いた。


目が眩む様な眩しい朝日に出迎えられ、徹夜で仕上げた自慢の『クーテーブタイ』と、言う、新しい手記を書き終えたばかりだった。


ゆっくりと伸びをすると、執事が淹れてくれたいつもの、お気に入りのブラックコーヒーを口にした。


いつも通り美味いな。


コーヒーの味に満足すると、最初から今出来たばかりの作品を、通しで読んでみる事にした。


そう─

この男の名は、レナイ・ククラ。

映画監督である。


このレナイは、自らが執筆した作品を小説として出版したり、映画の脚本として使用したり、自らの作品達を世に送り出す、名監督としても名高い男であった。


今回の作品には、特に力を入れていた。


自らが手掛ける、50作品目と言う節目の作品であり、自他共に認める大の親日家であり、幼い頃から聞いていた、強いサムライである日本人の主人公を描きたい!と、言う、長年の彼の夢が叶った作品でも、あったからだ。


断片的なストーリーは、何年か前から頭の中で出来ていた。


それを何年も掛け、どうせなら記念作品として送り出したい、自らの気持ちを優先した。


書いたばかりの作品を頭から読み終えると、机の上に置いていたそのメモ書きに、もう1度ゆっくりと目を落とす。


・鬼黒神敬司と言う、勇敢な隊長が居た。


・エルドと言う、親友が居た。


・effeuillerの部隊基地も、壊滅した。


・ドニー中将も、亡くなった。


・クーテーブタイと言う、謎に包まれた組織に入隊するまでの様子を描く。


・小隊長達が集まり、話をしている様子がある。


いくつか描けない所はあったが、レナイ・ククラは満足そうに、頷く。


50作品目の記念には、良い出来映えだ!

これならば、世に出しても文句は、言われまい。


主演は、誰にしようか─?

やはり、ここは日本人の俳優をキャスティングしたい所だな。。


そんな事を思案しながら、朝のなんとも贅沢で優雅な時間を、過ごして行く。


しかし─

徹夜が何日も続いたせいか、彼は疲れていた。


少しだけ何事も忘れて、ゆっくり休もう。。、


私に時間はまだまだ、あるのだ─!


そう心に決めると、しばしの休憩を取る為に、ベッドに横になる事にした。


起きてから、もう1度見直しをしたり、加筆をしたり、添削をしたり、ゆっくりとキャストを決めて行けば良いのだから。


実際スケジュールが決まってしまえば、配給会社も決めなければならないし、スタッフ達にも多少、無理をさせなければならないだろう。


なにより、レナイ自身がこれからやるべき事や、課題は山の様に、残っていた。


今この時だけは、何もかもを忘れて夢の中へ旅しても、いいではないか!


いつも通り、枕元にお気に入りの本を置き、お気に入りのメモ帳を並べ、お気に入りのペンをセットすると、そのまま眠りについた。




それが、

彼の最期になるとも、知らずに。。。、




─レナイ・ククラ(享年 54歳)


コーソン・ディウェイや、ハーン・ポンドや、トオル・ヒロタと言った、名俳優や名女優を銀幕スターとして世に送り出した男。


自身も数々の賞を取り、世界的にも知られる名監督であった。


代表作は、『I.C.H.I.G.O.』『S.H.I.H.O.U』など。


不朽(ふきゅう)の名作と言われ、続編を期待する声も多かったと聞き、後世に語り継がれる事にもなった『クーテーブタイ』を執筆中に、この世を後にした。




あとがき


難攻不落と言われた最強の要塞、Wall Riran。


最強の要塞を攻略せんと挑み、


命を賭して、戦場を駆け抜けた鬼黒神敬司。


仲間と共に成してきた、数々の任務。


仲間と共に貰った、数々の勲章。


そして、裏切り─


その忘れえぬ思い出の1つ1つを胸に、彼と共にこの世を旅立ったレナイ・ククラ。


彼の葬儀は、その余りにも早すぎる別れに惜しむ者達の、心を痛める者達の、まるで心情を映し出すかの様に、雨の中執り行われたという─

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