#1 - ステータスがおかしいです
作者の頭がおかしいです。前からですけど。
────さあ、魂よ、いらっしゃい。
誰かの声に導かれ、魂は黄泉の虚空を彷徨っていた。北へ南へ上へ下へ。果たしてどこへ行くのか、行く先はあるのか。意思のある魂は退屈である。
────どこまで行くの?
尋ねるが、声は聞こえてこない。どうやら一方的な会話しか出来ないみたいだ。退屈だなぁ。
俺は死んでいた。いつの間にか。まあ、仕方の無い事だろう。俺は田舎町に住んでいた。季節は夏。夏といえば、夏祭り。ここまで連想させるのは簡単だろう。だが、その後は驚きだ。まさか隕石が降ってくるとは。
隕石……と言っても小惑星みたいな大きな隕石は降ってこない。というよりそれは学術的に無理らしい。聞いた話だけど。
俺の死因は小さな欠片だ。隕石の破片。それが頭に当たって死んだのだ。他の犠牲者はゼロ。なんとも不遇な死であろうか。せめて誰か悲しんでくれると嬉しいな。知らんけど。
────そろそろですよ。
声に導かれているけど、そろそろって何も見えないんだけど。魂には目がない。当然、見えるはずもない。俺なりの愚痴である。それ以前に口が無いから、愚痴すらも声になってないけどな。
────さあ、ここへ。
抵抗する術もなく、魂はすぅーとどこかに引き込まれていった。あっ……意識が。そこで俺の意識は途絶えた。
次に起きたのは朝だった。先程までと感覚が違う。これは……身体!?
「身体があるぞ!」
何とも変人な発言だが許して欲しい。魂だったのだ。実体もなかったのだ。実体=嬉しいだ。ほら成り立った。
────貴方にはこれを差し上げます。
声……無愛想な名前だ。コエさんにしてあげよう。コエさんは俺に何かくれた。何だろう。手に置かれた玉手箱にしか見えない箱を開ける。
「うわぁー。」
勿論、声は上げる。もくもくと煙は……出ない。興ざめだなぁ。まあ、いいや。これは何だろう。
「たい焼き?美味そう。頂きます。」
弱肉強食。異世界転生したっぽいからここからは俺の物は渡さねえ。生きるか死ぬかだからな。早速食べるとしよう。
たい焼きにパクリと齧り付く。……美味い。なかなかやるじゃないか。そのままぺろっと食べ終えてしまった。
「美味かった。まだ無いのか?」
強請るが何も出ない。ケチだな。その時だった。俺の体、光る。
「由々しき事態だ、コエさん。俺の体が光出したぞ。」
俺はコエさんに現状報告する。コエさんなんだから目は無いはずだ。教えてあげないとな。
────それは貴方に差し上げるスキルです。
「スキル?スキルってあれか?異世界でチートするあれか?」
そうだ、あれだ。誰も返事をしてくれないが、それだ。それそれ。決してオレオレ詐欺では無いから安心してくれ。
────能力名は【模倣】。他のスキルを模倣できる能力です。では健闘を祈ります。私は寝るので。
ふーん、模倣するスキルか。まずまずこの世界に他にスキル使える人いるんだな。それすら俺知らなかったんだけどな。
「こういう時は【ステータス】とか言っとけば、色々出てくるんだよな。ほら出てきた。」
予想通りステータスがある。それを読む。
****すてーたす****
なまえ→ひむろ
れべる→いち
すきる→【もほう】
(こうりゃく)
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え、何これ。色々と突っ込むね。まずなんで平仮名?確かに異世界転生した人が子供だったら読みやすいね。俺、別に漢字読めるけど。あと、名前が苗字だけとか酷くない?せめて、ファーストネームにしようよ、ねえ。
「てか後略って何だ、後略って。」
まさかのスキル以降全略という暴挙。コエさん、怠惰すぎません?ふぅー突っ込んだらスッキリした。
よし、まずすることはステータスを漢字にすることだ。
「漢字になれ、ゴマ。」
こういう時は取り敢えず、「~~、ゴマ。」で通じるはずだ。子供の時読んだからな。「開けゴマ」でどこでも開くんだよな。
「まあ、開かないよな。知ってた。【ステータス変更:表示設定〈漢字〉】。」
なんか閃いた。すごいね、閃き。絶対にこんなの考えても分かるはずないや。コエさん、あざっす。
****状態****
名前→氷室
成長度→一
特殊能力→【模倣】
(後略)
**********
おおー極端だな。さすがにこの展開は予測できなかったぞ?ふざけてるよね。
「【ステータス変更:表示設定〈自動〉】」
適当に言ったが、スキルになった気がする。
****ステータス****
名前:氷室
レベル:1(人間)
スキル▼
〈エクストラスキル〉:【模倣】
〈コモンスキル〉:--
ジョブ:異世界転生者
称号:【転生者】
加護:【転生神の加護】、【怠惰神の加護】
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見違えるように変わったぞ?自動が一番良いって謎すぎる。まあ、見やすくなったな。情報も詳細になってる。俺、加護が二つも施されているのか。転生神はコエさんだけど、怠惰神って何だよ。
「……怠惰を神にしたら世界崩壊だろ。」
声は虚しく響くだけだった。