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1.齢五歳で、前世を思い出しました…

少し早めの投稿となりましたが、また直ぐに投稿する予定です。


 落ちる。落ちる落ちる落ちる。暗い闇の中を、ずっと落ちていく。



「うひゃぁぁぁぁ!!!!」


 絶叫と共に飛び起きる。が、直ぐにバランスを崩して、情けない声を上げながらフカフカのベッドに埋もれてしまった。


「はぁ、はぁ、はぁ…」


だだっ広い部屋。

所狭しと並べられた沢山の人形達と、プレゼントの山。

よく悪夢を見て起きてしまう私のために、侍女のマーヤが用意してくれたラベンダーのポプリの匂い。


 夢の中で見た、焼け野原と化した戦場でもなく、鼻に付く、血生臭さもしない。ましてや、私が収まっているのは、アルベルトの腕の中ではなく、羽毛がふんだんに使われた上質なベッドだ。


しかし、何処か懐かしい雰囲気がする。

それもその筈。この部屋は、まだ私が、『リリアナ・ルーヴァルト』だった時に使っていた自室なのだから。


夢で見たときよりも、断然小さい両手で頭を抱える。


「思い、出したぁぁ.....」


私、リリアナ・ルーヴァルトは、どうやらもう一度、人生をやり直す事になったようです。


やったね!


「じゃなぁぁぁぁぁぁい!!」






 その後、直ぐに私の叫び声を聞いて駆け付けてくれた専属侍女のマーヤを、悪い夢を見た。何とも無いから大丈夫だと窘めて、部屋から追い出す。


「つ、疲れた...」


 この小さい身体では、小柄な侍女を一人自室から追い出すのでさえ、体力を大幅に消費するようだ。

そういえば、昔のリリアナも、国境を越えるまでは普通の公爵令嬢として生活していたため、体力は平民よりも少なかった。本格的に体力を付け始めたのは、アルベルトについていく事になってからだ。


(自分の身体のはずなのに、難儀なものよね.....)


一先ず、優先するべき課題は体力作りに決定だ。このままでは、あの時の誓いを守ることは到底出来ないし、アルベルトの駒になってから後悔したのだ。自分にもっと技術があればと。


 いくらか体力が付いたとはいえ、所詮平民程度。戦場では化け物と恐れられるアルベルトについていくには、文字通り血を吐くような訓練を自身に課さなければならなかった。まあ、最後の最後であんな一兵士に不覚をとられ、殺されてしまうなんてあり得ない。当時、帝国でリリアナに勝てる兵士は片手で数える程度しかいなかったため、慢心ぎみだったのかもしれない。

戦場で気を抜いていた自分に嘲笑を浮かべながら、扉から離れ、ベッドにむかおうとしたが、このままベッドに戻っても眠れないだろうと判断して、久しぶりの自室を歩き回りつつ、状況整理をすることにする。


ベッドの前を横切り、全身が写せる大きさ姿見の目の前に立つ。

その中に写し出されるのは、まだまだあどけなさを残した少女が一人。


 腰まで届く、薄い紫色の髪の毛に、揃いの色の瞳。記憶を完全に取り戻すまでは、年相応の無邪気さがあっただろうが、記憶を取り戻した今では、たった三歳の少女とは見えない賢さをその瞳に浮かべている。顔はそこそこ整っているので、将来美しく育ちそうだが、流石に傾国の美女とまではいかない。良いところのお嬢様としては普通だ。


 私の周りには、顔面偏差値が高い人物ばかりがいるにもかかわらず、皆揃って私をよく誉めてくれるのだが、それでも一番顔の整っているのは、かつてリリアナを救い出してくれた、アルベルトだと思う。あの美貌が無表情の時も恐ろしいが、作り物めいた笑顔も怖い。何度あの黒い笑顔に震えたことか。


 そして、リリアナの誕生日は舞の節の17夜。どういうわけか、丁度今日がその日で、リリアナは五歳になった。アルベルトと出逢うまではあと十年以上もある。


鏡にもう一歩近づくと、そっと壊れ物に触れるように、鏡に写る自分の頬に触れ、額とくっつける。


触れた指先が伝えてくるひんやりとした感覚は、これが夢でないことを教えてくれた。


何となく閉じた瞼の裏側に、アルベルトの姿が浮かび上がった。

常に堂々と胸を張り、ひたすら前を見据え続けた彼。


さっきまではこの事態に現実味が無かったせいか、涙なんて出てこなかったけれど、鏡に写る自分に触れて解る。これは現実だ。


じわりと滲んだ涙を無理矢理に作った笑顔に押し隠し、どうにか耐えきる。


こんな所で立ち止まっているわけにはいかない。それこそ彼に笑われてしまうことだろう。


 前回よりも、少しでも良い状態で、彼に仕える為に、出来る限りのことをしておかなければ。私を絶望の底から救い出し、羽ばたかしてくれた彼の為に。


窓の外に目を向けると、日が昇ってきていた。

リリアナの二度目の人生は、ここから始まるのだ。



短いですねぇ.....

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