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6-07 ダンジョン内に2つのパーティ


 レイスのお婆さんに率いられたゴブリンの少年達が巧妙に冒険者達をダンジョンの西へと誘い込んでいる。今のところはスケルトンの出番は無いようだ。このまま西のはずれまで誘いこめば、ゴブリンの少年達の役目が終わりになるんだろうな。


「やはり熟練ってことかな?」

「光球を3つも使って探索してるにゃ。部屋に入る時には火炎弾を放ってるから、魔導士のレベルも高そうにゃ」


 今朝早く、ダンジョンに入り込んだ冒険者達は勇者と同じように魔導士と神官を揃えているようだ。

 リーダーの指揮の元、的確に部屋を確認している。

 

「やはり広間で仕掛けるの?」

「婆さんが火炎弾を放ってくれるにゃ。レイスだから壁をすり抜けられるにゃ」


 追って行っても意味が無いってことか。それでも消えた回廊に向かうんだろうな。スケルトンでどこまでやれるか……。場合によってはスケルトンの1個分隊が全滅しかねない。


「お婆さんに余裕があるなら、スケルトンが仕掛ける時に、火炎弾を放ってもらえるかな? 少し隙を作らないと仕掛けるスケルトンが全滅しそうだ」

「確認するにゃ。でも、こっちのゴブリン達を回収しないと婆さんは受けないと思うにゃ」


 自分達が世話をしているゴブリン達を帰還させてからということなんだろう。それは俺も賛成だ。


「かなり厄介なんですか?」

「勇者とは違った意味で厄介だ。それなりに腕の立つ冒険者ならスケルトン位の魔族なら容易に殲滅できる。本来ならスケルトンを避けさせたいぐらいだけど、小さなダンジョンでは彼らの報酬も限られている」


 宝箱も用意はしてるんだけど、クネリさんに貰った西の戦場で拾った武具だからねぇ。満足するとは思えないんだよな。

 先行している冒険者も宝箱ぐらいは見付けるだろうし、改めて入れるとなれば危険も伴う。

 あの手の冒険者が来るには、まだダンジョンが見合っていないのだが、それぐらいの判断が出来ないんだろうか?


「勇者の遺品が目当てなんでしょうか?」

「それしか考えられないな。だけど、今後のダンジョン運営にも使いたいから、宝箱に入れるのも問題なんだ」

「いろんな魔道具を持ってたけど、あれは残しておくのかにゃ?」

「1つぐらいは個人的に欲しいところだ。ここで上手くダンジョンが作れれば俺は解放されるからね。再び冒険者になってあちこち旅をしてみたい」


 ちょっとしたわがままなんだけど、3人が俺を見る目は蔑むというより、ちょっとおもしろそうな表情をしてるんだよな。目じりが下がってるぞ。


「クロード君の望みは叶えてあげたいにゃ。どれでも1つは持って行っていいにゃ」

「ミーナ姉さんも1つ受け取ってください。私は、必要なさそうですけど……」

「私も、1つ貰っていいでござるか? 気になる魔道具があるでござる」


 なんだかんだ言っても、皆欲しいってことかもしれないな。

 そんなことがあって、俺は素早さを上げる指輪を手に入れた。戦士が持っていたらしいけど、素早さ5割増しはチート過ぎる代物だ。ミーナさんは体力2割増しの指輪だし、アビスは魔力向上の指輪のようだ。

 クリスも1つということで手にしたのは腕力向上なんだけど、天使に必要なのか? まあ、本人が必要なければ、誰かにあげることもできるんだろうけどね。


「残りの宝石は売り払うとして、武具は宝箱でいいにゃ」

「宝石も2、3個あれば十分です。残りは同じく宝箱に入れましょう」


 そのまま入れるよりも、換金してからの方が良さそうだな。

 銀貨数枚でも、ここにやって来る初心者冒険者にはありがたいに違いない。


「アビス。宝石を換金できないか? クネリさんならその方法があるんじゃないかと思うんだけど」

「確認するでござる。これだけの宝石なら、かなりの金額になるでござるよ」


 勇者達の残したお金と合わせれば、数年は宝箱に入れることができるんじゃないか。

 それが知られれば、さらにこのダンジョンに来る連中が増えるだろう。


「宝箱を見付けて喜んでますよ。でも、あれってスケルトンの装備ですよね」

「売れば銀貨2枚にはなるからね。どうやらゴブリン達は戻ったみたいだ。ミーナさん、お婆さんに連絡してください!」


 かなり奥まで迷い込んでいるから、ダンジョンを出るのは明日になりそうだ。それまでの間に、後からやって来た冒険者達と接触することは無いだろう。新たな冒険者達の誘導先は東側になる。

 

「広間で一休みをしているにゃ。スケルトンに食いつくかにゃ?」

「難しいところだけど、ダメなら少し近づいても良さそうだ。やはり弓兵か足の速い魔導士が欲しいね」


 スケルトンの残念なところは弓兵がいないんだよね。ゴブリン族が最下位の弓兵なんだが、出来ればその上のクラスが欲しいところだ。もっとも、それに伴うマナが不足しそうだから贅沢はいえないんだよな。


