今日のナタリーさん 110
私は武器を構えて前に出ます。そう言えば私が一番前に出るのってコレが初めてでしたね。
緊張のあまり武器を握る手に汗が滲んで来ます。
「ナタリー大丈夫~?」
アイリが心配してくれてますが、私だってこのくらいのことは出来ることを見せてあげます!
敵を索敵していると、草むらが揺れました。
ガサッ!
その瞬間、ホーンラビットが私に向けて突っ込んで来ました。
「ひっ!」
恐怖のあまり、ホーンラビットへ武器を振り下ろします!
グシャ!
たまたまタイミングが良かっただけみたいですが、見事ホーンラビットの頭へ直撃しました。
ホーンラビットは最初はピクピクしていましたが、そのまま動かなくなりました。どうやら倒せたみたいです。
「ナタリー、凄い。」
「ナタリー、やったじゃない!」
「お疲れ様です。」
「ありがとうございます。」
偶然当たったとは言え、初戦は見事私の勝利で終わることが出来ました。でも、今日は体を動かすことが目的ですし、私だけが狩っても駄目ですよね。
次はもっと上手にやらなくちゃ。私は気合を入れることにしました。
索敵を続けると、またもや草が揺れたと思ったら、ホーンラビットが飛び出してきました。
他の人への合図をする余裕が有りません。何とか避けなければ…
チッ!
少し掠りましたが、何とか避けることができました。
「炎の矢!」
そこにシャルティアさんの魔法が飛びます。命中!
「あっ!」
命中したのは良いのですが、ホーンラビットが丸焼きとなっています。
ホーンラビットは数歩歩いたが、そのまま倒れてしまいました。
そして、何気に肉の焼ける匂いが…
ぐううぅぅ~~~!!
音のした方を見ると、シャルちゃんがお腹を押さえています。匂いに釣られてお腹が減ってしまったのだろうか?
でも、お肉を焼いただけだと、味気ないですよ?
「ねぇ、コレどうする?」
アイリが足でツンツンと蹴っています。
「すいません、毛皮が駄目になっちゃってますよね。」
シャルティアさんは少し落ち込んでいる。
確かに丸焼けになったので皮は使い物にならないです。お肉も売れないかもしれません。
敵を倒すのが目的ならまだしも、素材を集めるためを考えると、火魔法って使いにくいのかもしれませんね。
「よし!」
どうせ売れないんだし、シャルちゃんもお腹が減って居るのなら、このまま調理しちゃいましょう!
ちょっとした調味料なら持ち歩いているしね。
まずは、解体しちゃいましょう。素材として使えない以上、多少失敗しても問題有りません。
彼の解体を思い出しつつ、真似してやってみることにしました。
首を落とし、逆さにして血抜きをするのですが、あまり血が出てこない…
やっぱり焼いてしまったのが原因なのでしょう。シャルちゃん、ちょっと血生臭くなるかもしれないけど、許してね?
血が流れなくなったので、皮を剥いで内臓を取り出します。
「アイリ、水。」
「はいはい、これで良い?」
アイリが発動前のウォーターアローの魔法を空中に留めています。
何時の間にこんな器用なことが出来る様になったんでしょうか?
まあいいです、ホーンラビットを軽く洗って血と汚れを落とします。
洗った後は、布で水分を拭き取ります。
肉を一口大に切って、洗った枝を串みたいにして刺していきます。
上から塩胡椒を振ってっと。
「シャルティアさん、火をお願いします。」
「はい。」
てっきり薪に火を点けてくれるのかと思っていたのですが、シャルティアさんも、発動前の炎の矢を空中に留めています。貴方もですか。
「えっと、アイリさんの魔法を見て、私も出来るかなと思ったら、出来ちゃいました。」
シャルティアさんが、お茶目な仕草で、照れていました。
「そ、そうですか。それじゃ、そのまま維持をお願いしますね。」
「わかりました。」
気を取り直して調理しちゃいましょう。
全員に串肉を渡し、炎で炙ります。
「面白い~」
「私でも調理出来てるよ~」
シャルちゃんと、アイリはご機嫌で串肉を焼いてます。
「たまには、こういったのも楽しいですね。」
「そうですね。」
シャルティアさんも楽しそうに言ってきたので、同意しておきます。
肉が焼け、油が垂れて、香辛料と肉の良い匂いがしてきました。
「食べて良い!?」
シャルちゃんが待ち遠しくて我慢が出来ないみたいです。
個人的には、気持もう少し焼いた方が…
「はむっ!」
注意する間もなく、アイリが食べてしまいました。
「はふっ、はふぅ、うん、美味しい! 大丈夫みたいだよ~♪」
それを聞いたシャルちゃんもかぶり付きます。最低限の火は通ってるみたいだし、まあ良いか。
「美味しい!」
シャルちゃんも良い笑顔です。私も頂くことにしましょう。
ぱくり。
うん、美味しいです。
「さすがはナタリーさんですね、美味しいです。」
シャルティアさんも美味しそうに食べています。
ホント、こうして外で皆で調理しながら食べるのも良いですね!




