今日のナタリーさん 107
「すいません、やっぱり辞めておきます。」
「そうか、残念だ。一応理由を教えて貰っても良いかな? 良かったらだけど。」
「えっと、もし私とハルさんの立場を逆にして考えたら、同姓だけのPTならまだしも、異性だけのPTに入るとなると嫌な気持になったので。」
「なるほどな、そのハル君は幸せ者だな。」
「はい♪」
「もし何かの縁で、合同でPTを組むことが有ったのなら、その時は宜しくな。」
「はい、こちらこそ。」
私は『円卓の騎士団』の方々と別れることにしました。
思わぬ場所で知り合いのご兄弟さんに会うとは思わなかったです。不思議な縁ですよね。
さてと、用事も無くなったことですし、どうしようかな。
とりあえず冒険者ギルドを出て街を散策してみようかな。
街を出て色んなお店を覗いています。
可愛い小物が有ったりもしたのですが、自分の部屋が有るならまだしも、ここでは邪魔になっちゃいますね。
名残惜しいですが、諦めることにしました。
お昼になり屋台で食べ物を購入し、広場のベンチで頂くことにしました。
食事が終わって一息ついた所で周りを観察すると、一つの建物が目に入りました。
建物は教会でしたが、教会の入り口に『*』のマークが有ります。
「あれは、すぃ治癒の神様の教会?」
そう言えば加護を貰ってから正式にお礼も、お祈りもしてなかったな。
「そうですね、行ってみましょうか。」
私は教会へ向かうことにしました。
教会の中は創造神様の教会と大して作りは変わらないみたいですね。
あそこに教会の人が居たので声を掛けることにしました。
「すいません、これはお布施になります。それで、お祈りしていきたいのですけれど、構わないでしょうか?」
「まぁ、こんなにも沢山のお布施、ありがとうございます。
きっと、すぃ治癒の神様もお喜びになると思います。」
「いつもお世話になっていますので、この位は大したことではありません。」
「もしかして貴方、聖魔法の使い手かしら?」
「あ、はい。」
どうやら私の恰好と、お世話になっている言葉からそう思ったみたいです。
「……ちょっとお願いしても宜しいでしょうか?」
「えっと、内容にもよりますが、どういったことでしょうか。」
「今日、聖魔法が使える人が調子悪くて休んでいるのよ。今日に限って怪我で来る人が多くて困っていたところなの。
貴方、代わりに治して頂くことって出来ないかしら? お礼と言うのもアレだけど、1人治すのに銅貨1枚なら渡せるわよ。」
「そう言うことでしたら、ご協力させて頂きます。
でもお礼は要りません。すぃ治癒の神様へのお布施にして下さい。」
「ありがとうございます。助かります。
では、こちらにいらして下さい。」
「はい。」
案内された所は、椅子が2つとベットが1つ、後は机が1つ有る小部屋でした。
「そこに座ってね。貴方の準備が出来たらケガ人を呼ぶから言ってね。」
「はい。大丈夫です。」
「そう? じゃあお願いね。」
私が了解すると、早速ケガ人がやってきました。
「いてて、速く治してくれ。」
最初の患者さんは、指をナイフか何かでちょっと深く切った感じの傷でした。
『親愛なる治癒の神すぃ様、この者に傷を治す癒しの力を与えたまえ、ヒール』
私が魔法を唱えると、傷はすっかりと綺麗になりました。
「おっ、痛みが治まった。ありがとな。」
「いえ、気を付けて下さいね。」
「おう。」
患者さんは喜んで部屋を出て行きました。
他にもこんな感じの軽い傷を負った人が次々とやってきて、私は治していくのだった。
時々、色々と質問してくる人が居たのには困りましたが、シスターが怒って追い出してくれたので助かりました。
そんなことを続けていましたら、突然大きな声が聞こえてきました。
「重傷者だ! 道を開けてくれ!!」
そして勢いよく扉が開かれた。
運ばれてきた人は冒険者で、肩から切り裂かれて血が沢山出ており、今にも死にそうな感じだった。
