シェフ
アイリさん、ビアンカさん、シャルは給仕。俺とナタリーさん、ティアさんは料理をすることが決まった。
女店主はロザリーさんと言う名前で、お店全体の管理を行うとのことだ。
「じゃあ、まずは1品づつ作ってもらえるかしら? 試食ついでにお昼にしましょう。」
「「「わかりました。」」」
俺達が料理を作っている間に、アイリさん達の教育をするみたいだ。
「じゃあ作ろうか。」
「「はい。」」
メニューはそれほど多くない。日替わりディナーと、単品でステーキ、ソテー、串焼き、焼き魚、野菜スープくらいだ。
日替わりもパンとステーキ、もしくはソテーと野菜スープがセットになっているだけなので、単品を作るだけで済んでしまう。
「それじゃ、ステーキとソテーはナタリーが、串焼きと焼き魚はティア、野菜スープは俺が作るで良いかな?」
「「はい。」」
各々作業するために分かれることにした。
さて材料はと言うと、丸ネギ、キュロット、シャガイモ、ホーンラビット肉、後は塩だ。う~ん、さすがにこれでは味気なさすぎるな。
せめて屋台のオッサンくらいの味付けにはしたいものだ。
アイテムボックスよりニンニンニク、ショウガナイ、しぃたけ、ぱっセリ、唐辛子、胡椒を取り出す。さすがに鶏ガラは無かった。
作り方は省略させてもらうことにする。完成した物の味見をしてみる。……ま、こんなもんだろ。
「出来たぞ。」
「こちらも出来ました。」
「私も出来ました。」
流石はナタリーさんとティアさんだ。とっても美味しそうである。
テーブルに完成した品々を並べ、ロザリーさんの判定をしてもらうことにした。
「う~ん、良い匂い……じゃあ早速頂くとするわ。」
さてどんな結果が出ることやら……
ロザリーさんがステーキを口にする。
「ほわぁ、何これ! 本当にウチに有った材料?」
「は、はい。」
「こっちのソテーも!? 信じられない!」
どうやらナタリーさんは合格みたいだ。
「次はこの串肉だけど、焼き具合も塩加減も完璧! 凄いわ!!
この魚の塩焼きも最高~!!」
続けてティアさんも合格である。流石だな。
そして最後は俺か。
「あら? ウチに無い材料が入ってるみたいね。」
「すいません、用意されていた材料だと味気ないスープになりそうだったので、手持ちの食材を使わせて頂きました。」
「そうなのね、材料で誤魔化すのは感心しないんだけどね。」
そんなことを言いながら俺のスープを口に入れた。
「!?」
何も言わないってことは微妙だったか? だとしたら材料で誤魔化したと言われても仕方ないか。
くそっ! 鶏ガラが有ればまた違ったかもしれなかったのに!!
「何これ! 美味しい~!!」
「えっ?」
俺が残念がってたとこだったのに高評価を頂いてしまった。
「当然です! さすがはハルさんです!!」
「やっぱりハル様は凄いです。」
ナタリーさんとティアさんは当然の如く好評価を貰ってしまった。あれ?
正直に言うと、最近のナタリーさんや、ティアさんの料理の方が美味しいと思ってたんだが……
ま、まぁ何にせよ、問題が無いようなので良かった。
「もう全部美味しかったわ~!! 貴方たち! これからも私のお店で働かない? お給料弾むわよ?」
「いえ、遠慮します。だって俺達は冒険者ですから。」
「そんな、これだけの腕が有って勿体ないわ~! ね! 考え直さない?」
「申し訳ないですが……」
「ほら、貴方たちも危険な冒険者より、安全な食堂の方が良いでしょ?」
「いえ、私達もハルさんと一緒に冒険者がしたいですから。」
「私が居る所は、ハル様のお側だけです。」
「そ、そんなぁ~」
ロザリーさんはガックリと項垂れていた。
「と、とりあえず今日は店員としてしっかりと働きますから、それで勘弁して下さい。」
「はぁ~!」
ため息ついてチラッチラッって見ても駄目な物は駄目です。
「そうそう、これだけだと寂しいので、何かメニューを追加しませんか?」
「構わないけれど、何を作るの?」
「シャガイモが有るし、簡単な物ならフライドポテトや、ポテトチップ?
