実食
きつねうどんが完成したので、食べることにしようと思う。
テーブルに配膳し、ティアさんと向かい合ってテーブルに着いた。
「とっても美味しそうです。これがうどんなのですね。」
「正確には、きつねうどんだけどな。」
「それって、私達狐の獣人のための食べ物なのでしょうか? 見たことも聞いたことも有りませんが。
でも、確かに何か私の心に訴えて来る、何とも言えない魅力が有る食べ物なのは間違い無いかもしれませんね。」
「いや、別に狐がどうのって効果は無いハズなんだけどね。でも、ティアが喜んでくれるのなら頑張って作った甲斐が有ったよ。
じゃあ温かい内に食べよう。」
「はい。」
まずはスープを一すすり…あ~旨い。
このホッとする様な感じの食べ物は、日本人の遺伝子として何か有るのかもしれない。
次に油揚げをぱくり…十分に染み込んだタレがまたたまらん!!
そのままうどんを一すすり、ウマー!!
ふと、ティアさんを見ると、いつもの上品な感じな雰囲気じゃなく、思いっきりがっついているな…そんなに旨かったのか?
「ティア、旨いか?」
何と無しに聞いてみると、俺の声で自分の態度に気が付き、顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。
「あ、あの、ハル様…み、見てました?」
「うん見てた。」
嘘を言っても仕方が無いので、正直に答えてみた。
「あぅ…は、恥ずかしいです…」
ティアさんが恥ずかしさの余り、顔を手で隠して俯いてしまった。
「俺的には、いつもと違うティアさんが見れて良かったんだけどな。」
「い、言わないで下さい~! 特にシャルには内緒にしてください~!!」
どうやら母親としての威厳もあるみたいだ。
「わかった言わないよ、俺だけの秘密にしておくね。」
「ほ、本当ですか?」
「もちろん。」
「よ、良かったです。」
「それにしても、ティアがあそこまで美味しそうに食べているのを初めて見たけど、そんなにも美味しかった?」
「はい。とくに油揚げが最高で、我を忘れるほどでした…」
「そ、そうか。」
何だろう? 油揚げは、狐に対してマタタビみたいな効果が有るのだろうか?
俺はふと思いついたので、アイテムボックスより豆腐を小皿に取り出してみた。
醤油を少し垂らして。
「ティア、これ食べてみて。」
「あ、はい。」
ティアさんが豆腐を食べているが、特に変わった様子は見られなかった。
「美味しいですね。」
「体に何か変化は感じられるか?」
「いえ、特には。何か有るのでしょうか?」
「いやね、油揚げって作っているのを見てたと思うけど、この豆腐を揚げた物なんだよね。」
「そう言えばそうでしたね。」
ティアさんのどんぶりには、すでに食べちゃたから油揚げが無かったので、俺の食べかけだけど油揚げをあげてみることにした。
「ほら、あーん。」
「あ、あーん。」
ティアさんが俺のあーんに恥ずかしがりながらも口を開けてくれたので、油揚げをあげてみた。
「ん~~~!!」
ティアさんが目を瞑って両手をブンブンと振りながら興奮していた。やっぱり何か入っているのだろうか?
「…あれは悪魔の食べ物です。」
少しして落ち着いたらしく、再び醜態を見せたことで落ち込んでいた。どんまい…




