今日のナタリーさん 112
街まで戻ってきました。冒険者ギルドへ行き、狩ってきたホーンラビットを売った後は、街中へと繰り出すことにしました。
今はお昼時ですが、お昼は先ほどお肉を食べてしまったので、それほどお腹は空いていません。
「あ、あそこに美味しそうなお店が有るよ~」
アイリが指を指した先からは、甘い焼き菓子の匂いが漂ってきました。
「食べたい!」
「あ、私も食べたいですね。」
そう言う私も、その匂いから空腹ってほどでは無いのですが、お腹が欲しがり出しました。
疲れた体に、あの匂いは卑怯です。それに甘いものは別腹とも言いますしね。
「行きましょうか。」
私達は、小腹を満足するために出店へと向かうのでした。
・・・・
「美味しい。」
「美味しいね。」
シャルちゃんと顔を合わせてニッコリとしました。
このサクサクとした食感と、ほんのりとした甘さは堪りません。あのお店は当たりですね。
見ていて作り方も分かりましたし、今度私も作ってみようかな。
「美味しいよ、ナタリー。」
「本当ですか!」
「もちろんだとも、ナタリーが作ってくれる物は何だって美味しいさ。」
彼がキラリと見せる白い歯が眩しいです。
「でもね。」
彼が私の耳元に口を寄せます。
「本当に食べたいのはナタリー、君さ。」
甘い声で囁かれました。きゃああぁぁ~~~!!
「……リー! ナタリーってば!」
ハッ!
「あれ? ハルさんは?」
「何昼間っから寝ぼけているのよ、ハル君は今日はビアンカとでしょ? ほら行くよ~」
どうやら私は妄想にふけってしまっていたみたいです。
「ごめん、今行く~」
私達は街へと繰り出すのでした。
・・・・
日も暮れてきたので、十分に休みを満喫した私達は宿へ帰ることしました。
宿へ到着し、食堂へ向かいます。
彼とビアンカさんは…居ないみたいですね。もしかしたら部屋に居るのかな?
「空いてた。」
シャルちゃんが空いている席を見つけたので座ります。
「ふぅ~疲れた~! エールでも頼んじゃう?」
「良いですね、私も頂きます。」
「ジュース。」
「じゃあ、私もエールで。」
「ケリー、エール3つとジュース1つね~! 後夕食も宜しく~♪」
「あ、は~い。」
飲み物を頼んだので待つことにします。
「お待ちどうさまです。ごゆっくりどうぞ。」
ケリーさんが直ぐに持って来てくれたので、ちょっと聞いてみることにしました。
「ケリーさん、ハルさん知りませんか?」
「確か先ほど部屋に戻られたみたいです。」
「そうだったんですね、ありがとうございます。」
「いえ、それでは。」
そう言ってケリーさんは自分の仕事に戻って行きました。
「ハル君戻ってるんだ。」
「じゃあ、私呼んで来ますね。」
「あ、私が行きましょうか?」
「いえ、大丈夫ですので、先に飲んでてください。」
「すいません。では、お願いします。」
「よろしく~」
早速彼を呼びに部屋へと向かいます。
扉をノックして呼びかけると返事が有り、扉が開き彼が出てきました。
そして、彼の向こうには幸せそうな顔をしながら寝ているビアンカさんが見えます。
「ハルさん、明日のことで…あっ、寝ちゃってたんですね。」
「今日、ビアンカと1日中鍛錬してたからな、疲れたんだろう。」
そうなんでしょうか? それだけじゃ無い気もするのですが…
彼に問いかけると、必死に謝ってきました。ふふふっ、別に怒っている訳じゃないんですけどね。
でも、何となく悪戯したくなってしまったので、実行することにします。
チュ…
「これで許してあげます♪」
「お、おう。」
えへへへっ、役得です♪
何か納得いかない顔をしていましたが、話を進めることにします。
みんなが待っていることを話すと、彼はビアンカさんを寝かせたまま食堂へ向かうことにしたみたいです。
そうですね、その方が良さそうです。
彼と食堂へ向かい、今日の出来事を話し合い、明日の予定も決めました。
その後は夕食を食べてから部屋に戻ることにしました。
いつものジャンケンによる勝負の結果、私とアイリ、シャルティアさんと彼が一緒の部屋になりました。やった♪
でも、彼は部屋に戻ると、疲れているからと言って、さっさと寝てしまいました。残念です…
湯あみを済ませ、寝る順番を決めます。
激しい勝負の結果、私、彼、アイリ、シャルティアさんの順番に決まりました。
「残念です。」
シャルティアさんが残念そうな顔をしていましたが、こればかりは真剣勝負なので、譲る気は有りませんよ?
彼の右腕を枕にし、彼の匂いに包まれながら私達も眠ることにしました。
私はナタリー冒険者だ。明日もまた頑張ろう。
おやすみなさい。




