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5-09 町に出掛けて槍を売ろう


「たいへんありがたいお話でありんすが、クリスさんはそれでよろしいのでありんすか?」

「うん。私もクロードさんに賛成してる」


 勇者達を何とかしてから、数日後にやって来たクネルさんに15万バイトを手渡して、勇者達に破壊されたダンジョンの管理者達に渡して欲しいと伝えた。

 初めは俺達がからかっているんじゃないかと思っていたらしいけど、ミーナさんがズシリと重い革袋を持ってきたところで、目を見開いて俺達を見ていたんだよな。


「まだ勇者も持っているんでしょうけど、生憎とあの状態です。もうしばらく待ってから回収して再度お渡しします」

「ご恩に対して、どのように報いるかを考えないといけんせんぇ。 魔王とも相談しんせん事にはなりんせん。もし、対価をお望みなら前もって聞いておきたいと思いんすが?」


「特にありません。それよりもゴブリン弓兵をお貸しくださってありがとうございました。ゴーレムもかなり活躍してくれました」

「ゴブリン弓兵はレベルまで上がっていんすから感謝するならこちの方でありんすぇ。 そうそう、ゴーレムは冬季までお貸ししんす」


 改めてクネルさんに頭を下げる。

 ゴブリン弓兵は、はっきり言って過剰戦力に思えるが、ゴーレムはダンジョン拡張に使えそうだ。

 お婆さんの話しでは、魔気の濃いダンジョンの中なら失った腕は夏までに完治するらしい。


 ケネルさんが帰る時に、アビスも連れて帰るのかと思ってたんだが、アビスはこのまま残すと言ってくれた。

 それを聞いた時のクリスは本当に嬉しそうで、飛び切りの笑顔を俺達に見せてくれたぐらいなんだが、アビスは大きなため息を吐いていた。

 ぬいぐるみ扱いは覚悟してるってことなんだろう。


「まだ、町には出掛けないのかにゃ?」

「もう、数日待った方が良いかもしれない。町には歩いて5日程掛かるからね。いくら何でも勇者が倒されたと知らせるには早すぎるだろう?」


 その後の動きも気になるところだ。

 勇者さえ攻略できないダンジョンとして、我こそはと名乗りを上げる冒険者がいてくれると助かるんだが、怖気づかれて誰も近寄らなくなったら俺達の生活に支障が出てしまいかねない。


「なら、明日は狩りに出掛けるにゃ。町に行くなら手土産は必要にゃ」

「お願いしますね」


 ミーナさんには少年達を鍛えて貰おう。

 クリスとアビスには仕掛けた罠を解除してもらってるんだけど、たくさん仕掛けたみたいで、残った罠がまだまだありそうだ。

 仕掛け弓は2日間掛けて撤去したみたいだけど、落とし穴は、仕掛けた本人さえどこに仕掛けたか忘れてるみたいだ。少なくとも、スライムを入れた落とし穴だけは戻しておかないとスライムがかわいそうに思えるな。

 

「魔族はダンジョンに戻ったみたいだけど、ダンジョン作りは進行してるんだよね?」

「大丈夫。この2つの部屋は手前に土砂を運んで塞ぐけど、それ以外は東も使えるよ。それに、ダンジョンレベルが3に上がったの!」


 やはり、部屋数じゃなくて回廊の広がりがダンジョンの面積になるんだな。東を開放したなら確かにレベルは上がったろう。

 となると、ゴブリンの召喚にマナは必要なくなるし、スケルトンをクネルさんの厚意でなく、俺達の計画に合わせて呼ぶこともできるだろう。


「そうなると、少し欲を出したくなるね。だけど、ダンジョンの1階は低レベルの冒険者でも入れるぐらいが丁度良い。スケルトンを越える魔族は地下1階以下で召喚しよう」

「そうなると、ゴーレムは拡張工事に使えるにゃ。でもまだ地下階は部屋を作ってる途中だから、それまでは広間に飾っておくにゃ」


 もったいないけど、低レベルの冒険者には手も足も出せないだろう。

 モイライ像の守護をしていてもらえば、それほど不自然には思われないんじゃないかな?


 勇者を【転移】の無間地獄に誘い込んで15日目に、ミーナさんと町に向かった。

 予定より少し遅れたのは、ミーナさんが鹿の群れを見付けたせいなんだよね。3頭狩って2頭を袋に入れると、神官の女性の得物である短槍を手に町に向かって坂を下る。


「先ずは肉屋にゃ。その後で雑貨屋、最後にギルドにゃ?」

「それで良いんじゃないかな。一応、彼女の遺品だからね。戦士の装備は冒険者のお土産で良いと思うんだ」


 俺の言葉にちょっと顔を曇らせたのは、武器屋に売ろうと考えてたのかな?

 高く売れそうだけど、あまり欲張ったりしたら勇者のようになってしまいそうだ。


 町に入ると、肉屋に鹿と野ウサギを卸す。野ウサギは7匹だから、全部で390マナで売ることができた。野ウサギが少し安くないか?

