依頼を受けてみた
資料室を出て下に降りる。さすがにこの時間だと冒険者ギルド内もガラガラだ。
折角なので依頼掲示板でも見てみようかと思う。
「この時間だからか、大した依頼が無いなぁ~」
通常依頼の薬草採取やダンジョンのドロップ品、地下7階の魚等くらいしか……おっ!
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目的 :急募! 食堂の手伝い
期限 :1日
成功報酬:人数×銀貨1枚
依頼失敗:依頼放棄
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急募って書いて有るのって初めて見たな。切羽詰まっているのだろうか?
それに人数で報酬が変わるのも珍しい。
「何じゃ、面白い依頼でも有ったのか?」
「面白いと言うか、これなんだけど。」
「どれどれ……げっ!」
依頼を確認したビアンカさんが顔を青ざめた。
「あ、あたいに料理は無理じゃぞ?」
「いや、食堂だからって料理を作るとは限らないじゃん。ケリーみたいな給仕だって有るんだしさ。」
「そう言えばそうじゃの。」
「ハル君、その依頼受けるの?」
「そうだなぁ~、みんなはどう思う?」
「私は大丈夫です。」
「あ、私も問題有りません。」
「頑張る。」
ナタリーさん、ティアさん、シャルは問題無しと。
「食事を作る以外なら構わないのじゃ。」
「同じく~」
ビアンカさんと、アイリさんは給仕か裏方希望と。
「とりあえず話だけでも聞いてみようか。」
「「「「「は~い(なのじゃ)。」」」」」
俺は依頼票を持ってカレンさんの所に行く。
「カレンさん、こんにちは。」
「はい。こんにちはです。
今日はどの様な御用でしょうか。」
「この依頼の詳細を聞きたいのですが。」
俺は依頼票をカレンさんに手渡す。
「この依頼ですか、少々お待ちください。」
カレンさんが手元のファイルを調べている。
「有りました。えっとですね、急遽店員がお店に来られなくなったため、お手伝いして欲しいとのことです。
料理担当と、フロア担当で最低2名以上とのことです。上限は8名までとなります。」
「俺達は6名だから条件を満たしてはいるのか。でも、もうお昼近くの時間ですが、受けられるんですか?」
「はい。このお店は仕事終わりの方々が食事とお酒を楽しむ感じのお店なので、夜だけ営業なんですよ。」
「なるほどね。みんなの許可も貰ってるし、受けてみることにします。」
「わかりました。では、冒険者カードをお預かりします。」
みんなのカードを提示し、処理をしてもらう。
「はい、依頼を受け付けました。冒険者カードをお返しします。そしてこちらが地図になります。」
俺はカードと地図を受け取った。
「それでは、カレンが受付しました。お仕事頑張ってください。」
「はい。」
俺達は冒険者ギルドを後にして、食堂へ向かうことにした。
・・・・
「ここだな。」
恐らく冒険者を主に相手するお店なのだろう。冒険者ギルドの道を挟んだ前のお店だった。歩いて1分である。
早速中に入ることにした。
「こんにちは~」
「すいません~、このお店は夜だけなんですよ。
でも本日は都合によりお休みとさせて頂きます~」
出てきたのは40代前半位の女性だった。この人が店主なのかな?
「あ、いえ、食べに来た訳では無く、依頼を受けて来たのですが。」
「あら? ごめんなさいね。この時間になっても依頼が決まらなかったから、今日はお休みしようかと思ってたところだったのよ。ホント助かるわ~」
「いえ、依頼が無くならなくて良かったです。」
「えっと、女の子が多いってことは料理も大丈夫そうね。じゃあ、貴方と貴方と貴方、お願いしても良いかしら?」
女店主が選んだなのナタリーさんとアイリさんとティアさんだ。子供のシャルと、見た目子供みたいなビアンカさん、そして男性の俺は選ばれなかったみたいだ。
「えぇ~!! 私料理って出来ない~!!」
案の定、アイリさんが悲鳴を上げている。
「あら? そうなの?」
「私なんかより、ハル君の方が上手だよ~」
アイリさんがそう言って俺を前に出してきた。
「えっと。」
女店主は困り顔だ。どうやら俺は料理が出来無そうな顔をしているみたいだ。
「大丈夫ですよ。ハルさんはこの中で一番料理が上手ですから。」
「ですね、私達も何時かハル様に追いつきたいと思っております。」
「そう? なら構わないわ。それじゃ宜しくね?」
「「「「「「はい(なのじゃ)。」」」」」」
こうして俺達の食堂の手伝い依頼が開始されたのだった。




