大忙し
俺は早まったことを仕出かしたのかもしれない。
「ポテトチップ4皿だ!!」
「こっちはポテトチップ5皿だ!!」
「私はポテトフライ追加ね~」
「オイラもポテトフライ3皿追加~」
「ねーから揚げまだぁ~?」
噂が噂を呼んだらしく、お店の中は満席で注文の嵐だ。そして……
「ふざけんな!! から揚げにはレイモンだろ!!」
「馬鹿言うな!! レイモンなんか邪道だろうが!!」
「やるか!?」
「やらないでか!!」
向こうでは案の定、戦争が起きていた。あ~あ……
「ハル君~、助けて~!!」
「ハルよ、こっちの客を何とかしてくれ!!」
「ポテトチップ10皿追加。」
「ハルさん、シャガイモ切り終わりました。」
「ハル様、材料がもう無いです!」
「ハル君!」
「ハル!」
「ハル様!」
「ハルさん。」
「ハル様。」
「て、店長~!!」
余りの忙しさににっちもさっちも行かなくなったので、店長に泣きつくことにした。
「……はっ! わ、分かったから、何とかするから、もう少し頑張って。」
そう言って店長はお店の外へと出て行った。……逃げて無いよな?
「仕方がない、アイテムボックスから材料出すか。」
不足分の材料はこっちで持つとしても、人手が圧倒的に足りないが、ここは踏ん張るしかない。
「みんな、店長が戻るまで何とか持ちこたえるんだ!」
「「「「「はい(なのじゃ)!!」」」」」
・・・・
「ありがとうございました。」
最期の客が帰ったので、ようやくお店は閉店となった。
「「「「「「お、終わった~(のじゃ)!!」」」」」」
結局、店長は戻ってくることは無かった。
俺達全員動く気力も尽きたので、床に座り込んでいた。
キィ……
その時扉が開き、店長がこっそりと顔を覗かせて来た。
「お、お疲れ様~」
「店長? 随分と早いお帰りで、何処に行ってたんですか?(ニッコリ)」
「ひぃ! わ、私も悪いとは思ってたんだよ? 一生懸命助っ人を頼める人を探してたんだけど、結局見つからなくて…その…(滝汗)」
言われて店長を見てみると、汗だくで疲れた顔をしていたので、恐らく街中を走り回っていたのは間違い無いのだろう。
「はぁ~、まあ良いです。半分冗談ですし、もとはと言えば俺が余計なことをした結果ですしね。」
「ご、ごめんなさいね。」
「その代わり、少し給料に色付けてくれると嬉しいです。」
「そのくらいは任せて頂戴! ちなみに今日の売り上げって幾らになったの?」
「えっと、金貨27枚、銀貨6枚、銅貨4枚ですね。」
「はぁ!? も、もう一度言ってくれる?」
「金貨27枚、銀貨6枚、銅貨4枚です。」
「……嘘……何時もの売り上げの5倍以上!?」
と言うことは、通常は1日金貨5枚くらいってことかな?
それでも十分な稼ぎだとは思うけどね。
「材料費を抜いたとしても……そう言えば材料も出して頂いたんだっけ。」
「はい。後材料が足りなくなったので、シャガイモとケッコー鳥の肉を手持ちから出させて貰いました。」
「そ、そうだったのね。えっと、えっと、ギルドの依頼料にプラス金貨1枚で宜しいかしら?
後、出来ればポテトチップとポテトフライ、から揚げのレシピを売って貰えないかしら? こっちは金貨10枚でどう?」
売り上げ5倍だから銀貨5枚でも貰えれば十分かと思ったけど、10倍か。結構奮発してくれたみたいだ。
それにしても、俺が考えたレシピじゃないのに金貨10枚って、さすがに悪い気がする……
「給料はまだしも、レシピ代は、さすがに高くないっすか? それにあの料理は、俺が考案した物じゃないんだけど?」
「そうかしら? 私的にはもっと高くても文句は言えないと思うんだけど。それにこの位の金額なら多分直ぐに取り戻せると思うわよ?
レシピはこの辺りでは聞いたことが無い物ばかりだし、私のお店の人気商品になりそうよ。
それに例え他のお店が真似をしたとしても、私のお店が元祖となれば売れ行きも違うしね。」
なる程、他のお店より早く売り出すことでのメリットも有る訳か。
「そっちがそれで良いなら良いけど、ポテトチップとポテトフライはまだしも、から揚げは他のお店でも売ってたぞ?」
実際マスターはから揚げを作ってたしな。
「ハルよ、それはマスターの話じゃないのかの?」
「そうだけど?」
「あのねハル君、多分だけどマスターは、ジェニファーに教えて貰ったんだと思うよ~
他のお店で見たこと無かったよ? 大抵は焼くか煮るかだったし~」
「えっ? そうなの?」
「はい、私も見たことが無いので、そう思います。」
ナタリーさんもそう言っているってことは、多分間違い無いのだろう。
「じゃあ、それでお願いします。」
「おっけー! 契約成立ね♪」
俺は金貨11枚、他のみんなは金貨1枚を貰うことになった。
「いやぁ~、ホント今回は助かったわ~♪
新しいメニューも増えたことだし、また手伝ってくれると嬉しいわ。」
「いえ、今度は客として来ようと思います。」
「あら残念。まあ良いわ、来たらサービスするから是非来てね。」
「はい。」
俺は依頼票に依頼完了のサインを貰い、お店を後にすることにした。




