その夜
夕刻になったので宿に帰ることにした。
宿屋に到着し、食堂へ向かうと全員が揃っていて食事中だった。
「ただいま。」
「ただいま戻りました。」
「先に頂いておるのじゃ。」
「ハルさん、お帰りなさい。」
「お帰り~、あれ? ティアその指輪って。」
「今日、ハル様に買ってもらえました。」
「良かったじゃない~」
「はい。これで本当に皆様と同じになれた気分です。」
「あ~分かる分かる~」
「じゃな。」
「別に仲間外れにしていた訳では無いのですが、そう思うのも仕方が無かったかもしれませんね。」
「ええ、本当のこと言うと、凄く羨ましかったんですよね。」
ティアさんのその言葉で、全員がこっちを向いた。えっと…
別に放置していた訳じゃないんだが、どうやら俺が悪いみたいだな。反省。
「ハル様見て!」
そこにシャルが嬉しそうに声を掛けてきた。
シャルを見ると、昨日購入した武器を装備していた。
「おっ、似合ってるじゃないか。」
「うん!」
俺がそう言うと、シャルがギミックを稼働させた。
ジャキン!
サイドから刃物が飛び出した。やっぱりカッコイイ!
「いいな~、俺もこれ買おうかなぁ~」
「買うのは構わんが、ハルは前に出たら駄目じゃぞ?」
「そうですよ。駄目ですからね?」
「これはシャルの役目。」
「ハル君は中、遠距離だよね~」
「ですね。」
どうやら俺の味方は誰も居ないみたいだ。残念である。
食事をしながら今日あったことを楽しく話し合った。
うどんをティアさんと一緒に作った話をしていて、ふと思い付いたことが有った。
「シャル、こっちにおいで。」
俺がそう言うと、シャルが何々~って顔をしながらやって来た。
アイテムボックスより、染み込んだ油揚げを取り出して、シャルにあげてみることにした。
「ほら、あ~ん。」
「あ~ん。」
シャルは何の疑いも無く口を開けてくれたので、油揚げを食べさせた。
ティアさんがそれを見て口を開けたが、見なかったことにした。
「ん!? ん~~~~~!!」
シャルが油揚げを食べると目を見開いて驚き、手をブンブンと振りながら興奮していた。やっぱり親子だな。
それにしても同じ反応をするってことは、狐の獣人にとってマタタビみたいな物なのだろうか?
「ハルよ、それは何じゃ?」
興味津々なビアンカさんが質問してきた。
「これは油揚げだ。うどんに乗せて食べるのに作った物だけど、食べてみるか?」
「食べるのじゃ!」
「あ、私も~」
「私も食べたいです。」
「・・・・」
ティアさんは昼に食べたから遠慮しているみたいだが、無言が怖いです。
「よ、4等分するね。」
俺はティアさんの訴えに負けたのだった。
四等分し、みんなに配ってみた。
「ほぅ? 酒のつまみにしてもいいくらいじゃな。」
「ホント、美味しい~」
「美味しいです。」
「~!!」
ティアさんは声を上げたり、態度に表すのを我慢しているみたいだが、バレバレである。
それにしても他のみんなは特に変わらないな、やっぱり狐の獣人特有なのか?
「ハル様、お替り!」
「ごめんな、もう無いんだよ。
また今度作るから、許してくれ。」
俺がそう言うと、シャルがショックを受けた顔をして、シッポが垂れ下がってしまった。本当にスマン…
今度沢山用意しておいてあげようと心に誓うのだった。
食事が終わったところで、アイリさんが言ってきた。
「ハル君ハル君、今日は私だからね~♪」
「お、おう。」
今日はアイリさんの番みたいだ。
「じゃあ、そろそろ部屋に戻るか。」
「うん♪」
「また明日なのじゃ。」
「ハルさん、おやすみなさい。」
「おやすみ。」
「ハル様、今日は本当にありがとうございました。」
皆も部屋に戻るみたいなので、そのまま別れて俺達も戻るのだった。




