今日のナタリーさん 119
私はナタリー、冒険者である。
誰かの声が聞こえ目が覚めました。
えっと、彼がビアンカさんに跨ってイタズラ(?)をしています。
うらや……いえ、ずる……じゃなくて、な、仲間外れは駄目ですよね?
私はアイリを揺すって起こすことにしました。
「アイリ、起きて。」
「うにゅ~」
「寝ぼけ無いで、ハルさんとビアンカさんが……」
「うん? あっ!」
流石のアイリも目が覚めたみたいです。
「は~る~く~ん?」
アイリが恨めしそうな声で彼に問いかけています。
私もうらや……じゃなくて、悲しそうに彼に問いかけました。
「ナタリー。」
アイリがアイコンタクトで私を見てきました。
「アイリ。」
もちろんアイリが何を言いたいのか聞かなくても分ります。
「「やっちゃえ~!!」」
私達は一致団結して彼に襲い掛かるのでした。
・・・・
彼がお婿さんに行けないと言ってますが、もうすでに私達のお婿さんですので安心して下さい。
それを聞いた彼が安心した顔……あれ? 違うこと考えてますか?
その時扉をノックする音が! どうやらシャルティアさんが中々起きてこない私達を起こしにやってきたみたいです。
えっと、今の私達の恰好は……ちょっとお見せ出来ないかもしれません。
アイリは開き直ったのか、あっけらかんとしています。
そして扉が開かれ、シャルティアさんが入ってきたので、この惨事はバレてしまいましたが、まぁ、シャルティアさんですし構わないですよね?
安心したのもつかの間、今度はシャルちゃんもやってきてしまいました。
同じ彼の奥さんの一人(予定)だとしても、流石に未成年のシャルちゃんには早いですよね?
彼もそう思ったのか、シャルティアさんにお願いして止めてもらうみたいです。
シャルティアさんの御蔭で、何とか危機を乗り越えることが出来きたので、助かりました。もう少し気を付けないと駄目ですね。
最近の私は随分と変わった気がします。アルデの街で受付嬢をしていた時には考えられないです。
でも、そんな今の私のことがとっても好きかもしれません。本当に彼に着いてきて良かったと改めて思いました。
その後は、体を洗って着替えてから食堂へ向かうことにしました。
今日の朝食は、すっかりとシャルティアさんに甘えてしまいました。反省ですね。
シャルティアさんに謝ると、許してくれました。そして、今度は仲間に入れて欲しいとお願いされました。
そうですよね、私も同じ立場だったらうらや……コホン…悲しいですし、参加したいですからね。もちろん了解しておきます。
食事が終わり、予定通りに冒険者ギルドへと向かいます。
そして2階の資料室でダンジョンについての調査をすることにしました。
折角なので私も何か自分に出来ることを、もしくは彼の役に立つための知識を得るため、本を探すことにしましょう。
「何か良い本は……これは?」
たまたま見つけた本は、『賢者と学ぶ四十八手』と言うタイトルの本でした。
賢者と書いて有ると言うことは、何か戦争の戦局を打破するための手段が48種類も有るってことでしょうか?
それとも48種類の極大魔法でも書かれているのでしょうか?
少しでも彼の役に立ちたい私は、その本を読んでみることにしました。
パラ…
「なっ!」
パタン!
思わず本を閉じると共に、少し大きな声を出してしまい、慌てて口を閉じました。
右を見る……左を見る……うん、皆さん本に夢中で気が付いて無いようです。どうやら私の声は聞かれて無かったみたいです。
パラ…
改めて、こっそりと本を広げて中身を確認してみます。
本の中身は絵が描いて有り、それについての詳細な文章が書かれていた。
こ、こ、こ、これって、アレですよね?
男の人と女の人が、ベットで行うアレですよね?
うわっ、こんな格好なんて恥ずかしすぎるぅ~~~!!
えぇ~~!! こんなこともするの!?
・・・・
パタン…
「ふぅ~~」
思いっきり長い溜息が出てしまいました。
途中からイラストの男性を彼、女性を私に当てはめて……って、何を考えてるんですか!!
私は手を振って頭の中の妄想を追い払います。とりあえず色んな意味での勉強になりました。
「凄かったな……」
本を棚に仕舞い、ポツリとつぶやいた。
「何が凄かったの~?」
ビクン!! ビックリして思わず私は少し飛び上がってしまいました。
「あ、あ、あ、あ、アイリ!! 驚かせないでよ!」
「別に驚かせてなんか無いけど? 何を驚いてるのよ~」
「ご、ごめんね。」
「ま、いいけどね~
それで、ナタリーは何を読んでいたのかな? かな?」
「べ、べ、べ、別に、普通の調べものだよ? ホントだよ?」
「……何かあやしい……確かこの辺に本を仕舞ってたよね。」
「あ、アイリ! ゴメン! 許して!!」
「そこまで必死になるって、ますますあやしい……ってこれかな?
何々、『賢者と学ぶ四十八手』? へぇ~賢者様の本を読んでたんだ。どれどれ?」
「ダメえぇぇぇ~~~~!!」
「ほぅ? なるほど? へぇ~」
アイリに見られてしまった。恥かしさで顔に血が急激に上がってきているのが分かった。
「ナタリーって、ハル君と会ってからエッチになったよね。」
アイリがニヤニヤした顔でそう言ってきた。
「嫌あああぁぁぁぁ~~~!! 言わないでえぇぇぇ~~~!!」
私は両手で顔を覆った。はい。正直自覚有りまくりです。
だって、好きなんだもん! 仕方ないじゃない~~~!!
「ま、良いんじゃない? 私もナタリーと同じだしね~」
「えっ?」
「ハル君と一緒に居ると幸せだよね~」
「う、うん。」
それについては私も同意です。
「今度一緒に、これをハル君で実践しようね。」
「そうだね。」
アイリも私と同じ気持ちなんだ。朝のこともあるし、開き直ることにしました。
「そろそろ行こうか。」
向こうで彼が調べ終わったらしく、声を掛けてきました。
「「は~い。」」
アイリと一緒に返事をし、本を元に戻して彼の元に向かうのでした。




