久々のダンジョン
ダンジョンの入り口までやってきた。数日ぶりなのに、何かずいぶんと懐かしい気がするのは気のせいだろうか?
まあいいか。いつもの様に松明を準備して、火を点けようとした所で、ティアさんが言ってきた。
「あの、ハル様、松明は無くても大丈夫です。」
「ん? 何で?」
俺が疑問に思っていると、ティアさんが魔法を使った。
「おぉ!」
そこには人魂…もとい、ティアさんが使っているので、どちらかと言えば狐火と言った方が良いか、それが浮いていた。
「凄いじゃ無いか!」
「実は、アイリさんと一緒に特訓しました。」
ティアさんは、照れながらも少し嬉しそうだ。
「これって動かせるのか?」
「あ、はい。」
ティアさんが意識すると、スーッと自由自在に動かしていた。
これだよこれ、本当だったらシャルに、この魔法を覚えさせたかったんだが、残念なことにシャルには魔法を飛ばす才能が無かったからな。
俺がウンウンと感動していると、
「むぅ、お母さんズルイ。」
どうやらシャルに、俺が考えていたことがバレタのかもしれない。すまぬ…
「これってどういった魔法なんだ?」
「えっと、炎の矢を飛ばさないで維持している感じになります。」
「そうすると、飛ばすことも出来る?」
「はい、出来ますね。」
「飛ばすと消える?」
「はい。」
「なるほど。」
だいたいどういった魔法なのかを理解することが出来た。
「ハル君見て見て~♪」
アイリさんが言ってきたのでそちらを見ると、10個ほどの水玉が浮いていた。
「スゲー!!」
「凄いでしょ~♪ ティアも同じこと出来るよ?」
「マジか…」
すると、ティアさんも負けじと狐火を10個浮かべたのだった。
「コレって維持に魔力使うの?」
「1つに付き、1の時間に魔力を1使いますね。」
「10個だと魔力が10必要になるのか。」
「はい。でも、この状態からの発動は、1から発動させるよりは、速く飛ばせるんですよ。」
ティアさんが炎の1つを飛ばす。すると、何時もの炎の矢となり飛んで行った。
なるほど、魔力的にそれほど負担にならないなら悪くなさそうだ。最悪聖魔力水で回復も出来るしな。
「でも、万が一全部使ってしまうことも有るかもしれないし、用心として松明は持っててくれ。」
「は~い。分かったよ~」
「分かりました。」
さて、準備も出来たことだし、ダンジョンに入ることにした。
「久々だから慣らしも考慮して、出来るだけ敵は倒していきたいけど、構わないか?」
「「「「「は~い(なのじゃ)。」」」」」
こうして俺達は、久々のダンジョン攻略を開始するのだった。
ジャラ…
もしもしナタリーさん、その凶悪な武器はどうしたのでしょうか?
俺の記憶だと、モーニングスターと言う武器な気がするのだけど…
そんな俺の視線にナタリーさんが気が付いた。
「あっ、これですか? 買っちゃいましたぁ~♪」
買っちゃいましたぁ~♪ って可愛く言っても、とっても可愛いです!
「へ、へぇ、そ、そうなんだ。それは凄いね。」
「お陰様で強くなったんですよ、頑張りますね!」
「お、おう。」
見なかったことにしょう。うん。
・・・・
何これ……やだ怖い!!
ナタリーさんの攻撃が、シャルの攻撃が、ティアさんとアイリさんの攻撃が凄すぎる!!
相変わらず攻撃を防いでくれるビアンカさんが、唯一の癒し(?)である。
俺が何もすることが無いまま、最初の関門でもある、地下5階のボス部屋までやってきてしまったのだ。
俺って要らない子? やめて! 涙がでちゃう!!
「さて、ボスじゃの。」
「頑張るよ~!」
「頑張ります。」
「あらあら、うふふっ。」
シャルもフンスとやる気満々だ。
俺達の順番になったので、中に入ると、ゴブリンナイトが待ち構えていた。
「行くよ~!」
「行きます!!」
既に5個の魔法を待機させていたアイリさんと、ティアさんが、そのまま魔法を飛ばすのではなく、魔法を散開させた状態からの四方八方からの攻撃を仕掛ける!
「グギャ! ギャ!」
2個程は防いだみたいだが、残り全弾命中! そこにナタリーさんの後ろからの一撃が、ゴブリンナイトの背中に命中! 変な角度に曲がってる…
止めとばかりにシャルの一撃が、ゴブリンナイトの首を落とした。忍者ですか?
ビアンカさんと、俺の出番は全く無く、ボス戦は終わってしまった。
いや、マジで俺、要らない子ですか?
「やった~♪」
「楽勝。」
「頑張りました。」
「あらあら、うふふっ。」
みんなが勝利を喜んでいる。
「のう、ハルよ。」
「何だ、ビアンカさんよ。」
俺達は何も言わなかったが、気持ちは通じた気がした。




