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いつもの風景

はいまた新作ですね人のことはなんも言えなくなってきたな

 トラックに跳ねられるとか、足元に魔法陣とか、ましてや通り魔に刺されるなんて。

 そんな前触れみたいなものはなく

 その日から俺は


 眠れなくなった。















 枕に顔面から突っ込む。


「眠い」


 眠くない。


「眠い」


 眠くない。


「眠い」


 全く眠くない。


「……はぁ」


 ……最初は別に気にもしなかった。一日目は今日は眠気が来なかったななんて思い、二日目は『三徹決めるか(笑)』なんて。三日目には記録を作ってみるかとエナジードリンクを買い込んで意気揚々と夜中に準備万端でゲームに勤しんでいた。


 コレは何かおかしいぞと。遅まきながらそんなことを思い始めたのは二週間も経ってからのことだった。


 そしてかれこれ一月(ひとつき)以上が経つ。


 人は連続でどれくらい起きていられるのかというと、およそ264時間。11日程度であるらしい。適当に検索して1番上のを見た結果だ。そしてその11日という不眠記録を打ち立てるのもそう簡単ではないらしく、初めに記憶力が低下、極度のイライラ状態を経て、記憶障害まで起こし始めるのだという。


 この身にそんな気配は一切ないため、この眠れなくなったのは病気だとかそんなチャチなものではなく、()()()()()()であると理解した。


 だがしかし、眠れなくなったとわかってはいても数週間前から始めた「今日は眠れるのか」という日課は欠かせない。まあ今日も結局眠気すらおぼえなかったわけだが。


 さて。


 この眠れなくなった生活を長く続けていると気づくことがある。


 勿体ぶることでもないので端的に言うと『暇』なのであった。


 昼間はまっとうな高校生であるためブラック残業などとは縁がない。睡眠時間いつもの平均睡眠時間がだいたい8時間であるためこれをフルに使えるようになったと考えると3/2倍もの活動時間を得たと言えよう。しかし夜というのは如何せんやることがない。


 店も閉まっていれば買い物はできない。終電が終われば移動もできないのだ。


 なれば最初のようにゲームでもやればいいじゃないかと思うかもしれないがあれは睡眠時間を削ってゲームをするのがよかったのであり、睡眠を必要としなくなった今いつでもゲームができるのなら今ではなくてもいいという一種の後回しを行ってしまうのだ。選択のパラドクスだかなんだかという言葉があったが、あれとはまた何か違う気がする……いや、あっているのか?わからん。



「で?昼間は真っ当な高校生なお前は?こんな真夜中にビール片手にラーメンを食うわけだ」



 ところ変わってとあるラーメン店。店内のライトに照らされてつるっぱげの頭部をやけに強調してくるこの親父はこの店の店長兼従業員だ。名前は知らない。


 何週間か前に腹が減ったので外に出てみるが、コンビニ飯も流石に飽きたと、家の周りを探索したところ。赤い提灯を見つけたのだった。今では毎晩通っている。


 何せ安い。今時ラーメン一杯ワンコインは中々無い。……はずだ。多分。値段もそれ相応の味をしているので考えものではあるが腹が膨れるのであればなんでもいい。そしてうっかりファーストコンタクトで高校生だと名乗ってしまった自分に対して年齢確認せずとも酒を提供してくれるというのもポイントが高い。


 なんだこの店。俺がいうことでも無いが大丈夫か。



「なんだよ。いきなり」


「いやな?お前この時間まで起きてラーメン食って酒飲んでるわけだろ。高校生は嘘じゃ無いにしても、不登校なんじゃ無いかと常々疑ってたわけだ」


「……まあ、わかるけど。不登校では無いとだけ言っとく」



 店内の四隅のうちの一つ。その上方向にテレビが設置されている。そこから流れるよくわからない番組。今となっては見慣れたものだが最初の頃はこの時間のテレビはこんなことを放送してるのかと驚いたものだ。……まあ驚いただけでそれ以上の興味はないため『見慣れたよくわからない番組』としか覚えていないわけで。その興味の無い『番組(BGM)』は店内にちょうどいい雑音を与えていた。少なくとも2人で会話する緊張を打ち消すくらいの効果はあった。



「本当かねえ。……ま、金払って飯食ってくなら客だ。早く寝て学校行けなんて言ったらお前が来なくなるかもしれねぇしな。俺だって高校なんざ適当に済ませたからなぁ。人のことは言えねぇよ」


「あぁ、そう」


「ただ老婆心ながら学校にはいっとけよって。無駄に歳食ったオヤジからのありがたい忠言ってやつだな」


「……どうでもいいけどさぁ。この時間に毎日来るようになってから俺以外客入ってるの見たことねぇけど」


「そりゃ深夜はお前しかこねぇしな」



 本当に大丈夫かこの店。色んな意味で。立ち上がって財布を取り出した。



「もう一度言うけど俺は不登校でも無いし学校にも行ってる。安心しなよ」


「そうか?ならいいが……」


「はいごっそさん」



 そう言って一枚の英世をテーブルに置いた。いつも食うメニューと飲むビールは決まっているのでこのオヤジが値上げしない限りは金額もいつも同じである。



「なんだ。もう帰るのか」


「もう帰るのかって……いつもより10分早いだけだろ。誤差だよ誤差」


「はい千円ちょうど毎度あり。明日も来いよ」


「あんたさっき遠回しに『お前不登校なんだろ?悪いこと言わないから学校行けよ?』って、そう言ってなかったか?」


「違うんだろ?ならいい。学校行ってバイトでもお小遣いでもいいから不健康に金を落としに来い」


「なんだそれ。……じゃ、おやすみ」


「おう、おやすみ」



 ぬるい向かい風を進んでガラガラと引き戸を閉めた。時刻はもうすぐ4時を回る。空も白んでくる頃合いだ。帰ってコーヒーでも淹れて本でも読んでいれば時期に登校時間だ。



「帰るか」



 そうして帰路に着いた。












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