うどん作り
「よし、まずは材料だ。」
うどんを作るには小麦粉、塩、水だ。
柔らかめなら薄力粉、コシを出すなら中力粉だが、俺はコシが強い方が好きなので中力粉で作ることにする。
本来は材料はこれで良いのだが、俺はここに卵を入れる。
何でって言われても、俺の祖父が作るうどんがそうだったから真似をしているだけだ。
実際旨いしな。まぁ、ほんのりと黄身の色が付くのはご愛敬だけどな。
おれとティアさんの2人だから、材料は200g…いや、お替りの分も入れて多めに作っておくか。
500g作ることにした。そうすると卵は2個入れちゃうか。だったら水は240ccくらいだな。塩は25gと。
まずは水と塩を混ぜて食塩水を作る。
塩を完全に溶かすために、少しぬるま湯にして使うのがコツだ。
「ティア、俺が混ぜるから、少しづつこの塩水を加えてくれ。」
「わかりました。」
指の平で回す様にしながら塩水を加えていく。
全部加えた所で、卵を落とす。
「ティア、卵を割って、溶いたら、同じ様に入れてくれ。」
「はい。」
ティアさんが手際よく卵を割り、混ぜた後に小麦粉へと入れて行く。
全部入れ終わり、粉の状態を確認する。良い感じだ。
粉を集めて一つの塊にして、次はこねる作業へと移る。
力を入れて、生地をこねて行く。
「結構力が要るな…」
本当だったらビニール袋に入れて足で踏むのが良いのだが、そんな物は無いからな。
気合を入れてこねるのだった。
「よし、こんな物かな。」
こねた生地を丸く調えてから鍋に入れ、蓋をする。
「このまま1の時間ほど寝かせるぞ。」
「どうして寝かせるのですか?」
「熟成させるためだよ、こうすることでより美味しくなるんだ。」
「そうなんですね。」
「とりあえず生地が出来るまでの間に汁を作るとするか。」
「はい。」
さて、うどんをどうやって食べるかによって変わるからな、悩みどころだ。
ざるうどんみたいに付けて食べるのも良いし、かけうどんみたいに汁で食べるのも良いし、鍋焼きうどんみたいに鍋で食べるのも良いよな。後は焼うどんも捨て難い。これは迷うぞ。
「う~ん。」
「ハル様、どうかしたんですか?」
「いやね、どうやって食べるのが良いかな~と思ってさ。」
「色々食べ方が有るんですか?」
「有るぞ。逆に色々有り過ぎて迷ってるくらいだ。」
「お勧めって有りますか?」
「正直言うと、どれもお勧めだ。ただ、やっぱり基本はかけうどんかな。」
「じゃあ、かけうどんが食べてみたいです。」
「そう? ならそうするか。」
そこで俺の頭に天啓が降りてきた。そうだ! きつねうどんにしよう!! と。
そうと決まれば早速実行することにする。
きつねうどんと言えば、油揚げだ。だが残念なことにジェニファーのアイテムボックスの中にも油揚げは入って無かった。
だけど、豆腐は入っていたので、これを使うことにした。何で油揚げが入って無かったのか疑問は有ったが、多分たまたま使い切ってしまったのだろうと思う。
俺は豆腐を取り出し、薄切りにした後は、まな板を斜めに置いてその上に置き、水けを取っておく。
そして油を鍋で熱し、十分な温度になった所で、先ほどの豆腐を綺麗な布で拭いてから投入する。
じゅわああああぁぁぁ~~~!!
火が通り、キツネ色に染まった辺りで油揚げを取り出し、油を切る。
これを4枚ほど作り、油揚げが完成した。
「ハル様、これって何て言う食材なのでしょうか?」
「これは油揚げって言うんだよ。これだけだと大した味じゃないんだけど、味が染みるととっても旨いぞ?」
「そうなんですね、何となくですが、この油揚げを見てると、そわそわするので不思議な感じです。」
「そうなの?」
「はい。」
う~ん、別に狐だからと言って、油揚げが好きってことも無いと思うんだが、何か有るのだろうか?
