恐怖の前夜祭!?
冒険者ギルドへ到着した、どうやら物凄く混んでいる時間だった
空くまで待つのも良いが、帰りが遅くなるので、並ぶことにした
「次の方どうぞ~」
「ナタリーさん、こんばんは。
ホーンラビットと薬草の買取をお願いします」
「ハル様、こんばんは。
それではお預かり致します」
よかった、元気そうだ
どうやら昨日の落ち込みはないようなので安心した
俺はリュックから肉と皮を取り出し、窓口へ提出した
「こちらは解体済み、かつ品質にも問題は確認できなかったため、1匹1銅貨2鉄貨で換算させて頂きます。
薬草は3束、こちらも品質に問題ありませんでしたので3鉄貨となります。
すべて合わせて8銅貨と7鉄貨になますが、よろしいでしょうか?」
「はい、問題ありません。
ありがとうございました」
「またのご依頼お待ちしております。
ハル様、今度お休みする場合は、事前にお知らせして頂けないでしょうか?
冒険者の管理も必要でして、あ、強制では無いので無理にとは言いませんが…」
「わかりました、今度休む時はお知らせしますね」
「はい、お待ちしております。
それでは、ハル様、ご苦労様でした」
ニッコリ笑顔で挨拶してくれた
かわいいな~最近のナタリーさんはツンツンが消えた気がする
ようやく人畜無害なんだと分かってくれたのだろう
窓口を離れた所で声を掛けられた
「よぉ、坊主、久しぶりだな」
あれ、この人は確か、えーっと、誰だっけ?
戦斧を背負っている人は覚えているんだが、名前が出てこない
考えろ、考えるんだ、俺
確か、あ、い、う、え、お、か、き、く、く?クラフトさんだっけ?
そうだ、クラフトさんか、良かった思い出したよ
「お久しぶりです、クラフトさん」
「おいおい、俺はクリストだ、間違えんな」
「す、すいませんでしたー!」
「まあいい、坊主、ちょっとこっち来い」
「あ、はい」
俺はクリストさんと一緒に壁の方へ着いて行った
「お前、ナタリーと何か有ったのか?
前と違ってずいぶん友好的になったじゃないか」
「いえ、特には何も。
有るとすれば、依頼を受け付けてもらったりで対応してくれ、その際に話す機会が有ったからでしょうか?」
「本当だろうな?」
「神に誓って…無いよな?たぶん…」
「まあいい、ナタリーには手を出すなよ?
これはナタリーファンクラブの掟だ、ちなみに俺は会員001番な」
「へ?ファンクラブ?そんなの有ったんですか?」
「なんだ、知らなかったのか?
その辺にいる連中のほとんどは会員だぞ?」
ほんとかいな…
んー試してみるか
「あの、ちょっとすいません」
「ん、何だい?」
「あなたもナタリーファンクラブの方なんでしょうか?」
「俺は会員037番だ、君も会員かい?」
「いえ、自分はまだ入っていませんが」
「そうか、もし入るんだったら仲間だな、その時は宜しく」
「あ、はい、その時があれば」
マジだった
「納得しました」
「そうか、それでどうする?会員になるか?」
「会員になると何か有るのですか?」
「もちろんだ、まず週刊ナタリーの購入する権利が手に入る」
「何ですか?それ」
「ナタリーさんの日常からイラストが入った会員限定の雑誌だ。
月1に抽選が有り、当選者には魔道具を使用した貴重品でもある、ナタリーポスターが当たる。
後はナタリーを見守る権利が与えられる」
やべぇ、すごいどや顔で言われちゃったよ
ストーカだ、ストーカがいっぱい居るよ、おまわりさ~ん、こいつです
「と、とりあえず今のところ、会員は大丈夫です」
「そうか、残念だ。
だが、覚えておけよ、いつでも周りには会員がいて、ナタリーを見守っていることを。
下手に手をだしたと会員が気が付けば…わかるな?」
コクコクコク
俺は頷くしかできなかった
「よし、時間を取らせて悪かったな。
入りたいときは俺に声を掛けてくれ、それじゃな」
うん、ヤバイ人だってことが分かった、帰ろう
宿屋に着いたので中に入るとマスターが深刻な顔をして立っていた
俺が入ってきたのに気が付いたマスターが声を掛けてきた
「坊主、帰ったのか」
「マスター、ただいま。
なんか深刻な顔しているけど、どうしたん?」
「坊主は明日が何の日か知っているか?」
「明日?いや?特に知らないけど」
「明日は10の日だ」
「!! ま、ま、ま、マスター、お、お、俺、俺」
「落ち着け、まだ大丈夫だ」
ひっひっふー、ひっひっふー
よし、少し落ち着いた
「で、明日はどうする?何ならキャンセルするか?」
どうする?どうすれば?どうしよう?どうしなければならない?
