ゴブリンデー
ダンジョンに到着したので早速攻略していくことにする。
「それじゃあ、前回の攻略した所まではサクッと行きますか。」
「「「「「おー(なのじゃ)!」」」」」
サクサク進んで地下4階のボス部屋までやって来たのだが、今日に限ってやけに人が多かった。
とは言え、順番を抜かすわけにも行かないため、我慢して並ぶことにする。
「それにしても今日は人が多いな。何か有ったのかな? 誰か知ってる人いる?」
「すまん、知らないのじゃ。」
「私も知らな~い。」
「すいません、分からないです。」
「お肉を落とすとか?」
「申し訳有りません。」
「みんな知らないか。まぁ多いと言っても、いつもの2倍程度だ。我慢して待ってようか。」
「そうじゃな。」
「だね~」
「分かりました。」
「面倒。」
「はい。」
大して疲れてはいないが、とりあえず休憩することにした。
腰を下ろすと、前に並んでいるPTが声を掛けてきた。
「なんでぇ、あんちゃん達は何が有るのかを知らないのか。」
「ええ、調査不足で恥ずかしい限りです。」
「何と今日は、年に1度のゴブリンデーなんだ!」
「な、なんだってー! じゃなくて、ゴブリンデー? 何ですかそれって。」
「ここのボスってボブゴブリンだろ? それが今日は全てゴブリンに変わるんだよ。だから低ランクの冒険者がこぞってやって来るって寸法さ。」
「なるほど、そう言う理由が有ったんですね。」
俺達はゴブリンだだろうか、ボブゴブリンだろうが問題無く狩れるからどちらでも構わないが、上位種のゴブリンに自信が無い冒険者にとっては美味しいのかもしれない。
確かに冒険者になったばかりの頃はゴブリンでも狩るのにも苦労した記憶が有るな。納得だ。
「あの、もしかしてですが、地下5階のボスも変わったりしてるんですか?」
「その通り、普段ならゴブリンナイトだろ? 今日はゴブリンが盾と剣を持ってるんだ。笑いが止まらないぜ。俺達もここが終わったらそこに行くつもりなんだ。」
「そうなんですね。ありがとうございました。」
どうやら今日はゴブリンしか出ない日らしい。地下4階で足止めされている人も地下5階も問題無く行けるってことか。だからこんなにも混んでいるんだな。
ふと、地下20階のボス、ゴブリンキングもゴブリンに変わっているのだろうか? それなら俺達でも攻略できそうだ。
あっ、でもゴブリンに変わってしまうと言うことは、魔石は落とさ無くなるのか。残念。
それにしても、思った以上に列が進むのが早いな。もうすぐ俺達の順番になるぞ?
そして、先ほど色々と教えてくれたPTの順番となった。
「よし、俺達の番だ。お先に。」
「頑張ってください。」
俺がそう言うと、少し変な顔をした。
「まぁ、戦ってみれば分かるさ。」
「?」
何か意味深なことを言って、ボス部屋の中へと入って行った。
「どう言うことだろう?」
「さあな。行ってみれば分かるじゃろ。」
「それもそうか。」
そして、入ってから1分もしない内に扉が開いた。
「終わったぞ。」
先ほどの男性が顔を出した。いくら何でも早すぎじゃね?
そして扉が閉まったので、いよいよ俺達の番だ。
「じゃあ行くよ。」
「「「「「はい(なのじゃ)。」」」」」
扉を開けて中に入ると、教えて貰った通りにゴブリンがロングソードを持って立っていた。
「行く!」
シャルが飛び出した。まぁ、今のシャルなら何の問題は無いとは思うが、一応用心のために俺も追いかけた。
向かってくるシャルを見て、ゴブリンが迎え撃とうと動き出……
グシャ!
それより先にシャルの攻撃が当たり、ゴブリンは死んだ。当然の結果だな。
と言うか、気のせいかもしれんが、何かゴブリンの動き変じゃ無かったか?
「っと、考察は後にするか。」
後ろがつっかえてるからな。急いで次の人に知らせてさっさと下に向かうことにした。
地下5階へとやってきた。ショートカットを使ってサッサとボス部屋へと向かう。
先ほどの話を聞いていたから知ってはいたが、ここのボス部屋もかなりの列だ。と言うか、いつもは2、3組程度なのに、今日は数えるのも嫌になる程だ。
とは言っても並ばない訳にもいかないので、仕方なく最後尾へ並ぶことにした。
「よぉ、来たな。」
当然さっきのPTの人達が居た。
「お疲れ様です。」
「楽勝だったろ?」
「そうですね。」
「ここのボスはもっと楽だぞ?」
「そうなんですか?」
「まぁ、戦ってみれば分かるさ。」
「そうですね。」
地下4階の列より長いにも係わらず、進む速度は先ほどより早かった。
思ってた以上に早い時間で前のPTの順番になった。
「じゃあ行って来るぞ。」
「頑張ってください。」
「おう。」
そう言って中に入るが、30秒ほどで出てきた。早すぎじゃね?
「ほら、お前たちの番だ。俺達は此処で周回する予定だ。」
「は、はぁ。」
男性のPTは列の最後尾へと向かって行った。何か色々と腑に落ちない所が有るが、とりあえずボス部屋に入ることにした。
中に入ると、盾とブロードソードを持ったゴブリンが居た。再びシャルが飛び出していく。
「シャルちょっと待って!」
俺が叫ぶと、シャルが急停止した。
「ハル! 戦闘中じゃぞ! 危ないじゃ……ろ?」
ビアンカさんが盾を構えて前に出たが、ゴブリンからの攻撃は一切無かった。
正確には攻撃しようとしているのだが、盾が重くて動けないのと、ブロードソードが重くて剣が振れない状態だ。
要は武器と防具を持ったかかしである。
「なるほど、先ほどの違和感はこれか。」
ブロードソードよりはロングソードの方が軽いため、何とか攻撃だけは出来たって訳か。
今回は全く動けない状態だ。そんなに重いんだったら武器を捨てたら良いのに、何で捨てないんだろう?
「まあいいや、これ誰か倒したい人?」
すかさずシャルが手を上げた。他の人は特に反応が無かったため、シャルにお願いすることにした。
「じゃあ、お願い。」
「ん!」
攻撃も防御も出来ないゴブリンは。見ていて少し可哀相だった。なむ……
扉を開けて、次の人に声を掛けた俺達は、地下6階を目指して階段を降りるのだった。




