屋台
「それで俺は何をすれば良いですか?」
「私が材料を切るから、貴方はそれを揚げて貰えるかしら?」
「了解。」
えっと、すぐに出来るポテトチップから揚げるか。
ジュワアアアァァァァ~~~!
「一丁上がりっと!」
次にポテトフライっと。
ジュワアアアァァァァ~~~!
「よし、次!」
次はから揚げか、出来れば2回に分けてあげた方が良いんだけど、そうすると温度管理がなぁ……
おっと、そう考えている内にポテトチップの在庫が売り切れてしまった。
「から揚げまだぁ?」
「は、はい。直ぐに揚げます!」
仕方ない、揚げるのは1度だけにしよう。
ジュワアアアァァァァ~~~!
から揚げを揚げている最中にポテトフライの在庫も無くなってしまった。だけどから揚げはまだ揚がりきって無い。
「ロザリーさん、これ鍋1個じゃ間に合わないですよ!」
「分かってるわよ! 私だってこうなると思わなかったんだもん、仕方ないでしょ!」
逆切れされてしまった。確かに言いたい気持ちは分かるんだけどさ。でも、待たせる客がイライラしているのはちょっとマズイか?
アイテムボックス内に野営用の鍋とかは有るが、さすがにここで獲り出すわけにも行かないし、どうすっかな。
「ハルじゃないか、こんな所で何をやっておるのじゃ?」
「!! ビアンカ、良い所に来てくれた!!」
「な、なんじゃ!」
「ロザリーさんのお店に行って、鍋と、かまどになる石を持って来てくれないか?」
「何を言ってるのじゃ、鍋ならハルが持ってるでは無いか。」
「こんな人前で出せないだろ?」
「あっ……そうじゃったな。よし分かったのじゃ!
で、ロザリーとやらのお店は何処なのじゃ?」
「ほら、この前食堂の依頼受けただろ? あそこのお店だ。」
「なら行って来るのじゃ。」
「頼んだ!」
嫌な顔をせずに頼みごとを聞いてくれたビアンカさん、マジ女神! 後で何かお礼をしてあげないとな。
鍋さえ有れば、この状況も何とかなりそうだ。とりあえず今は少しでも頑張って揚げるとしよう。
・・・・
「持って来たのじゃ。」
「ありがとう! そこにかまどを作って貰っても良いか?」
「仕方ないの、最後まで手伝ってやるとするかの。」
「すまん。ほら、駆け付け一杯だ。」
俺は屋台のエールを1杯ビアンカさんに差し出した。ロザリーさんが一瞬目を見開いてこっちを見たが必要経費だ。文句は言わせん。
「やったのじゃ! 流石はハルじゃ!」
そう言ってこっそりと冷やしておいたエールを受け取り、美味しそうにゴクゴクと飲んだ。
「ぷはぁ~! 最高なのじゃ!
どれ、やるとするかの。」
エールを飲んだビアンカさんはやる気満々だ。
「かまどが出来たら、鍋に油を入れて火を点けてくれ。」
「任せるのじゃ。」
よし、これで勝つる!(何に?・笑)
・・・・
「終わった~!!」
「疲れたのじゃ。」
「お疲れ様~ ホント助かったわ♪」
結局ビアンカさんにも手伝ってもらって屋台は無事に完売したのだった。途中で何度か逃げ出したくなったが、最後まで頑張った俺を褒めてあげたい。
流石に材料が無くなってまでは文句を言う人は居なかったのは助かった。何はともあれようやく一息つくことが出来たのだった。
「そーいや、ビアンカはどうして此処に来たんだ?」
「今更じゃな。」
「うっ……しゃーないじゃん、そんな余裕なんて無かったんだし。」
「確かに。まあ良いじゃろう。何、上手い屋台が有るって噂を聞いたからな、酒のつまみに良いかと来てみただけじゃ。
まさかハルが此処にいるとは思わなかったのじゃ。」
「俺もたまたま会って無理やり手伝わされただけで、やる予定じゃ無かったんだよ。」
「相変わらずと言うか、ハルらしいの。」
「ほっとけ。」
俺達がそんなことを話ししていると、ロザリーさんがやって来た。
「ちょっと良いかしら?」
「あ、はい。」
「なんじゃ?」
「今日の手伝ってもらったお礼をしたいのだけれど、どうしたら良いかしら?」
「どうすると言っても、どうするんで?」
「そうねぇ、お給金として銀貨2枚でどうかしら?」
「ふむ、あたいは構わないが、ハルはどうじゃ?」
「俺も別にそれで良いかな?」
「ありがとう、本当に今日は助かったわ。それじゃ、はいこれ。」
そう言ってロザリーさんが銀貨4枚を渡してきた。
「あれ? 銀貨2枚じゃ?」
「だから一人銀貨2枚よ?」
「あ、そういうことね。んじゃ有難く頂きます。」
「また次の時も宜し……」
「いえ、遠慮しておきます。次は客として伺うことにします。」
「あら残念ね。」
本当に残念そうにしているが、あの忙しさは勘弁して欲しい。
「次はもっと準備をしっかりして、店員を雇った方が良いですよ。」
「そうするわ。じゃあまた今度。」
そう言ってロザリーさんは屋台の片づけを始めたので、俺達も帰ることにした。
「ビアンカ、今日は休みなのに手伝ってもらって悪かったな。」
「何、たまにはハルとこうして一緒に仕事をするのも悪く無かったのじゃ。」
「そっか、なら今日は俺が奢るから飲みに行かないか?」
「やったのじゃ! もちろん行くに決まってるのじゃ!」
「よし、じゃあ適当に入るとするか。」
俺達は適当に見かけた酒が飲めそうな所へと向かうことにしたのだった。




