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8-02 ラミア教だって?


 さすがに冬の最中は、誰もダンジョンにやってこないな。

 ダンジョンの中は外から比べると暖かだから、ゴブリンの少年達は現気に走り回っている。あれだけ走り回っても、誰も落とし穴に落ちないのが不思議に思えるんだよなぁ。

 クリスはミーナさんと一緒に、地下2階の工事の進捗を見分に出掛けてしまった。毎日出掛けなくとも良いように思えるんだが、クリス達には違いが見えるのだろうか?


「お茶が入ったでござるよ」

「ああ、ありがとう。アビスは一緒じゃなかったのかい?」

「リオンを探していたでござる。結構お転婆娘でござるな」


 ヨイショと子猫を抱き上げて撫でているんだが、アビスはイヌ族なんだよなぁ。犬と猫は仲が悪いと思っていたんだが。


「年が明けて1か月というところだ。今が一番寒い時期だが工事に遅れは無さそうだね」

「何とか次の冬前に完成させておきたいでござる。地下2階に冒険者を入れることができれば、マナが一気に増えるでござるよ」


 アビスの言葉に思わず笑みが浮かんでしまった。

 確かに美味しい話だ。問題は、冒険者が飽きずに地下2階に留まれるか、というところなんだが……、こちらの思惑通りにいくかどうかはやってみないと分からない。


「ところで、広間の池の魚が増えているんだけど?」

「あれでござるか。夏に獲ってきたらしいでござる。ゴブリン達が餌をあげて育てたのでござるよ」


 やはり養魚場としてたんだな。なら、池をもう少し大きくしても良さそうだな。

 広間の池はあれ以上大きくは出来ないから、地下4階に作る砂漠にオアシスを作れば良いだろう。

 浅くとも20m四方あれば、100匹を超える魚が飼えそうだ。


「どうしたのでござるか? クネリ様の体でも想像してたのでござるか」

「そんなことは絶対に無いからね。魚を育てる場所を作ってあげようかなと思ってたんだ。地下4階に作る砂漠を少し広げてオアシスを作るのも良いんじゃないかとね」

「オアシスでござるか?」


 今度はアビスが考え込んでしまった。見たことが無いのかもしれない。

 そんなアビスを見ていたら、ふと頭に大きなランプが点灯したぞ。

 オアシスは砂漠の楽園でもある。少なくとも冒険者にはそう見えるはずだ。

 なら、その周囲に罠を仕掛けるのもおもしろそうだ。

 命を奪うような罠は仕掛けたくはないが、一時的な行動制限を課せることができるならば都合が良い。ダンジョン内の行動時間でマナが増えるんだから、出来れば数日寝込ませたいくらいだ。

 さすがに、そんな罠を仕掛けたら砂漠の魔獣に食べられてしまいそうだから、せいぜい1時間程度になるんじゃないかな。

 パーティ内の1人が、そんな罠にかかるならオアシスで休もうとする気も起きるだろう。結果的に滞在時間が延びるわけだ。


「アビス、1時間もしないで効果が無くなるような毒を持つ生き物を知らないか?」

「短時間の効果で終わってしまう毒でござるか? そのまま継続する毒なら、たくさんの魔獣が持っているでござるよ」


 そうだよなぁ……。長続きさせるのが毒なんだからね。短時間で終わるなら毒とも認識されないのかもしれない。


「たぶん、地下4階で使うのでござろう? 乾燥地帯で毒を持ち、かつその毒の効果が短時間となると……。アリクイ辺りになってしまうでござるよ。だけど、アリクイの毒はちょっと痺れるぐらいで、どちらかと言うとアリクイの顎の傷の方が大きいでござる」


 いるってことだな。それよりも傷の方が大きいとなれば毒を持つ必要が無さそうな奴だな。


「どんな奴なんだ?」

「クロード殿のバングルで確認できるでござるよ」


 検索できるってことか! バングルを操作して仮想スクリーンを開き、アリクイと入力してみる。


「これか! 確かにアリは食うんだろけど、俺の知ってる姿とはだいぶ異なるな」


 仮想スクリーンが映し出した魔獣は、獣ではなく虫だった。

 どう見ても、アリジゴクなんだよなぁ。アリは食べそうだけど役に立つのか?

 画像の横に書かれた特徴を読むと、確かに微毒を持っているようだからアビスの言葉に間違いはないんだが……。

 ん? ちょっと待て。このアリクイの大きさは、かなり大きいぞ。胴体だけで俺の握る拳ぐらいありそうだ。

 顎にある牙は5cmほどもあるし、牙の先がのこぎり状だ。これで噛まれたら、確かに傷口の方が酷いことになるだろうな。

 

「へぇ~、穴に潜まずに出歩くこともあるんだ。でも住み家の周りを出歩くこともあるってことか。縄張りを作るのも都合が良いな」

「気に入ったでござるか? それならマナを使わずに数匹集められるでござるよ。クネリ様の事務所の窓の下にたくさん巣があるでござる」

「獲ってきてくれるのかい? その時はお願いするよ」


 魔族の連中は退治しようなんて考えないのかな? 飼っているわけじゃないと思うんだけどね。


「ところで餌は?」

「砂ネズミと砂漠狼を一緒に放っておけば自然に生態系が作られるでござるよ」


 オアシスの植物を砂ネズミが食べて、砂ネズミをアリクイと砂漠狼が食べるらしい。砂漠狼はサソリが食べるという生態系ができるというんだから凄いとしか言いようがないな。


「だけどアリクイなんだろう? アリを食べるんじゃないのかい?」

「1つ用意しても良いでござるが、増えるでござるよ。……ゴブリンの少年達の訓練にも使えるかもしれないでござるな。ホブゴブリンの婆さん達に聞いてみるでござる」


 何か、とんでもないアリのようだな。

 直ぐに用意をすると言わないところを見ると、かなり問題のあるアリなんだろう。それにアリクイの大きさからすれば捕食対象のアリは俺の知るアリよりもかなり大きいのだろう。

