再戦
「じゃあ作戦を決めちゃおうか。」
周りを見渡すと頷いたので先に進めることにする。
「まず確認だけど、ボスがオーガで、取り巻きに盾と剣を持った動けないゴブリンだったな。」
「じゃな、ゴブリンは動けないだろうから無視しても良いんじゃないかの。」
「そこでだ。まず先ほどと同様にアイリの範囲攻撃での先制を行ってもらう。」
「まかせて~!」
「後はビアンカを前にして俺達が周りから……ってさっきと同じパターンじゃん。」
「いや、今のあたい達だと、これが一番安定する戦い方じゃと思うんじゃが?」
「そうなんだけどね。どうせならより安全に戦える方法を模索するのも悪くないと思うんだけど、どうかな?」
「私はハルさんの意見に賛成です。」
「そうだね~私も~!」
「……そうじゃな。じゃが、どうすれば良いんじゃ?」
「攻撃される前に倒す!」
シャルはやる気満々で答えたんだが、何か違う様な気がするのは気のせいだろうか?
「えっと、シャルさんや。その通りでは有るんだけど、どうやるんだ?」
「近づいてドーン?」
首をかかげて可愛く言ってくれたのは御馳走様なのだが、そうじゃない!
「それは正面から突っ切ってってことだよな?」
シャルが頷いた。
「はい、却下。他には?」
シャルがショックを受けた顔をしたが、俺がそんなの許可する訳ないじゃん。
「私にも遠距離で攻撃出来る手段が有れば、多少ダメージを負わせられると思うのですが、難しいですよね。」
「遠距離か……」
最近薙刀を使うようになったからアイテムボックスの肥やしになっていたが、短槍ならやり投げの要領で遠距離攻撃として使えるな。後はスリングショットも有ったな。
他にも高温の高圧洗浄ってのも有るな。最近使わなかったから忘れていたが、俺って結構遠距離攻撃する手段を持ってるじゃん!
とりあえアイテムボックスの中身を確認しつつ、短槍とスリングショットを取り出した。後は石……あっ!
すっかり忘れていたが、そう言えば謎の石が有ったな。確かこの石って投げた程度の力でも、ホーンラビットの角を折ったんだっけ。
もしこれをスリングショットで飛ばしたらどうなるんだ?
「ちょっと試してみたいことが有るんだけど、良いかな?」
「スリングショットか。悪くは無いのじゃが、オーガ相手には大したダメージは与えられないのでは無いのかの?」
「そうかもしれないけど、ちょっと確認と言うか、確かめてみたいんだ。」
「まぁ、ハルがそう言うならあたいは構わないのじゃ。オーガ1匹程度なら対応出来るのは実証済みじゃしな。」
「私も問題無いよ~」
「はい。大丈夫です。」
「ん。」
「ハル様、頑張ってください。」
結局さっきと同じ戦闘方法で戦うことに決まった。
違うのは動けないゴブリンは無視することと、俺が謎の石によるスリングショットを使うってことくらいだ。
「よし、行ってみようか。」
「「「「「はい(なのじゃ)!」」」」」
扉を開けて中を覗くと、先ほど燃やしたスライムが残っていたので、部屋の中が見えたのはラッキーだった。
ただ、オーガは距離が離れているためか、遠くに何か人型の何かが居るってのが分かる程度だったが。
俺は部屋の中に入ると同時にスリングショットを回し始めた。
全員が部屋の中へと入ると、敵も行動を開始したみたいだ。
『我求めるは静かなる水、荒れ狂う吹雪で相手を凍らせ、ブリザード!』
まずはアイリさんの範囲魔法による先制攻撃だ! 部屋の中に吹雪の嵐が巻き起こり、敵を巻き込んだ。
「グオォォ~!」
もちろんこの程度でオーガがやられる訳が無い。再度こちらに向けて突進してきた。
十分引き付けたところで、スリングショットをお見舞いしてやる!
「行けっ!」
それなりの速度で飛んで行った謎の石だが、オーガ的には避ける必要も無いと判断したらしく、左手で謎の石を弾き飛ばす様に腕を振った!
バキャ!
謎の石は弾き飛ばされるどころか、何と叩きつけたオーガの拳をズダズダに破壊したのだった。
有り得ない現象に動きが止まったオーガ。そこにシャルの影が入り込み、必殺のパイルバンカーでトドメを刺した。
「相変わらず訳の分からん石だよな。」
俺は謎の石を拾ってそうつぶやいた。
「な、何じゃその石は!!」
「あれ? ビアンカには見せたこと無かったっけか?」
「知らないのじゃ。」
「ちょっとそれを見せるのじゃ!」
ビアンカさんがそう言うと、俺が持っていた石を奪い取った。
そしてしみじみとその石を観察している。
「ハル君ハル君、お姉さんもそんな石は見たこと無いんだけど?」
「私も初めて見ました。」
「知らない。」
「私はハル様がスリングショットを使うこと自体初めて見ました。」
「あれ?」
そーいや謎の石は手で投げていた時くらいにしか使ってなかったか?
それで、スリングショットを使うようになった頃からは、普通の石を使うようになった様な……
「こんな石、いや金属か? こんなの見たこと無いのじゃ! 何なのじゃ! この石は!!」
「さあ? 拾った物だし、よく分からないな。」
「何処で拾ったのじゃ!」
「前にも言ったけど、俺がこの世界に来た時のあの場所に落ちてたんだよ。」
「そうか……」
ビアンカさんが残念がっていたが、こればっかりは仕方が無いと思う。
「それで、コレが何なのか分かったのか?」
「多分としか言えないのじゃが、おそらくコレは精霊石じゃないかの。」
「精霊石?」
「我々ドワーフ族で語り継がれている幻の石と言うか金属じゃな。オリハルコンよりも堅いとされておる。
昔、神の武器を作る際に使われたと伝えられておるのじゃ。」
「神の武器……」
何か凄い話になっているんだが……これ持ってても大丈夫なのか!?
「ただ、あたいはその精霊石の存在を伝えられている内容を聞いただけじゃからな。それがそうなのかは分からないのじゃ。」
「そっか。とりあえずコレはヤバそうなのでしまっておくわ。」
俺は謎の石改め精霊石をアイテムボックスへと収納したのだった。




