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群青の下で

作者: 風祭トキヤ

はいどうも

これを出した経緯は適当に書いてたものが母の日に出せそうな感じだったからです

僕も主人公と一緒で最近は集団でいるより1人の方が好きですね

1人旅とかもハマって最近行くようになりました

正直友達いるよりも一人の方が好きだ。

別にいない訳では無い。

学校でも最初の方は友達作りに奮闘していたほどだ。

ただいつからだろうか。こんなにめんどくさく感じてしまったのは。

会話をすること、連絡を取ること、食事をすること、一緒にいることすらめんどくさく感じてしまったのは。

金も持ち合わせずに、外に出されて、マックに連れてかれて2人は食事を取りながら、YouTubeを見ている。

俺はヘッドフォンでスマホから音楽を流し、いつもより少し音を大きくして聞いている。

関わろうと思わないし、今すぐここから帰りたい。

帰るわって言ったら3人の時間から2人の時間へと変わる。

今でも2人の時間だというのに俺がここにいる意味があるんだろうか。

ただいて欲しいという変な希望を押し付けられて何も注文せずに座っているだけ。

店員からしたら俺はただの迷惑客にすぎない。

一番今欲しいのは親からの帰れの連絡。

それ以外求めてない。

そうすればそいつらも納得して俺はノーダメージで帰れる。

と思って30分後に俺は帰宅コールが入ったためマックをあとにした。

家でぼーっとしてる方が好きな時も最近は多い。

母親は俺のいい相談相手だ。

意外と思う人も多いが、俺は親と仲がいい。

友達の愚痴、バイト先のウザイやつ、学校での生活。

何でも明かせることのできる人はこの人しかいない気がする。

母親も俺と似ていて人と関わることが最近めんどくさいらしい。

あんだけ好きだった飲みに行くのすらめんどくさいって言って家で野球を見てひとり酒。

友達と飲むのがめんどくさくて最近は店にはほぼ行かない。

俺も同じで最近は一人旅にハマった。

色んな景色を俺の中に収めることが出来る何とも言えない快感が好きだった。

というのを母親に言ったら「行ってみたい」と言われたので、行くことにした。

行くところは鎌倉方面。

母親との2人でどこかに行くことは久しぶりだった。

母親は鎌倉は10年ぶりらしい。

それにしても夏の鎌倉は暑かった。

夏は由比ヶ浜や七里ヶ浜などで泳ぐ観光客が沢山いる。

俺たちはその姿を駅から見下ろしていた。


「ねえ一斗」

「なんだよ」

「将来後悔しないでね」

「一人でいることについて?」

「うん」

「ある程度友達はいるから大丈夫だよ」

「それは本当に一斗が本音で話せる友達?」

「......」

「お母さんはいつまでも一斗の相談相手にはなれない。いつか死ぬの。それは子供より先に。だから後悔しないでね」

「そんなこと言うなよ。もう死ぬみたいじゃんか」

「はいはい。ごめんなさいね」


母は遠くを見ていた。海の向こう側。先の空。

まるで何かに呼ばれるように。

1週間後その悪寒は当たってしまった。

授業中に先生呼ばれ、職員室に行くと母親が病院に搬送されたと言われた。

外には車が用意されてあって担任と向かうことになった。

母は病院で目を開かない。


「ご臨終されました」


医師の言葉が病室にぽつりと放たれる。

死因は交通事故。

母親は一人の子供を助けるために犠牲になったと言われた。

心電図の電源は既に消されていた。

俺は泣くことも項垂れることも出来ず、ただ母の顔を見つめていた。

その子供や弾いた運転手を恨むことすら出来なかった。

ただ死んでいることの事実を受け止めきれないというのが僕のいまの心境。

しばらく絶望してると離婚した父親が病室まで来た。

呆然として母親を見ていた。

6年ぶりに見た父親の顔。

親の親は俺が小学校に上がる頃離婚した。

しかしその薬指には指輪がはめられている。

母親が持っていたのとは違う新しい結婚指輪。


「久しぶりだな一斗」

「どうも」

