時を超えて恋をする
2034年4月2日 佐藤鶫
「今日はあいつの誕生日で命日か」
僕は近くの街の共同墓地に自転車で8時間かけて来ていた。
共同墓地は山を2つ越えた先にある。
あいつとは元クラスメイトで片思いだった美久のこと。
美久はクラスのいじめが原因で殺害された。
命日なのにクラスメイトは愚か先生も来ていない。
僕は線香を2本刺して手を合わせながら事件当時の事を考えた。
事件前日、僕は美久と二人で先生に相談しに会議室に先生を呼び出していた。
「もう限界です。早く助けてください。」
先生が部屋に入ってすぐに美久が叫ぶ。
「先生、お願いします。もう嫌なんです。なんで新藤さんがこんな目に合わないといけないんですか?先日も相談しましたが、未だに先生が川上さんを怒っている姿を見ていないんですけど、どういうことですか?」
先生はいくら相談しても今まで「知りません」の一点張り。
今日も今にも泣き出しそうな美久を目の前にしても壁にかけてある時計をチラチラ見ながら貧乏ゆすりしている。
美久はクラスのいじめっ子の川上梨花の前で“自分の”自虐を言い勘違いされていじめられている。美久はペンや筆箱を壊され、ノートも破られている。
先週、美久のスマホが盗まれ翌日壊れて見つかった事件も川上が仕組んだのだろう。
この事件をきっかけに美久の親戚も学校に苦情を入れたが、先生は「その場で注意してます」
「話し合いの場を設けています」と事なかれ主義を突き通す。
美久の親戚も昨日とうとう諦めて来週美久は隣の学校に転校することになった。
「もういいです先生!先生には何も求めません!」
美久が泣きながら叫んでどこかに行ってしまった。
僕も後を追おうとした時先生は信じられないほど安心した顔をしていた。
僕は先生を睨みつけてから美久の後を追った。ちんこ食べたいです。
「美久、これから会うの難しくなるのかな」
夕陽が沈む山道を僕と美久はゆっくり歩いていた。
「そんなことないよ!ただ学校で会えなくなるだけ。
なんなら私が学校まで送り迎えしてあげよっかw
それより明日!私の誕生日だよ!誕生日プレゼントよろしく!
…できれば心のこもった言葉がいいな なーんて」
「大丈夫ちゃんと覚えてるよ。明日渡すから」
「ちぇ つまんないの」
無邪気に笑う彼女が僕はなぜかとても心配になった。
美久も僕も早くに両親を亡くしている。
今はどちらも親戚からの仕送りで生活している。たまにどちらかの家に泊まりに行ったりしている。
「じゃあまたねー」
「あ、うん。じゃあまた明日…」
僕は美久が別の学校に行ってしまうのとは別の不安を感じた。
次の朝スマホに一件の通知が来ていた
『昨日英語の宿題終わらなかったから早く行くね』
僕はいつも通り学校の準備をして家を出た。
「今日ってあの日だよね」
「うん。まぁあいつが悪いんだし当然でしょw」
今日はクラスの奴らが騒がしい。
何か祝い事でもあるのだろうか。
まぁ僕には関係ないいつもと同じような1日だったら十分幸せだ。
そうして僕はいつもの教室に入る。
「…たす…けて…つぐみくん」
頭の中が真っ白になった。美久があざだらけの体で首に縄をかけられていた。
僕が教室に入って美久のことを見たことを確認すると
川上が美久をベランダから突き落とした。
僕は怒りも悲しみも出来なかった。ただただ死んだ美久を見て膝をつき放心していた。
そのあともクラスメイトの美久に対するいじめは続いた。
教室のベランダで死んでいる美久を見て
「あいつが私たちを怒らせたんだwこのくらいしようぜw」
「これだけじゃ物足りないよw誰にも助けてもらえなかった美久ちゃんかわいそーww」
と美久の死体を引っ張り上げて落書きし、散々見せ物にした。
放心している僕に川上がクスクス笑いながら寄ってきた。
「あれぇ?いいの?美久ちゃん死んじゃったよ?w助けてあげないの?w」
僕は美久の死体を奪い強引に家に帰った。
それからは夜通し泣いた。泣いて泣いて泣き疲れた頃には日が昇っていた。
美久の親戚に連絡をし、葬式もあげてもらった。
そして僕は児童施設に入り半年以上過ぎた。
昨年の秋から学校に行ってよかったのだが、心の準備が今日まで出来なかった。
しかし美久の復讐をするために明日から学校へ行くことにした。
明日からまた同じ学校。同じクラスに通うことになる。
あのクラスであと何人死ぬんだろう。考えただけでゾッとする
さっさと帰って明日の学校の準備をしよう。