地下10階 6
戦闘による疲れを癒し、シャルに使用した分のHPポーション改を渡した後は、攻略の続きを行うことにした。
今居る部屋は入って来た左側の扉以外に、右と下の扉が有った。
「えっと、確か次はナタリーの番だったよね。どっちに行く?」
「覚えててくれたんですね!」
「うん。」
流石に忘れてたら後で何を言われるか分かった物じゃない。まぁ、ナタリーさんなら拗ねるだけかもしれないけどね。
「じゃあ、下でお願いします。」
「了解。じゃあ下の扉を行くぞ。」
「「「「「は~い(なのじゃ)。」」」」」
俺は扉のトラップを調べ、何も無いことを確認した後は、扉を開けて先に進むことにした。
扉の先には真っすぐ伸びた通路が有り、左右には柱が並んでいた。
「今度こそボスが出そうな雰囲気だな。」
「だね~」
「とりあえず注意しながら進むぞ。」
俺はトラップに注意しながら進んでいく。しばらく進むと豪華な扉が前方に見えた。
「どこからどう見てもボス部屋だよな。」
「やる!」
フンス! とシャルがやる気を出している。
「確か地下10階のボスはオーガだったな。行けるか?」
「問題無いのじゃ。」
「私も大丈夫だよ~」
「頑張ります!」
「私も大丈夫です。」
全員やる気満々だ。
「よし、入るぞ!」
「「「「「はい!!」」」」」
俺は扉を開けて中を確認する。中は真っ暗で何も見えない。
俺は覚悟を決めて中に入ることにした。
「ティア、左にスライム!」
俺の指示と共に、ティアさんが左方へと火の玉を飛ばしてスライムに火を点けた。いつもならコレで全体が見渡せるはずだが、敵も壁も見えなかった。このエリアはかなり広いらしい。
でも、見えないとは言え、前方に4つ……いや、1つだけ右前方に離れているのが確認できた。
「前方に3、右前に1、回り込んでくるかもしれないから注意! 来るぞ!!」
「前は任せるのじゃ!」
「行く!」
ビアンカさんが盾を構えて前に出る。シャルは右前の敵へと走り、ナタリーさんが後に続く。
俺はビアンカさんの左から回り込むように移動した。
「スライム!」
そこにシャルの声が届いた。どうやら右前の敵はスライムだったらしい。すぐさまティアさんが見える位置まで移動して炎の矢を飛ばすことでスライムに火を点けた。
これで部屋全体が見渡せるようになった。そこで敵の情報がハッキリと分かった。オーガが1匹にゴブリンナイト……いや、動けないゴブリンが2匹だ。
『我求めるは静かなる水、荒れ狂う吹雪で相手を凍らせ、ブリザード!』
そこにアイリさんの範囲攻撃が飛び、3匹をまとめて攻撃した。
魔法の効果が終わると、オーガだけが残っていた。まぁ、ゴブリンナイトだったら耐えただろうけど、ゴブリンは……ねぇ?
何はともあれ、これで残り1匹!
「このっ!」
ビアンカさんの一撃が、オーガへと繰り出したものの避けられてしまった。そしてカウンターの攻撃がビアンカさんを襲う!
ガン!
オーガの攻撃を盾で防ぐが、オーガが素手のため、左右の拳による素早い連続攻撃を繰り出している。
ガンガンガン!
「くっ!」
流石に吹っ飛ばされるほどじゃないが、結構重い攻撃みたいで、ビアンカさんが顔をしかめている。
「てぃ!」
俺はビアンカさんをフォローするためにオーガの右脇腹目掛けて突きを繰り出した。
スカッ!
オーガはバックステップで下がることで俺の攻撃を躱した。やるな!
オーガは、標的を俺へと変えて向かってこようとした。
「炎の矢!」
そこに絶妙なタイミングでティアさんの魔法が飛んできた。
「グオォ!」
左肩に命中! 一瞬意識が痛みへと移り、怯んだのをチャンスに再び突きを繰り出した。
意識が左肩に行ってるので、狙うのは反対側の右足太ももだ。
ザクッ!
今度は見事に当てることが出来た。……が、俺の薙刀を掴まれてしまった。ま、不味い!!
オーガは薙刀を引き抜き、俺ごと持ち上げる。なんつー力だよ。
そしてそのまま振り下ろ……
「行けっ!」
そこにシャルが背後から迫り、必殺のパイルバンカーを繰り出した。
「グオオォォォ……」
オーガは息絶えた。俺達の勝利だ。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
短い戦闘だったが、俺達は息が上がって座り込んでしまった。
「た、助かった。」
「さすがはオーガじゃな。」
「みんなお疲れ~」
「あまり役に立てませんでした。」
「お疲れ様です。」
「頑張った。」
「そうだな。今日のMVPはシャルだな。」
「えむぶいぴー?」
「勝利者って意味だよ。」
そう言って俺はシャルの頭をなでなでするのだった。