確か記憶によると、稲荷神社のお供えがネズミの油揚げの代用に油揚げになったって聞いたことが有るんだが、ネズミならまだしも、油揚げの元は大豆だし、何で気になるんだろう?
まあいいか。別にティアさんが油揚げが好きでも何の問題も無いしな。
さて脱線してしまったが、続きを作ることにしよう。
次にお湯を沸かし、沸騰した所で先ほど作った油揚げを投入する。
これは余計な油を落とすために必要な処理だ。
2分ほど茹でた後に、油揚げを取り出して水にさらす。
冷めたら取り出し、ギュッと潰して水分を絞り出す。
だし汁、醤油、砂糖で、先ほどの油揚げを弱火で味が染み込むまで煮込む。
この時、分量は適当だが、少し濃いめに作るのが好みだ。
十分に煮込んだ後は火から外して、冷ますと同時に、さらに味を染み込ませる。
そろそろうどんの生地の熟成が終わった頃だな。
伸ばす作業に移ろうと思う。
鍋の蓋を取り、生地の弾力を確認してみる。良い感じだ。
これなら麺にしても問題無いだろう。
「ティア、コイツで伸ばして、細長く切ってもらえるか?」
俺は、アイテムボックスよりジェニファーの持ち物だった伸ばし台、伸ばし棒、打ち粉の麺作りセットを取り出して渡した。
「えっと、すいません、使い方が分からないのですが。」
そりゃそうか。
「それじゃあ、俺が麺を作るから、ティアはスープの方を作って貰って良いか?」
「分かりました。」
俺は、昆布、鰹節、みりん、酒、砂糖、塩、醤油を取り出してティアさんへと渡した。
「昆布と鰹節で出汁を取って、醤油ベースで後は味を調える感じで作ってくれれば良いよ。
スープは飲んでも大丈夫な程度ね。もし不安だったら一度確認してくれ。」
「分かりました。」
スープはティアさんに任せたので、俺はうどん作りに専念することにした。
伸ばし台に打ち粉を撒いて広げる、その広げた粉の上にうどん生地を乗せ、手のひらを使って潰していく。
ある程度潰した所で、ひっくり返し、さらに潰していく。
ある程度潰れた所で、今度は伸ばし棒を使って押し広げて行く。
厚さが5mm程まで伸ばしたら、打ち粉を撒き、伸ばし棒に巻いていく。
伸ばし棒を前に転がし、そのまま掴んで引っ張るを繰り返して生地を伸ばし、ある程度伸びた時点で伸ばし棒を横にして広げる。
広げたらまた打ち粉を撒いて、伸ばし棒に巻いて伸ばし、また縦にして広げて巻いてを繰り返す。
厚さが2mm位になったら、打ち粉を撒いて半分に折り、また打ち粉を撒いてさらに半分にする。
後は端から包丁でうどんの細さに切って行けば麺の完成だ。
「出来た。」
後は茹でるだけだ。ティアさんの方はどうなったかな?
スープを作っているティアさんの所へ行ってみることにした。
ティアさんはスープ鍋の前で味を調整していた。
「ティア。」
俺は後ろから抱き着いて耳元で囁いてみた。
「きゃあ! って、ハル様!? 危ないじゃないですか。もぉ~」
「ごめんごめん、それでスープの方はどうかな?」
「えっと、自信は無いのですが、どうでしょうか?」
そう言って小皿にスープをよそって渡してくれた。
俺は小皿を取って味見をしてみることにした。
「うん、旨い!」
「良かったです。」
「これでも問題無いけど、気持ちちょっとだけ醤油を追加したら個人的には完璧かな。」
「では、そうしますね。」
ティアさんが醤油をちょっと追加して、これでスープも完成だ。
ならちゃっちゃと、うどんを茹でてしまおう。
大きな鍋に水を入れて沸騰させた後に、うどんを投入。
ここで茹で過ぎに注意を払う。ここで油断をしたら一貫の終わりだ。
うどんがほんのりと透明になってきたので、1本取り出して食べてみる。よし今だ!
鍋をザルに空け、冷水でうどんを洗って締める。
どんぷりにうどんを入れ、スープを掛けて、油揚げ、刻んだネギを乗せたら完成だ。




