相談
冒険者ギルドへとやって来た。そこそこ人が居るが、とりあえずトルネラさんの所へ向かうことにした。
列に並び順番を待ち、俺達の番になった。
「トルネラさん、こんばんは。」
「おう、待ってたぞ…って、今日はダンジョン行かなかったのか?」
「いえ、ダンジョンには行ったのですが、そのことで少しトルネラさんに相談が有って。」
「ふむ、良いだろう。ちょっと交代するから先に奥の部屋に行っててくれ。」
「分かりました。」
トルネラさんがそう言ったので奥の部屋に向かうことにする。
そう言えば、この部屋に来たのはエリクサーを買った時以来か…ん? 何か忘れている様な…何だっけ?
「ハル様、どうかしましたか?」
どうやら考え込んだ顔をしていたらしく、ティアさんが心配して聞いてきた。
「この部屋でエリクサーを譲ってもらったんだけど、それに関する何かを忘れている様な気がしてさ。」
「そうなんですか、この部屋で…」
ティアさんは感慨深い顔で部屋を眺めていた。
「ハルさん、エリクサーに関する何かですと、ティアさんに関することですよね?」
「かな?」
「でしたら、火傷、欠損、白金貨とかでしょうか?」
「う~ん。」
「ねーねー、エリクサーの素材ってのは?」
「それも違う様な…」
「なら、HPポーション改かの?」
「ポーション、材料、聖水…ん? そうだ思い出した! 聖魔力水だ!」
そうだった。聖魔力水について師匠に手紙を出そうと思ってたんだっけ。すっかり忘れていた。
思い出したついでに、帰りに手紙を出して行こう。
「待たせたな。」
そんなことをしている内に、トルネラさんがやって来た。
「こちらこそ、忙しいところをすいませんでした。」
「何、丁度休憩でも入れようかと思ってたからな、気にすんな。
で、相談ってのは何だ?」
「実は俺、ちょっと変わったスキルを持ってまして、それについての相談だったんですよ。
トルネラさんは口も堅そうですし、ナタリーの推薦も有ったので話をしてみることにしました。」
「推薦? 何でだ?」
「実は私、アルデの街で冒険者ギルドの受付嬢をしてまして。」
「なるほど、規則のことか。」
「はい。」
どうやらトルネラさん的にはそれで通じたみたいだ。話が早くて助かる。
「それで俺にってことは、他の人にはあまり知られたくないと。」
「はい。出来ればトルネラさんだけが望ましいですが、無理は言えないので迷ってまして。」
「こう言っちゃなんだが、俺は口は堅い方だ。誰にも言わないから話してみろや。」
「分かりました。実はアイテムボックスのスキル保持者なんですよ。」
「アイテムボックス? 何だそれは。」
「こう言う物です。」
俺はアイテムボックスからグレードソードを取り出した。
「なっ!」
突然剣が現れたことで、トルネラさんが目を見開いてビックリしてる。
「こんな風に、荷物を運ぶスキルなんです。」
「…どのくらい運べるんだ?」
「分かりません。とにかく沢山運べるのは間違い無いです。」
「なる程な、何時も運び屋無しで大量のアイテムを売りに来るから疑問に思ってはいたが、そう言う理由だったのか。」
「はい。」
「分かった、売るときはこの部屋を使うことにしよう。それで良いか?」
「お願いします。」
「それで今日はどのくらいの量が有るんだ?」
「えっと、前に多すぎるから売るのを躊躇したのもあるんだけど、それも一緒に良いですか?」
「今更驚かねーよ。良いから出しな。」
「それじゃ、遠慮なく。」
棍棒は薪で使うとして、後はハイオークの肉もこっちで消費しよう。
残りの肉は全部売っちゃえ!
「おいおい、どんだけ有るんだよ…」
トルネラさんは驚くより呆れていた。
「えっと、ホーンラビット肉が88、グラスウルフ肉が48、牙が15、オーク肉が110、短槍1、ブロードソード1、ラージシールド1、棍棒(大)58、グレードソード14で、白金貨4枚、銀貨3枚、銅貨8枚だな。って、地下8階までの金額じゃないぞ? それにハイオークの肉はどうした!」
「ハイオークはこっちで食べようかと。」
「内緒にしてやるんだ、こっちにも寄越せ!!」
「じゃあ、口止め料として1つ差し上げますよ。」
「そうか!」
俺はハイオーク肉を1つ取り出して渡してあげた。
「ありがとな。」
「このくらいで済むなら安いくらいですよ。」
「そうかそうか、それにしてもこの肉の量、随分と狩ったみたいだな。」
「狩ったのは今日だけじゃないですけどね。」
「どういう意味だ?」
「日にちまでは覚えてませんが、結構前のも含まれてますよ?」
「その割には綺麗だが?」
「言い忘れてましたが、アイテムボックスの中って時間が止まるみたいなんですよ。」
「何だと? 大量だけでなく時間も止まるって…食料事情が変わるぞ!?」
「だから相談したんですよ。」
「…参考に聞くが、このスキルの取得方法は?」
「分かりません。俺は知人から譲り受けましたので。」
「スキルって人に渡せるのか? 聞いたこと無いぞ?」
「多分相手が化け…幽霊だったからで、特別だったんでしょうね。」
「ちなみに坊主が他の人に譲渡は?」
「多分出来ないと思います。」
「そうか、残念だ。」
「こんな感じですが、今後とも宜しくお願いします。」
「分かった、宜しくな。」
こうしてトルネラさんに相談した結果、今後におけるアイテム売買が楽になったのだった。




