持ち回り
食事も終わり、これからのことを話し合うことにした。
「えっと、エキストラさんは地下10階を攻略してから野営でしたよね。
大変でしょうが頑張ってください。」
俺がそう言うと、ケイさんとエキストラさんが複雑そうな顔をした。
そしてケイさんが俺に提案してきた。
「ハル君、今日は私達もここで野営をしても構わないだろうか?」
「別に構わないですが、どうしたんですか?」
「いや、美味しい夕食を食べて落ち着いてしまったら、動きたくなくなってしまってね。
それに複数人のPTで野営をすれば負担も分担できるからね。これから厳しい攻略になるし、楽できる所は楽したいってのが正直な感想かな。」
ケイさんがそう言うと、笑って頭を掻いていた。なるほどね。
とは言えこっちは女性ばかりだ、意見は聞いておかないとな。
「みんな、どうかな?」
「あたいは構わないのじゃ。」
「良いんじゃないの~?」
「私も大丈夫です。」
ティアさんとシャルは、一応奴隷って立場からか、何も言わずに黙っていた。
「わかりました。今日は宜しくお願いします。」
「助かるよ。」
「じゃあ、見張りの順番はどうしますか?」
「ウチのメンバーが馬鹿するとは思わないが、お互い1人づつ出した方が安心だろう。
そっちは小さい子も居るみたいだし、こちらも運び屋は除外して5交代ってのはどうだい?」
「分かりました。それで良いです。」
「決まりだな。そちらの順番はそちらに任せるよ。」
「はい。」
見張りは1の時間と半分で交代することに決まった。
順番を決めようとした所で、エキストラさんが聞いてきた。
「ハル、ずっと聞きたかったっすけれど、アレって何っすか?」
エキストラさんが指を指したのはトイレ用の小屋だ。まぁ気になるよな。
「こっちには女性が居るので、トイレや湯あみに使用するための小屋です。」
「なる程っす! ……じゃないっす!! どうやって持ち込んだっすか!!
それに、食事を作るための火は棍棒だとしても、かまどの石もどうやって持って来たんすか!!」
まぁ、そうなるよな。
「秘密です。」
「あんな大きな物を運べるなら、ダンジョンの攻略が…」
「エキストラ、辞めろ!」
「でも!」
「俺達は冒険者だろ?」
「!! そうだったっすね、スマンっす。」
冒険者にとっての情報は場合によっては金になったり、命にかかわる物だって有るかもしれない。多分その辺を理解してくれたのだろう。
「ハル君、ウチの者が申し訳無かった。」
「いえ、気持ちは分かるので大丈夫です。」
「我々も利用させて貰っても良いだろうか? もちろん利用料は払うぞ。」
「……こういうことが出来るってことを内緒にしていただけるので有れば、タダで良いですよ。
なんならお湯も用意しましょうか?」
「願っても無いことだが、良いのか?」
「大した手間じゃないですから。」
「だが、お湯を用意するのは大変では。」
「俺には生活魔法が有りますから。」
「いや、それでも……」
「ハル君、ハル君、最近当たり前になり過ぎてて忘れてると思うけれど、普通生活魔法って水しか出せないからね?」
「あっ……」
そう言えばそうでした。
「あははははっ(汗)」
笑ってごまかしておくことにした。
その後はアイリさん、ナタリーさん、ティアさんが湯あみをして、その後にケイさん達のお湯も用意してあげたのだった。
お湯? 勿論、毎回キチンと交換しましたよ? 当たり前じゃないですか。
女性陣が湯あみをしている最中の向こうのPTの挙動がおかしかったが、俺が近づけさせなかったのは言うまでも無かった。
・・・・
「まさかダンジョン内で湯あみが出来るとはな。」
「サッパリしたっす!」
スッキリとした表情でケイさんとエキストラさんがやって来た。
男性とは言え汗や匂いが気にならない訳では無いからな。湯あみが出来るに越したことは無いと思う。
「この程度で喜んでくれたのなら良かったです。」
「ハルの仲間が言ってたのが納得出来た気がするっす。」
「そうだな。」
それはサポート要員としてでしょうか? 当たってるけどさ……
「じゃあそろそろ休むとしよう。そちらも良いかな?」
「はい、大丈夫です。」
「じゃあ見張りの方法を確認するぞ。
見張り人は、中央の焚火を挟む形でお互い位置し、1の時間と半分で交代な。」
「はい。」
「オイラが1番っす。」
「こっちは俺です。」
「え~! 女の子が良かったっす! ケイ交換するっす!」
「残念だったな。運が悪かったと諦めるんだな。」
「くっそ~!!」
「男で悪かったな……」
こうして俺とエキストラさんの見張りが始まったのだった。