後はケッコー鳥肉が有るからから揚げとかも行けるな。」
戦争になったとしても仲間内じゃないので知らん。
「ハルさん、フライドポテトとポテトっチップって何ですか?」
「ん? ああ、フライドポテトは細長く切って油で揚げた後に塩を振った物。
ポテトチップは薄く輪切りにしたものを油で揚げて、同じく塩を振った物かな。
直ぐできる物だし、作ってみようか。」
「お願いします。」
「じゃあ、ナタリーは薄切りをお願い。ティアはスティック状に切ってもらえるかな?
切った後は水にさらして、その後は水分を切ってくれ。」
「「分かりました。」」
俺はその間に油の準備だ。大量に揚げるんだったら、温度が下がらない様に大鍋で揚げるのだが、今回はお試しだ、この鍋で良いだろう。
オルーブ油を入れて、火にかける。温度が上がり、箸を突っ込んで泡が立ったら準備完了だ。
「ハルさん、こんな感じで良いですか?」
流石はナタリーさんだ。
「うん、丁度良い厚さだ。これを油へと投入する。」
ジュワ~~~~!!
良い具合に揚がったところで取り出して油をしっかりと切る。塩をパラパラと振ってっと。
「ポテトチップの完成だ。はい、どうぞ。」
俺が皿を出すと、皆手を出して食べだした。
「シャガイモってこんな感じになるんですね。」
「美味しいです。」
「何これ! こんな単純な料理なのに、美味しい!!」
お試しだから大量に作らなかったのも有るが、皿はあっという間に空になってしまった。
「物足りないです。」
「でも、これでしたら直ぐに作れますね。もっと作りましょうか?」
「店長命令です。作りなさい!」
「そんなんで店長命令しないで下さいよ。だからティアさんも今は作らなくて良いですよ。」
「わかりました。」
「後、一応言っておきますが、これ油かなり吸うんで、沢山食べると太りますよ?」
俺がそう言うと、女性陣が停止した。
「あ、悪魔の食べ物です。」
うん、ジャンクフードはその通りだと思う。
某CMでも言ってたもんな、違う種類のお菓子だが「止められない止まらない。」ってな。
「じゃあ、次はポテトフライを作るとするか。」
先ほどティアさんに切って貰ったスティック状のシャガイモを油へと投入する。
ジュワ~~~~!!
ポテトフライは、ポテトチップと違って厚みが有るため、最初は低温の油で揚げ、十分に火が通ったら、今度は高温の油で一気に揚げるのがベストだ。
ただ、今回は飲み屋のおつまみだ。そんな手間をかけるのもアレだし、表面がカリカリになるまで揚げて終わりにすることにする。
良い具合に揚がったところで取り出して油をしっかりと切る。塩をパラパラと振ってっと。
「ポテトフライの完成だ。」
「先ほどのと作り方って同じですよね? 何が違うんですか?」
「見た目と食感かな。」
とりあえず試食をしてみることにする。
「こっちはホクホクしていて美味しいです。」
「こちらも美味しいですが、個人的にはポテトチップの方が好みかもしれません。」
「何これ! さっきのも美味しかったけど、こっちも捨てがたい!! お替り!!」
「あー作り方が同じだから分かると思うが、これも食べ過ぎると太るからな?」
「やっぱり悪魔の食べ物です…」
ナタリーさん、先ほどもそうだけど、そんな恨めしそうな顔をしながら見ないで下さい。
一応油を使わないヘルシーなのも無くは無いが、やっぱり油を使わないと今一つなんだよね。
「で、この2品だけど、どうします?」
「採用!!」
即決だった。
「残りのから揚げだけど……」
「採用!!」
「まだ作ってもいませんが?」
「最初のスープもそうだけど、今の2品で十分すぎるほど分かったから大丈夫。それに揚げって言ってるくらいだから、油使うんでしょ?」
「ええ、まぁ。」
「だったら、試食は良いわ。後は貴方に任せます。」
「分かりました。」
何となく皆さんがお腹あたりを気にしているので、知らない振りをすることにした。
こうして新たに3品が追加することとなったのだった。




