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3.

お待たせしましたぁぁ!

すみません!!( >Д<;)


 ひとまず、リリアナが一年後に学園へ入学する事は決まった。独立するにしても、嫁に行くにしても、どう足掻こうが、この国にいる限り、貴族は必ず学園に通うことを義務付けられているのだから、どうしようも無かったとも言えるだろう。後に迫られる決断だ。多少早まったところで問題はない。


 なんとも言えない沈み込んだ気持ちを押し隠して、今後についての作戦を組み立てる。


 取り敢えず、基礎的な体力作りに、アルベルトの入学の裏、帝国の事についても調べておかなければいけない。

そうなれば、自然と()()を作っておかないといけないだろう。ツテとは、いわゆる情報のやり取りを生業とする人の事で、『情報屋』とも呼ばれている。情報屋はどの国にも存在していて、ある一定の条件さえ満たしていれば情報の売買を行えるので、前回の人生の際から非常にお世話になっている。

 帝国の情報を仕入れるのなら資料でも勿論良いのだが、資料から読み取れないことも多くある。例えば、帝都の有力貴族のゴシップなどから始まり、本当に必要なのだろうかとも思える、捨て猫の情報を開示してくれたり。

とにかく、情報屋にはこれから先お世話になりそうだ。




 黙々と考え込んでいるリリアナをよそに、他の三人達はリリアナの話で盛り上がっている。


「学園の話はここまでだ。そんなことよりも、メリア、リリーの誕生日プレゼントはどうした?」


「あらまあ、愚問ですわね。あなた。ほら、ここに」


 メリアがふわりとしなやかな指を振ると、窓際に積まれていたプレゼントの山の中から、丁寧にラッピングが施された小振りの箱が宙を滑るように飛んできて、リリアナの手の内に音もなく収まった。


(これは.....)


「さあ、私達からのプレゼントよ。開けてみて頂戴、リリー」


 笑顔でこちらを見つめてくるメリアとカザルドに急かされるようにしつつも、ゆっくりと丁寧に糊付けされた包装紙を剥がしていく。


「わぁ.....」


 白い上質な箱から出て来たのは、シャンデリアの光を反射してキラリと光る黄金のペンダントだった。

蔓がペンダントに巻き付いている至ってシンプルなデザインだが、細部まで丁寧に彫り込まれており、一目で高価な代物だということがわかる。

ペンダントの右手側の側面に小さなツマミを見つけ、ゆっくりと回す。


カチャリ、という音と共に、ゆっくりとペンダントの蓋が開いた。

念写魔法によって細部まで描き込まれた肖像画は、楕円形にくりぬかれ、一つの仲睦まじい家族を再現していた。

蓋の裏には、『リリアナ・ルーヴァルトに幸せ多からんことを』と、彫り込まれている。


(あぁ、懐かしいわね...)


ペンダントをそっと首に掛けながら、前回を思い出す。このペンダントは、唯一リリアナが両親に貰ったものの中で死ぬ時まで所持していたものだ。


(私が死んでしまった後、アルベルト様は私の遺品をどうしたのかしら?)


恐らく処分したのだろうと思いつつ、もしかしたら持っていてくれたかもしれないという期待のようなものが胸の内を占める。

しかし、時が巻き戻った今では、それを知ることは出来ない。

流石のアルベルトと言えど、前回の記憶は持ち合わせていないだろう。万が一持っていれば、流石のリリアナでも『この人本当に人か…?』と、恐怖を覚えるだろう。


リリアナがペンダントを着け終わった頃を見計らって、アバルドがもう一つ包みを取り出した。記憶が正しければ、この中に入っているのは、一冊の魔術書だったはずだ。


「リリー。これは僕からのプレゼントだ。是非とも今後の学園生活で活かして欲しい」


「ありがとうございます!とっても嬉しいです!」


 そう言ってリリアナはそっと包装紙の上から魔術書を撫でた。出来ればここで開けずに、自室でしっかりと堪能してしまいたいのだが、先程からアバルドがリリアナがどのような反応をするのか、期待を込めた眼差しで見つめてくるため、ここで開けることにする。