「母さん死ぬ前はなんて言ってた?」

「俺だって知らねえよ。病院の人に聞けよ」

「そうか......すまない」


父親は病室から出た。

また静寂が訪れる。

家に帰れば母親がいると思って、玄関を開けても誰もいない。

誰の声もしない。

結局は1人になってしまった。

実際は1人で生きていくことなんて不可能で、国から振り込まれた金で飯を食っている。

親がいないというのはそういうことだ。

学校では更に孤立した。

親が死んだことを知る生徒は必ず言ってくる。

「残念だったね」と。

俺が今かけて欲しい言葉はそれじゃない。

励まそうとなんてしなくていい。

そんなもの貰ったって嬉しくない。

そんなとき俺は自殺しようと思った。

迷惑がかかるのは嫌だからバイトで貯めた金で小型の船を買った。

そのまま海に身を投げ出そうと思った。

そうすれば誰にも知られずに死ねる。

最も迷惑のかからない死に方だ。

しかしそう簡単に死ねるわけではなかった。

いざ海に身を投げ出そうと思うと何も動かなかった。

船の椅子に座った途端雨が降り出した。

その雨は次第に大きくなり、台風が発生して風も強くなった。

あらぬ方向へ暴走する船。

立った途端僕は足を滑らした。

海に落ちた。どんどん沈んでいく。

誰の声もせず沈んでいく。

ああもう死ねるんだと嬉しい反面、モヤモヤが残った。

本音を出さなくなったあの日からかけて欲しかった言葉。

それを言えずに死んでいく。

気がつくとそこは天使がいるような天国でもなければ、悪魔がいるような地獄でもない。

俺が船を出した場所だった。

体を起こすとそこには女性がいた。

見た目は俺と同じくらいの年齢だった。

その人は俺が目を覚ますとニコッと笑った。


「起きたんだね」

「あなたが俺を?」

「うん。船から落ちるのが見えたから」

「......」

「君、自殺しようとしてたんだよね」


改めて人から言われるとほんとに自殺しようとしてたんだと気付かされる。

けど俺は何もせず、この人に迷惑かけて、そして生きている。

他人に迷惑なんてかけない思っていたのに。


「私も自殺しようと思ってたことあるんだ」

「え?」

「私、お父さんと二人暮らしである日、お父さんが死んじゃってさ私人生がつまらなくなっちゃって」

「そう......なんだ」

「けど家にお父さんが毎日書いてた日記を見つけたのね。なんて書かれてたと思う?全部私のことだったの。お母さんが死んでからお父さんが料理を作り始めて、深夜まで料理の研究しながら仕事もしてこの人いつ寝てるんだろうってなってさ。そのこと知ったら私、死ねなくなっちゃって。お父さん私が死んだら絶対悲しむって思っちゃってさ」

「俺も1年前くらいに母親が死んでさ。家帰っても誰もいなくて...悲しくてさ、学校行っても残念だったねしか言われなくて、本音を話せる友達なんていなくて......。」


彼女が俺の涙を拭き取り、抱きしめてくれる。

小さい頃母親に抱きしめられたときと同じ感覚になった。


「助けて欲しかったんだよね?本音を話せる友達が欲しかったんだよね?」

「......ああ」


俺は泣いた。

何年ぶりだろう人に抱きしめられながら泣くなんて。

自分でもみっともないと思う。

母親にもいちいち泣くなって教わった。

けど母さん今日だけは許してくれよ。


◇◇◇


母親が死んでから10年が経った。

俺は墓石の前で合掌した。

俺は生きていくよ母さん。

絶対もう死ぬなんてことはしない。

もう少し待っててくれよ。

そして母さん、母さんにも孫が出来たよ。

母さんの他にも本音を話せる相手が出来たよ。


「あなた」

「おう。行こうか」


お腹が大きくなった妻の荷物を持って、墓石を後にする。

俺も母さんみたいな親になるから空から見てくれよな。

群青色の空が輝いた。


読んで頂きありがとうございます

次はいつ出すがほんとに分かりませんが、出せるものが出来た時に出したいと思います

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