 話を聞くと冒険者達が狩ってくるそうだ。買い手市場になってしまうと安くなるのは仕方がないんだろう。


 雑貨屋ではいつものように雑穀とビスケットを買い込む。ワインは安物を2本にしておこう。


「今年も頑張らないと、2年後がきつくなりそうだ」

「焼き畑に種を撒いたみたいにゃ。今年も畑を広げるって言ってたにゃ」


 とはいえ、育てているのはカボチャにジャガイモと豆だからねぇ。やはり穀物というわけにはいかないみたいだ。

 そんな話をしていると、目の前にギルドの扉があった。

 さて、ここは上手く芝居をしないとな。


 バタン! と扉を開けると、ホールの連中が俺達に視線を向ける。

 いつもなら直ぐに興味を無くしてホールにざわめきが戻るんだが、今日はそうはならなかった。


 カウンターに歩いていく俺達を追って視線が動いているのがわかる。

 カウンターのお姉さん達も、ジッと俺達を見つめたままだ。いや、正確には俺の持つ短槍を見ているのだろう。


「これを買い取れるか? 武器屋でも良いんだが、かなり立派な槍だからねぇ。ギルドの方が間違いが無さそうだ」

「拝見してもよろしいでしょうか?」


 少し口調が固いのは、それだけ緊張しているんだろうな。いつもなら軽い世間話を始めるんだけどね。

 持ってきた短槍をカウンターに置くと、直ぐにギルドのお姉さんが両手に取って穂先を調べている。

 何か付いてるのかな? 見たまま、魔石が埋め込まれているだけに思えるんだけど。


「失礼ですが、どこでこれを?」

「東のダンジョンで拾ったんだ。獲物がない時にはスライムの核があのダンジョンで手に入るからね。大きな広間の真ん中付近で見つけたぞ」


 俺の言葉に溜息を吐いている。

 信じたということかな?


「10日程前に王都の本部から連絡がありました。ギルドの入り口近くで、勇者と同行していた魔導士が息絶えていたそうです。やはり神官も亡くなったようですね。他には何かありましたか?」

「俺達が見つけたのはこれだけだった。結構な品だと思うんだが、買い取ってくれるとありがたい。ここで無理なら武器屋に持って行くが」

「ここで買い取れると思います。少しお待ちください」


 お姉さんがそう言って、短槍を手に奥の扉の向こうに消えて行った。

 さて、どれぐらいの値が付くんだろう? 金貨1枚にはなるかもしれないな。


「兄ちゃん達は、猟師だったよな?」

「ええ、10人ほどで山を巡ってます。今年は山の獲物も豊富ですが、この近くは余り野ウサギが捕れませんね」


 カウンターに背中を預けて、俺に話しかけてきた冒険者に話を始めた。

 ニヤリと笑っているところをみると、野ウサギ狩りをしている連中なんだろう。


「そりゃあ、悪かったな。勇者様が来るってことで近場の猟で我慢してたんだ。明日は北に行ってみるか」

「俺達は東に向かいますから、互いに矢を合わせることも無いでしょう。鹿だけでなく猪も見かけましたから注意してください」

「そりゃあ、楽しみだ。ところで、あの槍の出どころは本当なんだな?」

「東のダンジョンの大広間に間違いありません。出掛けるなら解毒薬を持った方が良いですよ。落とし穴にスライムが入ってました」


 このぐらいの深さですけどねぇ。と言いながら両手で穴の深さを教えるとホールから笑い声が起こった。


「子供のいたずらじゃねぇか! だが、スライムとはなぁ。ありがたく情報を頂くよ」

「まったくです。とはいえ、陰険な罠に思えます。そのままでは、物騒この上ないですからね」


 痺れるだけでも、スケルトンとは戦うこともできまい。毒ならなおさらだ。

 一応伝えたから、後で文句を言われることも無いだろう。


 扉の開く音でカウンターに体を向ける。槍を持って行った筈なんだが、俺達の前に戻ったお姉さんは何も持っていない。


「ギルドマスターが買い取るそうです。槍の値段は1万5千バイト。本来の値段の5割増しだそうです」

「そんなになるんだ! それなら売りたいけど」


 俺の驚いた表情に笑みを浮かべたお姉さんが金貨と銀貨をテーブルに並べてくれた。

 ミーナさんが急いで回収したところで、出口に足を向けると、慌ててお姉さんが俺に声を掛けてきた。


「待ってください。貴方達は猟師ですよね。猟師がダンジョンの奥に足を運んでも大丈夫なんですか?」

「ん? 俺達の技量ってことか。弓が5人に槍が5人もいるんだ。あのダンジョンで何度かスケルトンに遭遇したけど、十分に追い払うことが出来たぞ。もっとも、相手が多い時には、我先に逃げ出した時もあったけどな」


「いつもは数体にゃ。それぐらいなら狼の群れの方が手ごわいにゃ」

「そうですか……。すみません、足をお止めして」


 俺達に深々と頭を下げたのを見て、片手を振って何でもないと伝えておく。

 さて、送り狼がやってこない内に引き上げよう。


 足早に町を離れると、後ろも見ずに北の森を目指す。

 ちらりとミーナさんを見ると、小さく頷いてくれたから、やはり数人が俺達を追っているのだろう。

 金貨を見たことがないんだろうか? 銀貨100枚の値打ちがあるんだから、収入の少ない冒険者なら目の色も変わるだろうし、不心得者も出てくるのは仕方のないことなんだろう。


「もう直ぐ森に入るにゃ。そしたら直ぐに【転移】にゃ」

「それまで待ってくれるかなぁ」

「その時は、その時にゃ! 背中の片手剣は飾りじゃないにゃ」


 そうはいってもねぇ。そんなに強くはないんだよな。

 かといってミーナさんに頼るのも、俺の矜持が砕けそうだ。

 ここは、足を速めてそんなことが起こらないようにしないといけないな。


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