丁寧に、中の本が傷つかないように包装紙を剥がしていく。


中から出て来たのは、紺色の表紙の一冊の本だった。

『バルバルードの魔術書』。かつてバルバルードという名の男が書いた魔術書だ。


この本の複製はこの世に数冊しか存在しておらず、魔法を扱う者にとっては喉から手が出る程、手にいれたい大変貴重な物だ。この本は、古代に使われ、失われつつある高等術式等、様々な種類の魔法について説かれている。この年の少女に誕生日プレゼントとして渡すには、些か、いや、大分高価過ぎる代物だ。本来であれば、リリアナに渡さずして、アバルドが使うべきである。


しかし、それを知ったのはリリアナにある程度の学がそなわってから。今のリリアナが知るところではない。よって、何も知らないふりを貫く。リリアナとて、一介の魔法使いだ。今すぐにでも前回で記憶しきれなかったページを読み耽りたい欲望に駆られるが、『何も知らない幼く無知なリリアナ』を貫き通す。


(ああああぁぁ、読みたい、読みたい、読みたいッ!)


これから待っているはずであろうリリアナの誕生日パーティーの存在から目を反らし、腕に抱く本の表紙を撫でる。


「ありがとうございます!どれも、大切に使わせていただきますね!」


(とても、嬉しい。例え離ればなれにされてしまっても、持っていた物だもの。嬉しくない筈が無いわ)


心からの感謝を込めたリリアナのありがとうは、三人にしっかりと届いたようだ。満面の笑顔で頷き返してくれる。


その後、マーヤにパーティーの準備をするとのことで呼ばれるまで、リリアナはお茶の時間を楽しんだ。










 数時間後、リリアナ達は、タウンハウスの広々とした庭で、誕生日パーティーを開催していた。


「本日は、私の愛娘であるリリアナの誕生日パーティーに参加していただき、嬉しく思う。簡単な物だが、立食も用意した。我が家の自慢のシェフの料理だ。思う存分、楽しんでいってくれ。」


そう言ってカザルドが話を締め括ると、沢山のグラスがか翳られた。







 ガヤガヤとした喧騒の中、リリアナは一人の男を探していた。腰まで届く茶髪を、後ろ手で括った小太りの男で、名を『ハーバリー・リスカットン』と言う。彼は我が国を代表する商人の一人で、『ハーバリー商会』を運営している。最近は商売で更に手を広げる為に、爵位を貰ったそうだ。マーヤに確認したので間違いない筈だ。

商人が爵位を授けられるなど、我が国では前代未聞なのだが、彼の多岐にわたる人権的な貢献と、国民からの絶大な支持でそれは実現した。


 売れるものなら何でも売る。しかしながら、情に厚く、非人道的な行いはしない。それが彼の商業の掟だ。

彼ならば、恐らくこのパーティー会場に足を伸ばしているだろう。

なにせ、国の王家に連なる大貴族の家で開かれるパーティーだ。商売魂盛んな彼が足を伸ばさない筈が無い。残念なことに、前回ではお目にかかる事は叶わなかったが、噂は帝国までに届いていた。


(国内一の商会.....逃す手は無いわね…)


このツテを使えば、薬から始まり、武器等の道具も手に入る筈で、もっと上手くいけば、新しい商品作り、彼等に回して、リリアナ自身が商売をすることが出来るかも知れない。そう考え付いたリリアナは、パーティー会場をひたすら彷徨いているのだが....


(見つからない!!)


ここ三十分ほど歩き回っているが、それらしき影は見当たらない。

小柄な体型を活かし、人々の間をすり抜けていく。


(少し疲れて来たけれど...見つけるまで諦めたくない!!)


この幼い体では、多少走っただけでもすぐに体力の限界が来てしまう。こまめに水分を摂らなければ脱水症状を起こして倒れてしまう事だろう。そうならないように、近くにあったテーブルに紅茶を取りに行こうと方向を変える。


「おい!お前、待てって言っているだろう!」


しかし、聞きたくない声がリリアナの歩みを止めた。

題名は後々埋めていきます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 全部よかったと言ってもいいかもしれません! [気になる点] 視点が一人称?というのでしょうか。私になったり、これは三人称なんでしょうか?リリアナと、俯瞰のような感じに変わったりと、ちょっ…
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