今日のナタリーさん 111
「ふぅ~お腹いっぱい~」
「美味しかった。」
「この様な感じで食べたのは初めてです。」
どうやら皆さん満足して貰えたみたいです。
「ねぇ、これからどうする~?」
「狩る。」
「私はちょっと思い付いたことが出来たので、魔法の練習がしたいです。」
「じゃあ私もそれに付き合おうっかな~」
「では、私はシャルちゃんに付き合いますね。」
こうして狩り組と魔法組で別れることにしました。
さて、頑張りますかと前に出た所で、スッっとシャルちゃんも前に出てきました。
「私も出る。」
「えっ? でも。」
「ナタリーは少し危なっかしい。シャルの方がマシ。」
グサッ!
いや正論かもしれませんが、小さい子を前にするのもですね?
「大丈夫。」
そんな私の心配を余所に、シャルちゃんは自信満々に答えました。
実際その通りでは有るので、これ以上は何も言えませんでした。
「少しでも怪我をしたら言って下さいね? それを守れないようでしたら前に出るのは駄目ですからね。」
「分かった。」
シャルちゃんも納得してくれたみたいなので、狩りを始めることにしました。
右側はシャルちゃんが、左側を私が注意しながら進みます。
ガサッ!
右側の草むらが揺れたと思ったら、ホーンラビットがシャルちゃん目掛けて突っ込んで来ました。
スパン!
シャルちゃんは危なげなく避けて、そのまま首を落としてしまいました。
いや、シャルちゃんがそのくらいの実力を持って居ることは知ってましたけどね、こちらは大人としての立場って物が……今更でしたね。
一番弱いのは私だ。ならば強い人の教えを乞うのも悪くないかもしれません。
「ねぇ、シャルちゃん。どうやったら攻撃って避けられるのかな。」
シャルちゃんは少し考えた後、教えてくれました。
「こうスッと来たら、サッと避けて、えい! ってすれば大丈夫。」
スイマセン、言っていることが抽象的すぎます。それでどうしろと言うのでしょうか?
「えっと、もう少し詳しく教えて頂けると助かるのですが。」
私がそう聞くと、シャルちゃんは困った顔をしました。
「ナタリーは、ナタリーが出来ることをすれば良い。だから大丈夫。」
あの、説明が面倒になった訳じゃないですよね? 大丈夫と言われても安心出来ません!!
仕方が有りません、シャルちゃんを観察して学ぶことにしましょう。
・・・・
何であの体勢から避けられるのでしょうか? あれを私が真似をする…無理です。
そうですよね、私が出来ることを一生懸命すれば良いのですよね。
とりあえず4匹のホーンラビットが狩れたので、アイリ達の所に戻ることにしました。
えっと、あれは何をしているのでしょうか?
アイリとシャルティアさんの周りには水玉と炎の玉が5個ほど浮いています。
そして、浮いた状態から指をスッと動かすと、それぞれの玉が不規則な動きをしてぶつかり合ってます。
「すごい…」
思わず声が出てしまいました。その声に反応した2人が気が付いたみたいです。
「ナタリー見てた~?」
「うん、凄かった。」
「でしょ、でしょ~♪
これ、ティアが思いついたんだけど、魔法を発動状態で維持していると、色々便利なのが分かったんだよ~」
アイリがご機嫌だ。
「はい。維持に多少魔力を使いますが、一から魔法を発動させるよりは、多少ですが、早く攻撃が出来るみたいです。
それに、私の魔法の場合は、明かりの代りにもなりそうですし。」
そう言ってシャルティアさんが1つ炎の玉を空中に浮かべて見せてくれた。
確かに手が塞がれて無いですし、松明の明かりよりは使い勝手が良いかもしれません。
「維持に、どのくらいの魔力を使うのですか?」
「1つの炎を作るのは炎の矢と同じですが、後は1の時間で1消費するくらいでしょうか?」
「その程度でしたら問題無さそうですね。」
「お母さん、それって動かせるの!?」
そこにシャルちゃんが質問してきました。
「ええ、動かせるわよ。ほら。」
シャルティアさんがそう言うと、炎はシャルちゃんの周囲を周った。
「凄い!」
確かに凄いです。回復しか出来ない私は、それが少し羨ましく思ってしまいました。
無い物ねだりなのは分かっては居るのですけどね…
「そろそろ戻る~?」
「そうですね。」
「満足。」
アイリの声でハッとしました。
「帰りましょうか。」
私は私の出来ることを精一杯すれば良いですよね。
私は密かに決心するのでした。