余りの酷さに、一瞬驚き躊躇してしまいました。以前ダンジョンで死にかけた人を助けた時と同じくらいの怪我です。
シスターも酷い怪我の状態にビックリして中級HPポーションを用意していますが、大丈夫です。
以前の私でしたら助けることは出来ませんでしたが、すぃ治癒の神様の加護を貰い、聖魔法のレベルが上がった今でしたら治せるかもしれません。
「…なので、中級HPポーションなら助けることが出来ると思います。ただ金貨1枚になってしまうのですが。」
「そ、そんな…何とかなりませんか!」
「こればっかりは。」
「大丈夫です! 私が治します!!」
「「えっ?」」
『親愛なる治癒の神すぃ様、この者に傷を治す癒しの力を与えたまえ、メガヒール!』
初めて使うので、つい力が入ってしまいましたが、問題無く成功したみたいです。
あれほど酷かった傷がみるみる塞がったのでした。
「す、すごい。」
シスターは私が中級の回復魔法が使えたことにビックリしています。
加護を貰ったのも有りますが、毎日コツコツと練習していた甲斐が有ったみたいです。
「アンタが助けてくれたのか。」
怪我が治り意識を取り戻した患者が声を掛けてきました。
「はい。これもすぃ治療の神様の御蔭ですね。」
「助けて貰ったお礼も兼ねて、食事でもどうですか?」
「すいません、食事はちょっと。それにお礼は要りませんよ。」
「だったらお礼じゃなくて個人的にどうでしょうか!」
「尚更お断りさせて頂きます。私には夫が居ますので。」
「夫!? マジか…」
男性は唖然としていますが、そんなにも私が独り者に見えるのでしょうか? 失礼ですね。
その後も治療を続け、やっと終わることが出来ました。
「お疲れ様でした。本当に助かりました。」
「お役に立てて良かったです。」
「宜しければ、これからも教会に来て頂けないでしょうか?」
「すいませんが私は冒険者です。今日はたまたまこの教会に来ましたが、普段はダンジョンに行ったりしています。
それに、私はもともとこの都市に住んでいる者でも無いので、いつか出て行くことも有り得ますし、申し訳有りませんが。」
「そうですか、残念です。」
「では、お祈りをしてから上がらせて貰いますね。」
「はい。今日はありがとうございました。」
シスターと別れ、私はすぃ治療の神様へお祈りしに、聖堂へ向かうことにしました。
聖堂には、すぃ治療の神様の像が飾られています。
私は象の前に跪き、お祈りをします。
「すぃ治療の神様、加護を頂きありがとうございます。
御蔭で今日、怪我人の命を助けることが出来ました。これからも頑張って精進しますので宜しくお願いします。」
(今日はお疲れ様~、本当に助かったわ~
これはほんのお礼ね、これからも頑張ってね~♪)
「えっ?」
すぃ治療の神様の声が聞こえました。と言うことは…
「ステータス」
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名前:ナタリー
年齢:24
状態:普通
LV:6
HP:34/34(+5)
MP:40/40(+5)
STR:11
VIT:10(+1)
AGI:11(+2)
INT:33(+4)
DEX:19(+1)
LUK:6(+1)
スキル:魔力操作Lv6(new)、聖魔法Lv6(new)、礼儀作法Lv4、接客Lv4、料理Lv6、家事Lv6、槌術Lv3(new)
称号:すぃ治癒の神様の加護
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聖魔法のレベルが上がってます。すぃ治療の神様の言ってたのはこれでしょう。
他にも槌術のレベルと、私自身のレベルも上がってました。こちらは普段の頑張った結果ですね。
これでまた一つ、彼のお役に立てることが出来ます。やった!
お祈りも済んだので、私は教会を後にすることにしました。




