今日のナタリーさん 96
私はナタリー、冒険者である。
「…さん。」
「ナタリーさん。」
声を掛けられて目が覚めました。
どうやら寝過ごしたみたいで、シャルティアさんが起こしてくれました。
「すいません、寝過ごしました。」
「いえ、大丈夫ですよ。」
「急いで着替えますので、先に用意していて下さい。」
「分かりました。」
私は急いで着替えて、身だしなみを整えます。
「よし!」
準備が出来たのでキッチンへと向かいます。
「遅くなりました。」
「それでは、何を作りますか?」
私は、シャルティアさんが用意してくれた材料を確認します。
丸パンに、ケッコー鳥肉、レトゥース、トゥメイトゥ、キャベスリー、ドコーン、丸ネギ、リンゴーンです。
「丸パンが有るのは珍しいですね。」
「すいません、今日はこれしか無いみたいで。」
「あ、いえ、別に文句がある訳じゃないんですよ。ただ珍しかっただけです。」
「そうなんですね、それでどうしましょうか?」
「そうですねぇ~、いっそのこと丸パンを半分に切って、材料を挟めるサンドウィッチモドキにでもしましょうか。」
「分かりました。」
「野菜を切るのとサラダはシャルティアさん、お願いします。」
「はい。」
それででは私の方は、メインの方を作って行くことにします。
ケッコー鳥肉を丸パンの大きさに切って行きます。
鍋に油を引いて、ケッコー鳥を焼いていきます。
十分に火が通ったら、堪り醤油、酒、むりん、ニンニンニクのすり下ろしを加えて味付けします。最後にカッタ栗子でとろみを出してと。
後は半分に切った丸パンにレトゥース、輪切りに切ったトゥメイトゥに先ほどのケッコー鳥の照り焼きを載せて、残りの丸パンを乗せたら完成です。
サラダは…うん、ティアさん流石ですね。
リンゴーンはサラダでは無くジュースにしたみたいです。
「出来ました。」
「こっちも出来ました。」
完成した朝食を食堂へ運びます。
「来た来た~」
「美味しそう。」
食堂には、アイリとシャルちゃんだけでした。
「ハルさんと、ビアンカさんは?」
「まだ来てないね~」
どうやら少しゆっくりしているみたいでした。
とりあえず食事を配膳した後は、彼が来るのを待つことにしました。
少しして彼がやってきました。
挨拶を済ませ、朝食を頂くことにしました。
美味しそうに食べてくれているので、少し変わったものを作ってみましたが、今日も大成功だったみたいです。良かった。
朝食が終わると、今日の予定を話し合いました。
彼がダンジョンに行くことを確認した後、HPポーション改やら、聖魔力水とか、大事な地図を渡してくれました。
確かにアイリが言う通り、少し過保護すぎませんか? 私達もちゃんとした冒険者ですよ?
でも、彼も折れてくれなかったので、とりあえず緊急時のためにと言うことで、持って行くことにしました。
彼と別れた私達は装備を整え、ダンジョンへと向かいます。
ダンジョンの入り口までやってきて、昨日何か忘れていたことを思い出しました。
「アイリ、もしかしてだけど、私達って運び屋が必要なんじゃない?」
「えっ? 何で?」
「じゃあ聞くけど、ドロップアイテムはどうするの?」
「あっ!」
どうやら忘れていたみたいです。私も先ほど入り口に居る運び屋を見て思い出したので、人のことは言えませんでしたが…
「そうじゃの、持って帰らないのも勿体ないし、雇うとするかの。」
「そうしましょうか。」
「で、誰にするの~?」
前回お願いしたロン君が居れば良いのですが、さすがに居ませんね。
私達が誰にしようか迷っていると、声を掛けられました。
「運び屋を探しているのなら、俺はどうだい?」
声を掛けてきた人は、色黒の筋肉質の男性でした。
見た感じ力は有りそうなので、荷物も沢山運べそうです。
「どうする?」
「どうせ分からないんじゃ、こいつで良いんじゃないかの。」
「私もそれで良いと思います。」
「構わない。」
みんなも分からないみたいですし、私も同じです。
「それでは、お願い出来ますか?」
「えっ? 女性だけのPT? うひょ~ラッキー!」
頼んでおいて言うのもアレですが、間違ったかもしれません。
でも、今更断るのも悪いのでとりあえず交渉することにしました。
「えっと、雇う料金についてなのですが、お幾らでしょうか?」
「何階まで行くんだ?」
「地下6階じゃな。」
「えっ? 子供? それも2人も!?」
「誰が子供じゃ! あたいは立派な大人じゃぞ!」
「大人。」
「いやいやいや、それは無理が有るだろ! えっ、本当に!?」
「あたいはドワーフじゃ! まぁ、シャルは確かに子供じゃがな。」
「ドワーフだったのかよ、趣味じゃないからどうでも良いか。」
「何じゃと!!」
「まぁまぁ、ビアンカ落ち着いて、趣味じゃ無くて良いじゃない。」
「…そうじゃの、あたいにはハルが居るしの。」
「そうそう、気にするだけ無駄だよね~」
「そっちの獣人も興味は無いが、美人のお二人さんが良いことしてくれるなら、お安くするぜ?」
「「お断りします。」」
何でそんなこと言うのでしょうか? 私には彼が居ると言うのに。
もちろん、アイリもしっかりと断って居ます。当然ですよね。
「そんなこと言わずにさぁ~、サービスするからさぁ、良いことしようぜ~!!」
「ねぇ、違う人にしない?」
「そうじゃの。」
「待った!! 分かった、もう言わない!」
「本当かしら…」
「とりあえず金額の話にしましょう。それでお幾らなのですか?」
「地下6階だろ? なら売り上げの1割だな。」
「どうする?」
「良いんじゃない? 前回もそうだったし。」
「分かりました。それでお願いします。」
「よっしゃ!! 宜しくな!!」
色々と不安が一杯ですが、運び人を雇うことにしました。
 