 俺達が管理できないダンジョンを作りかねないから、却下しておいた方が良いのかもしれない。


「俺達で制御できないような種をアリスのダンジョンに入れるのは問題だ。それよりは良い音で鳴くコオロギ辺りが良さそうだな。大きくとも小指にはならないだろう。アリクイや砂漠ネズミの餌にもなるはずだ」

「何種類か考えておくでござる。私もアリを使うのは考えてしまうでござる」


 魔族が恐れるんだから、とんでもなく増えるということに違いない。

 だけど、そんなアリがクネリさんの事務所近くにはいるってことになるんじゃないか? 気にならないんだろうか。


 だけど、現在工事が進行中の地か2階よりも広くなりそうな気がしてきた。

 狼を群れで放つとなれば最低限2km四方は欲しいところだ。ドーム型の天井にするとしても、たくさんの支えが必要になるんじゃないか?

 地下2階の造成を参考に、ある程度の案を作っておく必要があるだろう。

 俺の暇つぶしになりそうだな。


 突然、近くに魔方陣が現れて、光を放ちながら文字を描いた円環が回りだす。

 眩い光が一瞬放ったところでアリス達が立っていた。

 2人が笑みを浮かべているから、予想以上に捗っているということなんだろう。


「だいぶ出来てきたにゃ。海水は東の海の海底から汲み取れば、浄化する必要も無さそうにゃ」

「中央に小さな神殿を作ろうと話してたんです。柱の間が空いてますからアクセントにもなりそうです」


 ソファーに腰を下ろしながら2人が話を始めた。アビスがお茶を用意して、今度は4人のお茶会が始まる。

 それにしても、小さな神殿ねぇ……。ミニチュアってことかな? それとも、祠のようなものを考えているのだろうか?

 賽銭箱も用意しておかないと不味いだろうな。さすがに2つ作ればどちらかに入れてくれそうな気もする。


「クリスに任せるよ。とはいえ、ダンジョン内に作るんだから、あまり大きくしない方が良いよ」

「御神体も選ばないといけないにゃ。地下の湖ならラミア像で十分にゃ」


 地下の湖? さっき、東の海底から海水を取り入れると言ってなかったか? それなら湖と言わないような気がするんだが、俺の常識はこの世界ではあてにはならないんだよなぁ。

 それに、ラミア像と言ったらクネリさんのような像ということになる。

 大きな岩の片面を平らにして、クネリさんの姿を彫刻した方が安く上がりそうな気もするんだけど……。


「アビスに命令してる偉い人?」

「そうにゃ。でも、気品が欲しいにゃ」

「ラミア様では、期待できないでござる」


 部下から、そう思われるなら間違いないだろう。

 他の神はいないんだろうか? ふとクリスを見ると、仮想スクリーンを開いて検索中だった。

 クリスも神殿の主としてクネルさんは問題だと感じたに違いない。

 直ぐに決めなくても良いんじゃないかな? じっくりと悩みながら、祠の形も一緒に考えた方が良いんじゃないかな。


 突然、眩しい光が管理室に広がった。

 どう考えても転移魔方陣の輝きだ。誰が来たんだろう?


「お久しぶりでありんす。主の迷い姿を見てやってきんした」

「クネルさんは忙しいでしょうに、俺達の様子を見てたんですか?」


「当然のことでありんすえ。私の大事な人でありんすから」


 となると、俺達の会話は聞いていたに違いない。

 ひょっとして、自分の像を使って欲しくてやってきたんだろうか?


「地下2階に小さな神殿を作ろうとしてるでござる。問題は神像なのでござるが……」

「私の像を使っても構いせん。倉庫にたっぷりとありんす。クロード殿の抱き枕用に2つ渡しんす」

「抱き枕はいらないにゃ! 邪魔になるにゃ」


 ミーヤさんが即答してくれた。でも、その答えだと1つは欲しいってことだよね。

 ここで妥協したら、直ぐに持ってくるんじゃないか?


「クネリさんの像って、毎年作るんですか?」

「そうでありんす。信者が欲しがりんす」


 俺の素朴な疑問を、クリスが問い掛けてくれた。

 像を毎年というからには、さぞかしいろんなポーズがあるんだろうな。でも信者ってことも気になるところだ。ラミア教なんてこの世界で聞いたこともない。


「かつては人間にも信者が多くいたでありんすが、今では魔族の間でひそかに信者がいるでありんす」

「魔王は寛大なのかい?」

「私が魔王に忠誠を誓っているでありんす」


 力関係ってことかな? クネリさんを神と讃えることは、魔王を認めるということになるわけだ。

 それにしても、ラミア族が神とはねぇ。後利益は何だろう? ちょっと気になってきた。


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