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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

月蝕―影に隠れる本当の心―

作者: 友代 和華

 僕と彼女は、まるで表と裏。


 何もかもが正反対。


 誰とでもすぐ仲良くなれる彼女。

 誰ともうまく付き合えない自分。


 明るく、周りに笑顔を振りまく彼女。

 前髪を長く伸ばし、表情を隠す自分。


 ありのままの自分でいられる彼女。

 ありのままを誰にも見せない自分。


 何もかもが正反対。




 きっと――




 本来なら、交わる事なんか無かった二人なのに。



『ふふっ、君の秘密、知っちゃった♪』



『誰にも言わないよ。 私と君の二人だけの秘密』



 そう言って、僕に構うようになった彼女。


 彼女の仲間達も、僕と仲良くしてくれた。




 でも、それは、所詮偽りの自分。




 僕はずっと、友達にも、家族にも、偽りの自分を演じ続けている。




 ある時、それが辛くなって、唯一秘密を知っている彼女に、勇気を出して言った「付き合ってください」の言葉。



 でも、答えはやっぱり――



『ごめんなさい……君とは付き合えない』



 わかってた。



 わかってても、悲しかった。



 溢れてきた涙を、彼女が指ですくってから――



『付き合う事は出来ないけど』



『今と同じ、月蝕の時だけは、ありのままの君と、恋人でいさせてくれる?』



 ――泣きじゃくる僕をぎゅっと抱き締めて言ってくれた。



 今日は半年振りの月蝕の日。



 年に数回の、ありのままの僕でいられる時間。


 いつも通り、ブラウスとチェックのスカートで。


 家の前で、しばらく待っていると、彼女がやってきた。


「お待たせ、美月(みつき)、行こっ♪」



 指を絡ませ手を繋ぎ、向かう先は、月がよく見える高台の展望台。



 月にも届く太陽からの光を、地球が遮ってしまう月蝕のように。

 僕に向けられた世間の眼から、彼女が僕を隠してくれるように。



 月が赤銅(しゃくどう)に染まる数時間だけが――



 ()が、()でいられる時間。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ∀・)まさに月蝕の妙を突いた物語じゃないでしょうか。この何とも言えない秘密の共有、ドキドキする感じがいいですね。 [気になる点] ∀・)ふむ、こちらのペンネームではおそらく初めましてですね…
[良い点] 最初から、叶わない恋をして。 時折『何故叶わない』事を、両者が思っているのか。 それを不思議に思いながらも読み進めていき。 最後の台詞で『何故』なのかを理解し『ああだからか』となる…
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