表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
432/554

薬草採取


冒険者ギルドへとやってきた。

朝のピーク時間だったため、冒険者ギルド内は混雑していた。


「よし、依頼を探すぞ!」


「うん!」


俺とシャルは、込み合っている掲示板へと突入するのだった。

相変わらずシャルは後ろにも目が有るのか? って感じに上手く避けている。

俺は…まぁ、察してくれ。

さて、特に気になる依頼は見つからなかったのだが、シャルの方はどうだったんだろうか?

シャルも戻ってきたので聞いてみることにした。


「どうだ? 何かやってみたい依頼は有ったか?」


「無かった。」


ふぃ~、掲示板の端っこにドラゴン退治の依頼が貼って有ったが、さすがに持ってくることは無かったみたいだ。

まぁ、持ってこられても無理だけどな。


「それじゃ、どうしようか?」


「だったら何時もと同じが良い。」


「同じ? ダンジョンにでも行くのか?」


「違う、薬草。」


「薬草か。」


どうやらシャルは、アルデの街の時みたいな過ごし方が希望らしい。


「よし、街の外にでも行ってみるか。」


「うん!」


俺達は冒険者ギルドを後にし、街の外へ向かうのだった。


・・・・


草原までやってきた。


「おー! あちこちに薬草が有るなぁ~」


ここが迷宮都市だからだろうか、ダンジョンに向かう人に集中するのだろう。

薬草採取をする人は少ないみたいだ。


「ハル様、勝負!」


シャルに勝負を挑まれてしまった。正直勝てる気がしない。

だけど、今日はシャルのための日だ、乗ってあげるのが大人って者だ。


「ふっふっふ…良いだろう、後で吠えずらをかくが良い。」


「かくのはハル様!」


「では勝負だ!」


「うん!」


俺達は一斉に薬草集めに散らばるのだった。

俺は薬草を摘むと同時にアイテムボックスへと収納する。これは、いちいち袋に入れる手間を省くためだ。

卑怯? 使えるのもは親でも使えと言うでは無いか。何の問題も無い。

俺は薬草を摘むだけのマシーンへとチェンジするのだった。


俺は今までの経験と勘をフル稼働で薬草を集めて行く。

ふははははっ、素早さが上がった俺の実力を思い知るが良い!!


・・・・


お昼の時間になった。このくらいで良いだろう。


「おーい! そろそろ終わりするぞ~!!」


俺は声を掛けると、シャルがこちらに戻ってきた。

俺はアイテムボックスより薬草を取り出してみた。

ふむ、170束だ。内20束は毒堕観草である。

もちろん自己新記録だ。これは勝ったな。


チラリとシャルの袋を見てみる。

袋はパンパンだから100束くらいだろうが、シャルのことだから油断は出来ない。

俺は学習する男だからな、ぬか喜びは無しだ。毒堕観草が沢山入っている可能性もあるからだ。


「シャル、どれだけ採れたんだ?」


「ふふん♪」


シャルは、とってもいい笑顔で袋の中身を見せてくれた。


「はあっ?」


なんと袋の中身は、薬草が50束、毒堕観草40束、そして何と鶏蕪徒が10束も入っていたのだ。


「ま、負けた…」


俺はガクリと膝を落とした。完敗である。

シャルは勝負に勝ったおかげで、気分が良いみたいだ。


「~♪」


シャルが喜びのダンスを踊っている。

可愛いシャルのダンスに癒された。勝負なんてどうでも良いか。


「それにしても、よく鶏蕪徒なんて知ってたな。」


「勉強した。」


「そうかそうか、偉いぞ~!!」


俺はシャルの頭を撫でまくる。


「ハル様、髪の毛が乱れる!」


「ふははははっ!」


俺はぐしゃぐしゃと頭を撫でる。


「もう!」


そんな怒った台詞とは裏腹に、シャルは嬉しそうなので間違っては無いハズだ。


「さて、お昼の時間だし、何か食べるか?」


「うん!」


何となくピクニック気分なので、お弁当が良いだろう。

俺はアイテムボックスより、ジェニファー愛妻弁当を2つ取り出した。


「あっ! ジェニファーのお弁当!!」


シャルはとっても嬉しそうだ。何と言っても品質Sのお弁当だからな。

普段ナタリーさんとティアさんが作ってくれるから、俺もあまり出さないし(汗)


「じゃあ食べようか。」


「うん♪」


ぱくり………………………………………………はっ!

ヤバイヤバイ! 久々だったから一瞬意識を失ってしまった。

相変わらず文句の付けようもないほどの美味さだよな。

それじゃあ、続きを頂きますか。


「あれ?」


俺の弁当は空っぽだった。

意識を失っている間にシャルに食べられた? いや、そんなことをする子じゃないよな。

俺がチラリとシャルを見る。


「食べてないよ! ハル様が夢中で食べたんだよ!」


言われてみればお腹は膨れていた。と言うことは、あまりの旨さに体が勝手に弁当を欲して、無意識で食べたってことか? 何て恐ろしいお弁当なんだ…


「いや、シャルが取ったとは思ってないよ? ちょっと聞いて見たかっただけだからね?」


だけどシャルは落ち込み、耳はペタンと、シッポも垂れ下がっていた。

俺のせいとは言え、何か可哀相になってきた。


「ほ、ほら、お詫びってのも変だけど、シャルの好きな物買ってあげるから!!」


「ホント?」


「ホントホント!!」


「やった~!!」


何とか機嫌が戻ってくれたみたいだ。ほっ…

さてと、まだ時間は有るけど、どうしようかな。


「シャル、これからどうする?」


「買い物!」


「そうかそうか、なら街に戻るとするか。」


「うん!」


「その前に、この薬草って俺が買い取っても良いか?」


「あげる…だとハル様は受け取ってくれないし、わかった。」


その通りだ。分かってきたじゃないか(笑)


「えっと薬草が50束で銀貨1枚、毒堕観草が40束で金貨8枚、鶏蕪徒が10束で金貨20枚だから…金貨28枚と銀貨1枚だな。

 あ、ごめん、今細かいのが無いや、お釣り有るか?」


「要らない! そんなに要らないです!!」


「シャルよ、これはシャルに対する正当な評価だ。だから遠慮なんかするんじゃないぞ?

 それに、シャルはこういう時の俺のことは良く知ってるんだろ?」


「…はい。」


どうやら分かってくれたみたいだ。諦めたとも言うがな。


「ほれ、白金貨3枚だ。」


シャルがお金を受け取り、お釣りを計算していた。


「えっと、白金貨は金貨10枚だから、3枚で30枚、金貨28枚と銀貨1枚だから…えっとえっと…」


必死に頭の中で計算しているみたいだ。そう言えばシャルに計算って教えて無かったな。どうなる?

俺は温かい目でシャルの結果を待つことにした。

シャルは必死に悩み、指を使いながら一生懸命計算している。


「えっと、金貨1枚と銀貨9枚…ですか?」


「正解~!! 凄いぞ!!」


「やった!」


シャルが胸の前に握りこぶしを作って喜んでいた。

計算なんか教えて無いのに、本当に凄い!

やっぱりウチのシャルは天才だ!!


「そろそろ戻るぞ~」


「は~い。」


俺とシャルは仲良く街へと帰るのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