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11/16

初めての

 サイクロプスと軍隊が戦っている平野に到着すると、戦いは人間側の優勢だった。

 サイクロプスの足を傷だらけにしたことで、動きを完全に封じている。


 どうやら領主の采配がかなり上手く行ったらしい。

 ぶっ飛んでいる人だと思ったが、娘以外のことは優秀みたいだ。

 それなら俺たちの援軍が入れば、サイクロプスに負けることはない。


「そのでかい目を狙い撃つ」


 弓を引き絞り、矢を放つ。

 その矢がサイクロプスの目に刺さってあげた悲鳴が俺たち援軍の登場する合図となった。


「さすがシグルド。我が娘の婿であるな!」

「領主がこんな時に何言ってるんですか!?」

「これからは我が輩のことはお義父様と呼びたまえ!」

「本当に何言ってるんだよ!?」


 決してコント開始の合図なんて出してないんだが!

 あぁ、もうさっさと終わらせてやる。


「普通に死ね!」


 やけくそになりながらもう一発矢を射る。

 すると適当に放ったはずの矢はサイクロプスが瞑った目にもう一度突き刺さり、貫いた。

 大地を振るわす断末魔が鳴り響き、爆発のような音を立ててサイクロプスが倒れる。

 やけくそになってもギフトはちゃんと発動するんだな。普通に死なれて逆に驚いたよ。


「すごい。あれが噂のシグルド殿の力!」

「領主様が肩入れするのも納得だ」


 これで街は救われた。

 奇しくも俺は今回の大型魔物騒ぎの全てと戦ったことになる。

 しかも、普通に勝ててしまった。


「素晴らしい! 婿殿、いや、よくやった我が息子よ!」

「だから婿入りなんてしてないって!」


 娘のことになるとホント残念な人になるなぁ!

 これ以上一緒にいると面倒なことになりそうだし、さっさと帰ろう。最後にドッと疲れたしな。


「はぁー……ギルドへ報告しに行ってさっさと寝よ……。街への報告は俺がやってくるよ」

「そうだな。我が輩達は敵の後詰めを警戒しながら撤退する。冒険者は報告のために帰還せよ」


 クエストは帰るまでがクエスト。

 領主の計らいで、俺たちは先に街へと戻った。

 入り口ではギルドの受付が祈りながら待っている。

 不安でいてもたってもいられなくて外に出てきたってところかな。

 早めに戻ってきて良かった。


「あぁっ! シグルドさん! ということは無事ホワイトフェンリルもサイクロプスも撃破できたのですね!?」

「あぁ、ほら、あれが剥ぎ取った素材」


 ホワイトフェンリルの毛皮やサイクロプスの筋繊維といったものを運ぶ荷台を指さした。

 その荷物を見て受け付けが膝から崩れ落ちた。


「はぁー……良かった」


 でも、すぐに鑑定のためにと立ち上がり、プロ根性を見せてくれる。

 回収してきた素材を一通り見て回り、メモを書いている。


「それでは最後に冒険者の皆様のレベルも確認しますね」


 大型の魔物は経験値も多い。

 もしかしたら、これでリンネもオフェリアもレベルが上がっているかもしれないな。

 俺は多分全然変わらないだろうけど……。


「シグルドさんゴールド冒険者に昇級おめでとうございます」


 どうせ冒険者ランクが上がるくらいだ。


「それと、レベルが上がっていますよ。ステータスも全て70に上がっています」

「……へ?」


 嘘だろ? 今までどれだけ戦ってもステータスが変わらなかったのに?

 でも、受付が渡してくれたステータスは確かに前と全然違う。

 このステータス、言うなれば――。


「普通に強いステータスね」

「ですね。普通にすごいステータスです」


 のぞき込んできたオフェリアとリンネが俺と同じ感想を抱いている。


「あ、もしかして、シグルドさんのステータスって、みんながシグルドさんをどう思うかで変わるんじゃないですか?」

「みんなが強いと思えば強くなって、弱いと思えば弱くなるってことかしら?」

「そうです。シグルドさんが強いのが普通、シグルドさんが弱いのが普通。そう思われることでシグルドさんの心の持ちようが変わったら、ステータスもきっと変わるんですよ」


 リンネの仮説に俺とオフェリアはポンと手を打った。

 なるほど。確かに心の持ちようは変わったな。

 普通というギフトに負い目は無いし、自分が弱いと思うこともなくなった。

 そして、周りの評価もかなり変わった。


「なるほど。俺のギフトは思い込みの強さで発動するものだけど、周りの影響も受けるってことか」

「はい。みんなの評価も上がった今のシグルドさんなら、もう勇者も目じゃないですね! 魔王もシグルドさんが普通に倒しちゃいましょう」

「そうね。魔王は勇者しか倒せないなんて誰が決めたって話よ。シグルド様なら普通にサクッと倒せるわね」


 前なら酔っ払っていなければ信じられなかった言葉だけど、今では信じられるようになっている。

 俺は普通に強くなれる。

 ちょっと普通じゃない方法だけど、活躍すれば活躍するほど強くなれるという意味では普通だ。


「よっしゃああああ!」


 初めてのレベルアップとステータスアップに俺は人目も憚らず喜びの雄叫びを上げた。

 俺はもっと強くなれるんだ。

 絶対に勇者よりも強くなってみせてやる。んで、また会えた時に絶対に言ってやろう。

 ざまあみろって!


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