「魔導士は皆足が遅いにゃ。レイスの婆さんは例外にゃ」


 足が速いというよりも、壁をすり抜けられるからねぇ。あのおばさんを倒すことは容易じゃないぞ。


「生きてる魔族は食料が必要だし、アンデッドは動きが遅いんだよなぁ」

「バンパイア……」


 クリスの何気ない一言に、全員の顔がクリスに向いた。

 確かにバンパイアなら動きは速いし、空も飛べるからね。魔法も使えるしレイピアという刺突に特化した様な長剣も使えるはずだ。


「どう?」

「調べているでござる。……1体で300マナが必要になるでござるよ」


「数は1体で十分にゃ。何とかしたいにゃ」

「でも、血を吸うんでしょう? 痛いのは嫌よ」


 クリスの言葉に、アビスに視線が集まった。ちょっと慌てて調べ直している。

 その結果分かったことは、マナで購入できるらしい。1か月でコップ1杯で十分らしいが、その対価は50マナということだ。年間600マナになってしまうな。派遣費用と合わせれば900マナということになる。

 やはり使える魔族は高額ってことになるんだな。


「俺達のダンジョンは冬は冒険者が来ないから、ダンジョン前の雪がある間は必要ないってことになるな。アビス、それでどれぐらい割引できるかクネリさんと調整してくれないか?」

「やってみるでござる。でも、魔族の派遣を値引きするのはここだけでござるよ」


 他のダンジョンは言い値ということなのか?

 だけど、勇者達にダンジョンを壊されているみたいだから、他のダンジョンで雇えなくなった魔族の引き取り手を探しているかもしれない。

 最初はゴブリン弓兵と考えてたけど、バンパイアも中々良さそうだ。


 とりあえず交渉をアビスに任せて、俺達はダンジョン内を移動している冒険者達を見守ることにした。


 ダンジョン内の時間経過は、蚊取り線香のような線香の燃える時間で知ることができる。かなり誤差はあるんだが、3日で半日はずれないからそれなりにつかえる代物だ。

 俺達が夕食を終えたころに、2つのパーティの動きが止まり、携帯用のコンロで食事を作り始めたようだ。

 灯油ランプに似た代物だけど、スープやお茶を短時間で作ることができる。

 それが無い場合は焚き火を作ることになるけど、焚き木を持ち歩くのは不便だからねぇ。ダンジョン探索が短期間で、それほど奥に行かないなら焚き火で済ませることもできるが、2つのパーティ共にかなり奥に進んでいる。


「今日は終わりにするのかな?」

「このままなら、西のパーティはもう1つ宝箱を見付けるにゃ」

「初心者なら、もう1日程度で帰るんじゃないかな。洞窟サボテンの実も手に入れたし、スライムの核だって結構集めたよ」


 初心者だけあって、丁寧に探索している。

 すでにゴブリンの少年達はダンジョンから去っているし、西にはスケルトンを配置していない。

 今日は1日中スライムだけだったのだが、探索に変化はない。

 それに引き換え東に向かったパーティは、かなり歩みを急いでいるように思えるな。

 このままだと、西のパーティがダンジョンを出る時に、大広間で合流するかもしれないぞ。


「明日の夕刻は要注意だ。2つのパーティが出合いそうだ」

「同士討ちを誘うのかにゃ?」

「どうなるか見てみよう。初心者狩りをするとは思えないんだが、無いとも言えないからね」


 前に1度そんな連中がやって来た時があった。

 万が一にも初心者狩りをするなら、出口をローリングストーンとゴーレムで閉じてしまおう。

 そんな冒険者は元冒険者として許せないし、他の健全な冒険者にとって害でしかない。

 勇者達と同様にこのダンジョンで始末してしまおう。

 本来の冒険者なら、このダンジョンで怪我をするのはしょうがないけど、出来るならダンジョンで命を落として欲しくはないところだ。

 

 翌日の昼過ぎに俺達が仮想スクリーンを見守る中で、2つの冒険者のパーティが大広間で出会った。

 先に広間に入ったのは、東に向かったパーティだった。金を塗った鉄の鎧を見付けたようだ。それほど金にはならないだろうけど、売ればしばらくは宿に泊まれるだろう。

 西のパーティが広間に入って、他の冒険者達に気が付いた時には戦闘になるかと思ってハラハラしたけど、どうやら顔見知りらしく近寄って握手をしていた。

 思わず、胸を撫で下ろしたところで待機中のゴーレムとローリングストーンを他の場所に転移させた。


「今夜は広間で一泊するみたいだな。外よりもダンジョンの中の方が危険が少ないってことか?」

「広間なら、洞窟サボテンに近づかなければ安心できるにゃ。スライムも少なくなってるにゃ」


 それに比べれば、荒れ地には野犬の群れやイノシシがいるからなぁ。盗賊達がダンジョンで暮らしていたのも、そんな危険を避けるためだったに違いない。


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