マスターの飯は旨い、これは文句の言いようがない事実だ
だが、ジェニファーの強烈さは、それを帳消しにするほどの恐怖だ
精神的苦痛は十分に味わったが、身体的にはまだ何もされていない、だが、今後どうなるかは分からない
「マスター、ジェニファーは肉体的にそーいうことが有ったことってある?」
「幸運なことに無かったな、だが、坊主が来た時の反応は異常だった、今後大丈夫かは自信がない」
掘るのか掘られるのかは不明だが、どちらにしても嬉しくない
前世を含めて、最初がマスターだったら俺は死んでも死にきれない、なので断固拒否を宣言する!
だけど、この宿以外の宿って知らないんだよなぁ
「マスター、俺はこの宿以外の宿知らないんだけど、お勧めって有る?」
「それなら何件か知り合いがいるから紹介状を書いてやろう」
「それでお願います」
俺は身の安全を優先することにした
「じゃあマスター明日は来ないから、その次の日からまた宜しくな」
「あぁ、じゃあな」
俺は挨拶を済ませ、紹介状を持って他の宿屋に向かったのだった
・・・・
「おい、マスターよ」
俺は『薔薇の宿屋』でマスターに問い詰めている
マスターは無言だ
「すべての宿が埋まっているんですけど?」
やっぱりマスターは無言だ
「それとも野宿をしろと?」
マスターは断固として無言を貫くみたいだ
「体は綺麗に洗っておいた方が良い?」
「ブハッ!ゲホッゲホッ!
…ったく、冗談でもそう言ったこと言うんじゃない、ヤツが起きる」
「とりあえずマスター、泊まるから鍵ちょうだい」
「ほらよ、しっかり鍵を閉めろよ?絶対間違っても鍵を開けて寝るんじゃないぞ?フリじゃないからな?」
「そんなことするかー!!飯食ったら速攻で部屋にいくから飯よこせ」
マスターは夕食を取りにキッチンへ入って行った
「結局泊まることになったか、仕方がないとは言え気が滅入るな」
「ほらよ」
マスターが夕食を持ってきた、今日のメニューはっと
ナポリタンとスープにオレンジジュースだ
とりあえず鑑定だけして、さっさと食べてしまおう
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【ナポリタン】
品質:B
効果:体力回復+2
パスタと丸ネギ、ピマーンをトゥメイトゥソースと一緒に炒め、ポルメザンチーズを掛けたもの
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【ホーンラビットのスープ】
品質:B
効果:体力回復+1
ホーンラビットの肉とキャベスリー、シャガイモ、アカオニォンをコンソーメ、塩コショウでコトコト煮込んだスープ
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【ohレンジジュース】
品質:C
効果:なし
ohレンジを絞ったフレッシュなジュース
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明日の事を考えると今一つ味がわからない、多分美味しいのだろうとは思うが分からないものはわからない
なので今日は味の感想は無しだ、さっさと食べて寝ることにする
「ごっそーさん」
「何度も言うが、きちんと閉めろよ?」
「ああ」
そう言って俺は部屋に帰ると鍵を掛けた、鍵がキチンと掛かっていることを確認する、よし
あれ?鍵確認したよね?鍵が掛かっているのを確認した
湯あみを済ませて…あれ?鍵確認したよね?鍵が掛かっているのを確認した
着替えてベットに入る前に…あれ?鍵確認したよね?鍵が掛かっているのを確認した
ベットに入り、さあ寝るか…あれ?鍵確認したよね?鍵が掛かっているのを確認した
おやすみなさい…ぐぅ…はっ!あれ?鍵確認したよね?鍵が掛かっているのを確認した
今度は間違いないな、おやすみ…ぐぅ…はっ!あれ?鍵確認したよね?鍵が掛かっているのを確認した
俺は何度も同じことを繰り返すのだった
不安に駆られて何度も確認する行為を強迫症状と言い、この症状が悪化すると強迫性障害となりますので気を付けましょう(何)